セクト・ポクリットでは2021年1月より、「コンゲツノハイク」をはじめました。前月に刊行された俳句結社誌・同人誌の最新号から「(最大)7句」を推薦いただき、掲出するコーナーです。今月は、21結社にご参加いただきました。ありがとうございます。来月分(2月28日締切)については、こちらのフォームからご投稿ください。参加は無料です。
コンゲツノハイク 2021年2月
(2021年1月刊行分)
参加結社(21)=「秋草」「運河」「海原」「銀漢」「雲の峰」「香雨」「秋麗」「青山」「鷹」「たかんな」「滝」「橘」「田」「天穹」「童子」「松の花」「南風」「鳰の子」「ひろそ火」「街」「雪華」
「秋草」(主宰=山口昭男)【2010年創刊・兵庫県神戸市】
気持よき氷の色となつてをり 山口昭男
松手入いま門柱の上に立ち 木村定生
短日の息の容の紙の鶴 三輪小春
曼珠沙華教師僧侶に戻りけり 西江友里
田の煙ゆるまず丹波時雨かな 小泉和貴子
冬の蝶影遊ばせてさゆらぐる 松井ゆう子
青写真米炊く匂ひ漂へり 平石晃一
「運河」(主宰=茨木和生)【1956年創刊・奈良県生駒郡】
此君の雫をぬぐひ星迎 山内節子
ひやひやと採血の腕叩かるる 上野山明子
草の実をつけて五時間目の授業 星野乃梨子
「海原」(代表=安西篤)【2018年創刊・千葉県市川市】
雁渡し私のどこかが鳴りました 河原珠美
水底から水面仰ぎて原爆忌 楠井収
じいちゃんの案山子に錆びた鉄兜 平田恒子
捕虫網補修している自由かな 小野裕三
秋蝶来る空の筋肉の中に 佐孝石画
美しきもの見つけよと父秋の雲 前田典子
ちちろ鳴く女いつでも刺客です 松井麻容子
「銀漢」(主宰=伊藤伊那男)【2011年創刊・東京都千代田区】
豊穣の海の一滴牡蠣啜る 伊藤伊那男
こけしみなふるさと遠く冬に入る 小泉良子
淋しさの副作用有り風邪薬 白井飛露
船橋に拡ぐ海図や神還る 小野寺清人
黙念と松のこゑ聴く松手入 武田禪次
花八手友の訃で知る妻女の名 深津博
神々はおほむね裸美術展 長谷川明子
「雲の峰」(主宰=朝妻力)【1989年創刊・2001年結社化・大阪府茨木市】
麻薬まづ服して祝ふ屠蘇少し 浅川彳亍
冬ぬくし有馬氏の選読み返し 井村啓子
身に入むや走り書きなる兵の遺書 小澤巖
冬紅葉隣保で守る阿弥陀堂 酒井多加子
講中が裃で来る淑気かな 朝妻 力
「香雨」(主宰=片山由美子)【2019年創刊・東京都世田谷区】
初夢や吐魯蕃の街さまよひて 片山由美子
秋冷の身に振る塩の白さかな 佐藤博美
露の世の露に大小ありにけり 西宮舞
一点を見つめ新酒のひと口目 寒河江桑弓
十六夜や鏡の前のルームキー 平万紀子
渋滞の灯の先に月上りけり 馬場公江
会釈して画廊を出づる秋の昼 押切安代
「秋麗」(主宰=藤田直子)【2009年創刊・神奈川県川崎市】
短日の短編ひとつ吾を満たす 藤田直子
鈴の鳴る鞄ありけり神の留守 塚原涼一
秋雨や読みて睡魔に倒さるる 竹下白陽
検印の朱色なほ濃し漱石忌 井上青軸
盛塩の山のへたりや神無月 永吉 進
近松忌コーヒー冷めてゆく早さ 藤井南帆
風花や啓示のやうに詩のやうに 山田蹴人
「青山」(主宰=しなだしん)【1982年創刊・神奈川県横浜市】
車椅子の妻より指図年用意 山崎ひさを
裏白のじはりと縮む星の数 しなだしん
塩で火を清め夏山深く入る 井越芳子
身ごもれる娘や嫁や星月夜 入部美樹
オルガン音色を紡ぐ秋日和 佐藤敏枝
三叉路を曲れば生家稲の径 合田睦子
パーゴラに吹かれ風船かづらの実 川口ユリ
「鷹」(主宰=小川軽舟)【1961年創刊・東京都千代田区】
ガラス戸にじぶくる蜂や花八手 小川軽舟
婆逝きて爺に白鳥来たりけり 遠藤篁芽
靴音に擦り減る街や神無月 山田友樹
だいだらぼつち駆けたる山や紅葉散る 山地春眠子
この声のままに老いたし十三夜 永島靖子
今朝の冬鉢のさぼてんパチクリす 氣多驚子
鯨見に行くかカラマーゾフ読むか 井田誠治
「たかんな」(主宰=吉田千嘉子)【1993年創刊・青森県八戸市】
漁師町締めに出さるる茸汁 嶋広一
母なれば九人家族の秋刀魚焼く 大堀徳惠
切れし音地中に残し牛蒡引く 馬場孤舟
ふつふつと滾るグラタン台風裡 松橋幸子
新走りたしなむ程と言ひながら 鈴木興治
深入りの一歩を悔やむ夕花野 藤田千恵子
何事につけてこの道草の花 冨舛哲郎
「滝」(主宰=成田一子)【1992年創刊・宮城県仙台市】
阿弖流為のひとこゑ滝の凍りけり 成田一子
水鳥の火の粉のやうに翔つ夜明 石母田星人
宮城野へ海鳴りとどく十三夜 鈴木要一
青白くショパン弾く子や野分めく 芳賀翅子
夭折の骨のももいろ雪蛍 庄子紀子
帰らじの東京の吾子時雨かな 松ノ井洋子
