山鳩の低音開く朝霞 高橋透水【季語=朝霞(春)】

山鳩の低音開く朝霞

高橋透水

 本日4月26日は426で良い風呂の日。よいふろ(4126)だから鳩…でピンと来る方、話が合いそうですね。電話番号の下四桁が「4126(よいふろ)」であることをかつてCMソングにしていたのはハトヤホテル。今でもその電話番号は生きている。

そんな連想から春の鳩の句を。

山鳩の低音開く朝霞

朝霞のなか、山鳩が低音で鳴きだした。「開く」は鳴き始めるの言い換えと受け取った。山の暮らし、あるいは山の旅路で迎える朝の雰囲気だ。朝霞もあって鳩の姿は見えないが、鳴き始めるその感じが何かを切り開いているようにも感じられたのだ。朝は低音に始まり、太陽が高くなっていくとともに声も高くなっていきそうだ。

ゴールデンウィークが始まる。皆さま、良い風呂で良い連休を!

『水の音』(2024年刊)所収。

吉田林檎


【執筆者プロフィール】
吉田林檎(よしだ・りんご)
昭和46年(1971)東京生まれ。平成20年(2008)に西村和子指導の「パラソル句会」に参加して俳句をはじめる。平成22年(2010)「知音」入会。平成25年(2013)「知音」同人、平成27年(2015)第3回星野立子賞新人賞受賞、平成28年(2016)第5回青炎賞(「知音」新人賞)を受賞。俳人協会会員。句集に『スカラ座』(ふらんす堂、2019年)


【吉田林檎さんの句集『スカラ座』(ふらんす堂、2019年)はこちら ↓】



【吉田林檎のバックナンバー】
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>>〔148〕春眠の身の閂を皆外し 上野泰
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>>〔120〕秋の蚊の志なく飛びゆけり 中西亮太
>>〔119〕草木のすつと立ちたる良夜かな 草子洗
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