トラックに早春を積み引越しす 柊月子【季語=早春(春)】 


トラックに早春を積み引越しす)

(柊月子
『雪華』2023年5月号

島根への引越し準備が佳境を迎えている。

旭川市での生活も残すところ、あと4日になった。来週には、もう島根県民に変わっている。思い出巡りをしながら、引越しの準備を進めているのだが、子供と犬を相手しながらとなると、なかなか進まない。旭川生活が長かったこともあり、荷物が増えすぎてしまった。

引越しに伴って、断捨離を進めていたのだが、大変便利だったのが「ジモティー」である。アプリで、売りたい人と買いたい人をマッチングすることが出来る。もう使わないものを旭川の人の譲り、置いていくことが出来る。実際、バリスタ時代愛用していたコーヒーミル「カリタ ナイスカットミル」もジモティで売り出した。次の方が大事に使ってくれることを祈りたい。そんなこんなで、自分が生活した証を、「旭川のだれかの家」に置いていくことが出来るというこのシステム、なんとも素敵である。
 
今日は、どうしても引越しのことを書きたいと思っていた。引越しに関する俳句がどこかに無いかな~と探していたところ、思い浮かんだのは旭川で大変お世話になった身近な人の句だった。

掲句は『雪華』2023年の5月号 雪月花コーナーより。雪月花コーナーは、雪華誌での同人投句欄である。作者は、「雪華」同人の柊月子(@hiiragitukiko)

何度も引越しを経験したことがあるのだが、引越しは「準備が大変で、引越し自体は業者任せなのでラク」といったところだろうか。「早春を積み」という軽やかな言い回しがそんな様子を的確に表してくれる。家から荷物が出ていく気持ちよさと春がやってきた喜びを感じられるような一句。今、まさに早春、私の引越しのことを予知したかのような句だった。

作者の月子さんは、大の日本酒好きで意気も合う。
実は、雪華俳句会(@DCASWIRnGUCWKyD)の中の人でもある。俳句ではライバルだと思っているけど、賞の相談をしたり、結社の大会の選句取りまとめを夜な夜なやったりで本当にお世話になった。旭川でも張り合いのある俳句の鍛錬が出来たのは、間違いなく月子さんのおかげである。しばらく一緒に句会することも無くなるのかと思うと寂しいが、お互いに今後も良い句を育むことが出来ればと思っている。

島根から美味しい日本酒、送りますね。

鈴木総史


【執筆者プロフィール】
鈴木総史(すずき・そうし)
平成8年(1996)東京都生まれ、27歳。
北海道旭川市在住。3月より島根県松江市へ引越予定。
平成27年(2015)3月、「群青」入会。櫂未知子と佐藤郁良に師事。
令和3年(2021)10月、「雪華」入会。
令和4年(2022)、作品集「微熱」にて、第37回北海道新聞俳句賞を受賞。
令和5年(2023)1月より、「雪華」同人。
令和5年(2023)、連作「雨の予感」にて、第11回星野立子新人賞を受賞。
令和6年(2024)3月に、第一句集『氷湖いま』を上梓予定。
現在、「群青」「雪華」同人。俳人協会会員。


2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓


【2024年2月の火曜日☆鈴木総史のバックナンバー】
>>〔10〕足跡が足跡を踏む雪野かな 鈴木牛後
>>〔11〕父の手に負へぬ夜泣きや夏の月 吉田哲二

【2024年2月の水曜日☆山岸由佳のバックナンバー】
>>〔1〕雪折を振り返ることしかできず 瀬間陽子
>>〔2〕虎の上に虎乗る春や筥いじり 永田耕衣

【2024年2月の木曜日☆板倉ケンタのバックナンバー】
>>〔1〕寒卵良い学校へゆくために 岩田奎
>>〔2〕泥に降る雪うつくしや泥になる 小川軽舟
>>〔3〕時計屋の時計春の夜どれがほんと 久保田万太郎

【2024年1月の火曜日☆土井探花のバックナンバー】
>>〔5〕初夢のあとアボカドの種まんまる 神野紗希
>>〔6〕許したい許したい真っ青な毛糸 神野紗希
>>〔7〕海外のニュースの河馬が泣いていた 木田智美
>>〔8〕最終回みたいな街に鯨来る 斎藤よひら
>>〔9〕くしゃみしてポラリス逃す銀河売り 市川桜子

【2024年1月の木曜日☆浅川芳直のバックナンバー】
>>〔5〕いつよりも長く頭を下げ初詣 八木澤高原
>>〔6〕冬蟹に尿ればどつと裏返る 只野柯舟
>>〔7〕わが腕は翼風花抱き受け 世古諏訪
>>〔8〕室咲きをきりきり締めて届きたり 蓬田紀枝子


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

関連記事