獅子柚子に触れたる指の透明に 谷口加代
「橘」(主宰=佐怒賀直美)【1978年創刊・埼玉県久喜市】
仰向いて薬のむ癖虎落笛 髙良満智子
咳ひとつ落丁本の頁折る 松尾紘子
右足の右に傾く末の秋 原智子
ふるさとは青空の色木の葉飛ぶ 久保田孝子
後ろ向きに夫と話して葱刻む 榊原和枝
晩秋の夕焼色の児の涙 安田かほる
母の肩指で計りて毛糸編む 増田ミヨ子
「田」(主宰=水田光雄)【2003年創刊・千葉県市川市】
大川の末広がりの初景色 仲 栄司
十五夜と言ひて会議を始めけり 佐藤千恵子
よく知らぬバイクをほめて冬に入る 草子洗
月待つは人待つに似てそぞろはし 石渡幸子
雨あがり穂紫蘇触れ合ふほどの風 フォーサー涼夏
菊の束赤ん坊ほどの持ち重り 兼行美栄
山粧ふパラグライダー吐き出して 柿本久美
「天穹」(主宰=屋内修一)【1998年創刊・東京都渋谷区】
手袋を脱いでたつきの指となる 前橋竹之
いら虫の謀議葉裏にかたまりて 米田由美子
足指でジャンケンポンや小春空 安達幸代
白障子床に百隠円相図 斉藤雅はる
天領の風の威も借り鳥威し 星加鷹彦
手袋の小銭こぼるる蚤の市 曽我晶子
多摩川を越えて旅めく小六月 髙野紀子
「童子」(主宰=辻桃子)【1987年創刊・東京都国立市】
葱作る人になるてふ立志式 安部元気
水澄むや女落ち行く地獄絵図 石井鐐二
長き夜の「風姿花伝」や問ふ答ふ 白井薔薇
風炉名残銘なきものはしづかなる 山田こと子
ひとりつ子なりけり曼殊沙華恐れ 小川春休
ちよいちよいと話の飛んで萩の宿 うな浅黄
間引菜も花背の宿の馳走かな 東あふひ
「南風」(主宰=村上鞆彦)【1933年創刊・東京都葛飾区】
ころころと古墳に棲める狸かな 新治功
右と言へば左へ行く子柿日和 深水香津子
人声に目玉泳がす枯蟷螂 古谷静
解体のビルのはらわた黄落期 日野久子
ジャケットの襟に項の肉の載る 若林哲哉
マスクよりシナモンの香のする日かな 森あおい
常夏のごとグラビア誌十二月 藤本智子
「鳰の子」(主宰=柴田多鶴子)【2011年創刊・大阪府高槻市】
楡の木は瘤を大事に冬に入る 柴田多鶴子
重陽の桐の小筥に琴の爪 師岡洋子
風の出て星またたかす賢治の忌 新谷壯夫
馴染めのことなどぽつり長き夜に 春名 勲
糸瓜忌や楽天といふ武器ひとつ 岩出くに男
吊し柿痩せて甘味のふくらめる 岩崎可代子
精鋭の新説を聴く夏期講座 本土 彰
「ひろそ火」(主宰=木暮陶句郎)【2011年創刊・群馬県渋川市】
年男窯火に祈ること多し 木暮陶句郞
裏路地のハッピーアワー暮早し 杉山加織
はたはたを翔たせてゆけり乳母車 星野裕子
草の花うれしいときも膝を抱く 里村閑
太陽がまだこいしいか穴まどひ 岩佐晴子
曼珠沙華落武者めきて雨の中 須藤恵美子
農捨てし漢に響く威銃 砂子間佳子
「松の花」(主宰=松尾隆信)【1998年創刊・神奈川県平塚市】
飛行船レモンの上に浮かびをり 松尾隆信
名月やけむりのごとく雲流れ 永島紀子
ビー玉に射し込む日差し秋彼岸 十亀健一
やはらかに山をつつめる花芒 斎藤翠
友異動かりがね寒き夕の帰路 吉田裕子
黛執逝けり名残りの秋高し しかい良通
十月の妻臨月の妻となる 松尾清隆
「街」(主宰=今井聖)【1996年創刊・神奈川県横浜市】
擬似餌作りて炉話に加はらず 今井聖
礼状に桃描く桃の香の中に 松野苑子
千歳飴提げてカーディーラー見上ぐ 太田うさぎ
近松忌深夜ラジオの菅田将暉 黒岩徳将
金木犀押し出して切る猫の爪 髙勢祥子
冬帽を被り直してなほ怒る 竹内宗一郎
猫の舌に冬の光の当たりたる 鷲巣正徳
「雪華」(主宰=橋本喜夫)【1978年創刊・北海道旭川市】
冬晴れの夜の蠱毒の戰星 青山酔鳴
たいくつな自由は孤独雪月夜 西川良子
ぼんのくぼ僅かにそれて初霰 高垣美恵子
水鳥に波紋えにしのほどけゆく 柊月子
順々に七引く父や冬の雨 太田量波
母といふ埋火父といふ底荷 坂本しづよ
鷹の舞ふこの地を蝦夷と呼びなせり 大西岩夫
【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2021年2月28日
*対象は原則として2021年2月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2021年3月5日
◆投稿先
以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/
【バックナンバー】
>>2021年1月の「コンゲツノハイク」(2020年12月刊行分)
【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】