【秋の季語】茸(菌)

【秋の季語=晩秋(10月)】茸、菌(きのこ)、茸(たけ)

世の中には、さまざまな茸があります。

食用の茸には「松茸」「椎茸」「占地」「舞茸」などがありますね。

たいして、「毒茸」には「天狗茸」「月夜茸」「紅茸」などがあります。

基本的にはすべて秋の季語ですが、「春椎茸」は春の季語、梅雨の時期の茸は「梅雨茸」で夏の季語となります。

秋の季語である「茸」に関連する季語としては、「茸山(たけやま、きのこやま)」で天然の茸を探す「茸狩」「茸採」、採った茸を長期保存するための「茸干す」、料理としての「茸飯」などがあります。「くさびら」は茸の古名です。

たとえば、歌人の斎藤茂吉は食べることが大好きでした。

しめぢ茸栗茸むらさきしめぢ茸木の葉のつきしままに並めたる
秋山をかゆきかくゆきとりてこしきのこの汁もうれしきものぞ

たとえば、夢野久作の童話「きのこ会議」は〈毒茸がやっつけられる物語〉という勧善懲悪の物語を描いています。書き出しを引用しておきましょう(青空文庫で読むことができます)。

初茸、松茸、椎茸、木くらげ、白茸、鴈茸、ぬめり茸、霜降り茸、獅子茸、鼠茸、皮剥ぎ茸、米松露、麦松露なぞいうきのこ連中がある夜集まって、談話会を始めました。

また、高原英理『日々のきのこ』(河出書房新社, 2021)という本もあります。小説においては、きのこは幻想を呼び込む存在として愛されているようです。これもおすすめ。

重要なことですが、俳句では「茸」だけではなく「菌」という漢字も使い、それぞれ3音なら「きのこ」、2音なら「たけ」と読ませることができます。


【茸(上五)】
茸山に見えてとまれる汽車のあり 吉岡禅寺洞
茸飯ほこほことして盛られたる 日野草城
食へぬ茸光り獣の道狭し 西東三鬼
茸の袋痩せて日焼けて首澄んで 金子兜太
赤き茸礼讃しては蹴る女 八木三日女 
茸山村をけむりと思いおり 森下草城子
茸莛繭臭しとも思ひけり 瀧春一
菌山の白犬下り来るに逢ふ 山口誓子

【茸(中七)】
浅間晴れ堆肥に菌こぞりけり 武井耕矢
食べられて茸は消えてしまひけり 鴇田智哉
姉よ巨きはえとりたけに空みえず 安井浩司
峠路の露天にきのこ談義かな 高木弘子
傘さしてまつすぐ通るきのこ山 桂信子
果てしなく茸生えくる日々の果て 高原英理

【茸(下五)】
扇にてしばし教へるきのこかな 小林一茶
我声の風になりけり茸狩 正岡子規
爛々と昼の星見え菌生え 高浜虚子
誰も来ぬ日の山中に茸あそぶ 青柳志解樹
駅前の日陰に小さし茸売 秋葉芙美子
齢深みたりいろいろの茸かな 森澄雄
その奥の目立たぬ山が茸山 岸本尚毅
老僧の忘れかけたる茸の城 小林衹郊 

【茸(その他)】
菌汁大きな菌浮きにけり 村上鬼城


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