夏の季語

【夏の季語】滝

【夏の季語=初夏〜晩夏(5月〜7月)】滝

【ミニ解説】

滝(瀧)とは、河川や湖の一部が段差になっているため、水が落下している場所のこと。

森のなかで出くわす滝は、涼しげである。

さりとて「滝」が夏の季語として流通するようになったのは、近代以後のこと。

1930(昭和5)年に高浜虚子選で募集した「日本新名勝俳句」(当時の大阪毎日新聞社と東京日日新聞社の共催)といったイベントなどが、その普及に一役買った。

「春の滝」や「秋の滝」はあまり用いられないが、「冬の滝」「冬滝」は、冬の季語としてよく用いられる。

「瀧」は旧字である。


【滝(上五)】
瀧の上に水現れて落ちにけり 後藤夜半
滝落ちて群青世界とゞろけり 水原秋櫻子
滝落したり落したり落したり 清崎敏郎
滝といふ水の塊落ちに落つ 鷹羽狩行
滝が落つ金槌ならむまぎれ落つ 竹中宏
滝の前だんだんわれの居なくなる 奥坂まや
滝おちてこの世のものとなりにけり 曾根毅

【滝(中七)】
家毀し瀧曼荼羅を下げておく 飯島晴子
今生を滝と生まれて落つるかな 岩岡中正
この星のまはること滝落つること 対中いずみ
未来より滝を吹き割る風来たる 夏石番矢
妹は滝の扉を恣 小山玄紀

【滝(下五)】
神にませばまこと美はし那智の滝 高濱虚子
めつむれば炎の見ゆる滝浄土 角川春樹
みちのくに戀ゆゑ細る瀧もがな 筑紫磐井
透明になるまで冷えて滝の前 上田貴美子
言霊の力を信じ滝仰ぐ 杉田菜穂


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