
【読者参加型】
コンゲツノハイクを読む
【2026年4月分】
月末の恒例行事!「コンゲツノハイク」から推しの1句を選んで200字評を投稿できる読者参加型コーナーです。みなさんに未来の名句を探していただいています。今月は、8名の皆様にご参加いただきました。
どの遺影からも見えゐる鏡餅
稲葉守大
「南風」
2026年4月号より
本来、遺影は「こちらが見るもの」だが、「遺影の側から見られている」視点の反転の構図が面白い。「どの遺影からも」と複数形で言い切ることで、古くから継がれゆく家の佇まいが見える。そこに並ぶ死者たちの視線が一斉にこちらへ向かい、その中心に鏡餅が置かれている。「見えゐる」が静かな時間の持続を帯びている。遺影も鏡餅もこの場にいるのも生者なのに、句のなかでは死者と供物だけが相互に関係しあっている、仏間のようにしんとした空間。新たな年が来る。
(押見げばげば)
霜焼や妣より長き足の指
秋山みち子
「橘」
2026年4月号より
体質が遺伝したのか母と私は足の指先が霜焼けになり毎冬悩まされていました。父と妹は霜焼けになりませんでした。霜焼けにはお灸が一番効き、モグサを霜焼けが出来たところに乗せ線香で火を着けます。熱いと感じたらすぐに濡れたティッシュで取って構いません。足の指に乗せるので重力があるため場所によっては自分で火をつけることは無理な体勢になります。母子でお互いにお灸をしてあげていました。この作者は今一人でお灸をしなければならないのでしょうか?
(慢鱚/「俳句大学」)
御守りのふつくらとして深雪晴
ばんかおり
「南風」
2026年4月号より
「ふつくらとして」があたたかくてまろやか、とっても安心。きっと守ってくれるにちがいないでしょう。大雪が降りやんだあとの白銀の世界に、明るい期待、きりっとした意思を感じます。なんでもうまくいきそうな気がします。
(小松敦/「海原」)
御守りのふつくらとして深雪晴
ばんかおり
「南風」
2026年4月号より
雪晴の季語から空やそれらの色など写生であればすぐ連想できるように思いますが、そこに「御守り」が。何の御守りかわからないけれどそこにはもちろん祈りがあり、「ふっくらと」に、暖かな心の包まれて青い空とその空に映える美しい雪が、待春としてその祈りの結果を暗示するように。
時期的に受験も考えましたが、来る春に向けて、これから始まるもの、生まれてくるものなど、その他いろいろと想像が膨らみ、うれしく気持ちの良い句と、思いました。
(haruwo/「麒麟」)
冬銀河の欠片窯変天目に
上村百香
「天穹」
2026年1・2月合併号より
曜変天目茶碗は、現在日本に所在する三碗のみが国宝に指定されている。焼き上げる過程で黒釉が変化して斑紋が生じているのが特色で、内側には星のようにもみえる大小の斑文が散らばり、斑文の周囲は混沌状の青色や青紫色で、角度によって玉虫色に光彩が輝く。「器の中に宇宙が見える」とも評されており、この句の眼目と一致する。
(野島正則/「青垣」「平」「noi」)
蛇穴を出でて巻き癖残りたる
村上喜代子
「いには」
2026年4月号より
塒を巻いて冬眠していた蛇が仲春になり地上に現れる。その蛇の身体に残る巻き癖を見つけた作者。寝起きの人の頭髪に寝癖が残る事があるように蛇にも巻き癖があることを発見したことを近しい人に伝えて行く作者の姿が浮かびユーモラス。塒と旋毛との類似性を想像したり、蛇口から出した水が浴槽の排水溝に流れ吸い込まれてゆく時に、水の渦が北半球と南半球で反時計回りと時計回りとで違うことなどが合わせて思い出された。
(貴田雄介/「台北俳句会」)
初風呂の別府温泉入浴剤
仲摩曜子
「澤」
2026年3月号より
初風呂は、新年を迎えてはじめてのお風呂のこと。日本の名湯シリーズのような、いろいろな温泉地のアソートから、別府温泉を選んだのだと思う。初風呂の入浴剤として別府温泉を選んだのは、ふるさとが近いのか、かつて旅行で訪れた楽しい思い出があるのかもしれない。肩肘はらない入浴剤という句材のよさを感じる。新年の季語であるが、日常に楽しみを見つけているところにユーモアがあり、好感がもてる。「別府温泉入浴剤」の語呂もよい。
(千野千佳/「蒼海」)
靴紐のすぐにほどけて神の旅
髙野里枝
「田」
2026年4・5月号より
道を歩いている人の、この日を待っていましたというように、目的地へ向かう足どり。清々しく、溌剌とした印象を受ける。新しい靴を履いて勢いよく家を出たものの、すぐにほどけてしまったようだ。しかし残念とか面倒という感じがない。すぐに結び直してまた歩きだす。大切な仲間たちに会いにゆくのだろうか。長旅になるのだろうか。神の旅というと神々が空を飛んでいるイメージがあるのだが、ほどけた靴紐が羽根のようであり、そのイメージに重なる。軽やかでありながら、どことなく強い意志を感じる。
(弦石マキ/「蒼海」)

【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2026年5月5日
*対象は原則として2026年4月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2026年5月10日ごろ
◆投稿先 以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/
