足跡が足跡を踏む雪野かな
鈴木牛後
(「北海道俳句年鑑2023」より)
本日から土井探花さんより、火曜日を引き継ぎます。1年ぶりにカムバックしました、鈴木総史です。2か月間よろしくお願い申し上げます。
私事ではあるのだが、仕事の都合で2月いっぱいで北海道を離れることとなった。次の住処は、島根県松江市である。再び、縁もゆかりもないところへ引っ越すことになった。思えば、4年ほど前に旭川に配属された時と同じような気持ちになっている。ワクワクと不安が入り乱れている。そんな中、この原稿を書き始めている。
本日は、「雪華」「藍生」同人の鈴木牛後さんの一句。北海道出身の俳人といえば、真っ先に思い浮かぶのが彼だろう。そんな牛後さんも、昨秋に北海道から関東へ引っ越した。馴染み深い街を離れるということは、その人にとってどういうことなのだろうか。
私にとっての出身地である「東京」はすこし生きづらい街だった。私生活も俳句の鍛錬においても、生き急いでしまっていた気がする。何事も周りと比べられることが多く、周りを意識しすぎてしまっていた。いわゆる、自分のペースで物事を進めることができていなかったのだろう。それに対して、「北海道」は私にとってぴったりの土地だったと言えるのではないか。都会の喧騒を遠く離れ、自分のペースで生きていくことができた。俳句にも、のびのびと取り組むことができ、自分の作句スタイルを再構築することができた。その中で、大きな賞を2つ手にすることが出来た。私生活では、妻と出会い、息子も誕生した。紛れもなく、第2の故郷と呼べるほどの私自身の原点になっているのだ。そんな「北海道」を離れることに大きな悲しみを感じているのは事実だ。
雪野の句。北海道に来てより、雪が当たり前になったが、旭川に赴任した当時は、大層驚いたことを今でも覚えている。とにかく雪の降り始めが早い。そして、あっという間に一面が銀世界になってしまう。掲句は、雪野の足跡をよく見て描写されている、眼が効いた作品である。「足跡」という語には、先人たちを含む、多くの道民の軌跡が含まれているのではないだろうか。北海道に住むだれしもが、その雪野に足跡を刻んできたのである。
私はどうだろうか。北海道に住んだ5年弱で、足跡を残すことができただろうか。私の5年間はちっぽけかもしれない。しかし、私に多くのことを与えてくれた北海道という土地、そしてそこに住む多くの人々に感謝し、第一回を終えたいと思う。
(鈴木総史)
【執筆者プロフィール】
鈴木総史(すずき・そうし)
平成8年(1996)東京都生まれ、27歳。
北海道旭川市在住。3月より島根県松江市へ引越予定。
平成27年(2015)3月、「群青」入会。櫂未知子と佐藤郁良に師事。
令和3年(2021)10月、「雪華」入会。
令和4年(2022)、作品集「微熱」にて、第37回北海道新聞俳句賞を受賞。
令和5年(2023)1月より、「雪華」同人。
令和5年(2023)、連作「雨の予感」にて、第11回星野立子新人賞を受賞。
令和6年(2024)3月に、第一句集『氷湖いま』を上梓予定。
現在、「群青」「雪華」同人。俳人協会会員。
2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓
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