長き刃をいよいよ受くる鮪かな 鈴木総史【季語=鮪(冬)】

長き刃をいよいよ受くるかな

鈴木総史

食べ物へ最初に刃を入れる瞬間はハレもケも問わず緊張感と高揚感を覚えるもの。誕生日のホールケーキや掌で震える絹ごし豆腐、断面まで計算して作ったフルーツサンドにナイフを入れる時なんてちょっとしたお祭りのようなものだ。そしてこの感覚は対象の食物が大きくなるほど周囲の目を惹き、イベント性を帯びてくる。

例えば「皆さんシャッターチャンスです!」のアナウンスと共に行われる結婚式のケーキカット。いただきものの大玉すいかやメロンを切る瞬間をどきどきしながら見守った幼少期の記憶。また刃物ではないが酒樽の鏡割りや塩釜焼へ最初の木槌を入れる瞬間も似たようなものではないか。

掲句は鮪がいよいよ解体されようとしている魚市場の「鮪の解体ショー」の景。スマホやカメラを片手に、鮪に刃が入る瞬間を見つめるギャラリーの緊張感と高揚感は最高潮だ。しかしこの句においては存在するはずの観衆の声や視線は描かれておらず、主体となる鮪と包丁を手にした職人のみでの独立した世界が展開されている。

触れるだけで指も切れそうなほど鋭く研がれた包丁を手に職人が向き合うのは、海原を巡り漁師たちとの格闘を経て横たわる鮪。早々に船上で〆られた鮪の目には刃も職人も宿すことはないが「お前はこの身を割くに値する者か」と試すような視線さえも感じられる。そこへ迷いもなく鮪包丁の冷たい刃が入った瞬間、観客からは感嘆の声が上がるが職人にも鮪にとっても関係のないことだった。
単なる作業やエンタメとして消費される解体ショーではなく、ひとつの海の生命が割かれて食材へと変わる瞬間が切り取られた掲句の鮪。この鮪は美味しいを超えてもはや滋味溢れる「ありがたい」存在だろう。

(鈴木総史 第一句集「氷湖いま」より)

5億円の値がついた鮪の初競もまだ記憶に新しい今日この頃。鮪の水揚げ量トップクラスの静岡県出身の自身にとって大変食欲を刺激させられるニュースでした。

そして今日は小正月。句集「氷湖いま」では、掲句の隣に
ワインにも紅白のある小正月
の句が。今回は小正月のワインにも合うツナ缶のオープンサンドをご紹介します。生の鮪やネギトロをふんだんに使った海鮮丼はもちろん絶品。だけどお正月もおしまいなので日常にある食材でお手軽に。ツナ缶だって立派な鮪です。静岡の隠れた名産品でもあるので機会があればぜひお土産にどうぞ!

材料(2人分)は下の通り。

・食パンまたはバゲット…2枚
・玉ねぎ…1/4
・ツナ缶…大さじ3 (油漬けがおすすめ)
・とろけるチーズ…2枚
・おろしにんにく…お好みで
・マヨネーズ…小さじ1
・塩、こしょう…適量

もっとボリュームが欲しいなという方はベーコンなどお好みで具材を増やしてくださいね。

作り方も簡単。
パンは食べやすく縦半分に切った後で薄くマヨネーズを塗り、玉ねぎは粗いみじん切り。
フライパンに玉ねぎとツナ缶を油ごと加えて熱し、玉ねぎが透き通ってきたらおろしにんにく、塩こしょうで味をつける。おろしにんにくは加熱すると爆ぜやすいので火傷にご注意!
パンに炒めたツナ玉ねぎ、とろけるチーズをのせ、フライパンまたはトースターで焼く。チーズがとろけるまで焼いたら完成!
お好みでパセリを散らすほか、ホットサンドの具材にするのもおすすめです。

お正月も終わり、浮足立った雰囲気も落ち着いてきました。立春にもまだ遠く、なんとなく心が沈む今の時期。そんな時こそ「いつものごはん」を食べましょう。

鮪のお刺身のように毎日が贅沢じゃなくてもいいし、手間のかからない時短料理もいい。出来合いを取り入れてもいい。映える要素は薄いけれど一品ずつ対話するように向き合って作ったごはんは冬ごもりの身体を温め、小さな春を見つける活力になるはず。
この連載も残り少なくなってきました。最後までどうぞよろしくお願いいたします!

佐野瑞季


【執筆者プロフィール】
佐野瑞季(さの・みずき)
1997年静岡県生まれ
雲の峰」所属 超結社句会「四季の料理帖」代表
第17回鬼貫青春俳句大賞
夢はかまくらの中でお餅を焼くこと
・E-mail:kigotabekukai@gmail.com
・X @Sano_575
・Instagram @sano_575
・四季の料理帖X @kigotabe
・四季の料理帖Instagram @shikinoryoricho



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