◎「寒造」と一口に言うけれど……
――歳時記には日本酒関係の季語がいくつもありますけど、実際にお酒をつくる仕事をされていて、ズレを感じることはありますか?
中井 酒蔵のことばってたくさんあるんですよ、ほんまに。たとえば「甑」があったりとか〔米を蒸すために使う木桶のこと〕。掃除道具の一つを「ささら」と言ったりだとか。それが昔はぜんぶ季語やったらしいんです。でもね、いまの「ホトトギス」ではそういう言葉はぜんぶ季語じゃなくなってるんです。ひっくるめて「寒造」という季語になってるんですよね。たぶん「杜氏来る」も季語じゃないんちゃうかな。
――ぼくも「ホトトギス」の歳時記(稲畑汀子編)を使ってますけど、「杜氏来る」はないですね。ぼくが所属している結社では季語として認知されていて、〈杜氏来る松尾詣でのその足で 小野寺清人〉なんて句が出たりしましたね。
中井 「醪」とかも季語じゃないですよね。でもうちの祖父の代では、そういうのがぜんぶ季語として使われていたんですよ。それはちょっと淋しいなあと思ったりはしますね。
――いつか復活させたいと思ってたりしませんか?
中井 「坐禅草」って植物があるでしょう。あれも「ホトトギス」では季語じゃないんで、何か季語を入れなあかんかったんですけど、うちの番頭さんだったかなあ……うちの番頭も俳句やってたんですけど、誰かがきいたら、「すごいいい句を出してくれたら季語にします」って〔稲畑〕汀子先生から言われたって。
――ということは、確約はとれてるわけですね。
中井 でも汀子先生の心に響くような句を作らんとあかんいうことですね。
――でも、もともとは季語としても使われていたものなら、ゼロから作るというわけではないで、そのへんは見込みがあるんじゃないですか。
中井 角川さんとかだったら少し入ってるかもしれませんけど、いまはぜんぶ「寒造」にまとめられてしまってるので、そのへんを増やしていけたら楽しいかなとは思ってますね。
――やっぱり句集としてお爺さん、お父さんの「酒」の句がたくさん残っているわけですから、そこは継承していきたい部分はあるのかなと思います。
中井 そうですね。余花朗とか句鳰とかといっしょに句座を囲めたら楽しかったろうなあとは思います。

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