毎月が俳句年鑑! 前月に刊行された俳句結社誌・同人誌の最新号から「(最大)7句」を推薦いただき、掲出するコーナーです。このページの句のなかから、推しの一句を選んでご鑑賞いただく読者参加型コーナー「コンゲツノハイクを読む」は、7月25日締切です(通常に比べ5日延長しました!)。どなたでもご参加いただけますので、詳しくはリンク先をどうぞ。来月分のコンゲツノハイク(いつもどおり7月31日締切)については、こちらのフォームからご投稿ください。
コンゲツノハイク 2023年7月
(2023年6月刊行分)
今月の参加結社(31)=「秋草」「いには」「伊吹嶺」「閏」「炎環」「円虹」「海原」「火星」「かつらぎ」「銀化」「銀漢」「雲の峰」「櫟」「澤」「磁石」「秋麗」「青山」「鷹」「橘」「田」「天穹」「都市」「南風」「鳰の子」「濃美」「ふよう」「ホトトギス」「街」「松の花」「森の座」「雪華」
「秋草」(主宰=山口昭男)【2010年創刊・兵庫県神戸市】
<2023年7月号(通巻163号)>
芍薬のたとへば婆のねむりかな 山口昭男
たんぽぽのとなりにゐたくなつてをり 高橋真美
何するにしてもヒヤシンスが見えて 鬼頭孝幸
縁側に盆置いてある茶摘かな 小鳥遊五月
病にも慣れて海酸漿の赤 舘野まひろ
アイロンの突つ立つてゐる日永かな 水上ゆめ
春蟬になんて明るい曇り空 野名紅里
「いには」(主宰=村上喜代子)【2005年創刊・千葉県八千代市】
<2023年7月号(通巻178号)>
鮎食べてはきはきしたる身のこなし 村上喜代子
ちんたらとすべては杉の花のせい 西澤照雄
大匙と小匙つながる春愁 橘内訓子
桜餅長命寺対道明寺 塚本 親
芋植ゑてこの安穏がふと怖し 鈴木靖彦
「伊吹嶺」(主宰=河原地英武)【1998年1月創刊・愛知県名古屋市】
<2023年6月号(通巻300号)>
青芝の父ぱつたりと死んだふり 河原地英武
犬膝に春満月を仰ぎをり 栗田やすし
生臭き猫の吐息や春の闇 関根切子
おしやれして吾の遺影撮るさくら時 長谷川妙好
ペン先にふくるるインク春灯 井上千保子
春泥を蹴り少年の三塁打 加藤剛司
甘過ぎるザッハトルテや春の宵 小川剛史
「閏」(代表=守屋明俊)【2021年2月創刊・東京都国分寺市】
<2023年6・7月号(通巻第15号)>
今はまだモスラの卵入学す 守屋明俊
のどかさや見本とちがふおかめそば 本多遊子
ふきのたう秋田音頭は祖母の歌 水谷光子
薪ストーブ分厚き忍野村々誌 森尻禮子
笛吹けど海よむかしの春ならず 久保田勝一
ストーブを消して日差しの中で書き 菅原淑子
遠き祖は魚類か水か目借時 寺田幸子
「炎環」(主宰=石寒太)【1989年創刊・埼玉県志木市】
<2023年6月号(通巻516号)>
縮む海馬よ石鹼玉膨らめり 石寒太
音楽は死せず流れむ花筏 鮫島沙女
榛の花に榛の空あり風の音 小野雅子
じやんけんで形見を分けし鳥曇 丹間美智子
日は朝半音の無きチューリップ 関根誠子
顔洗う顔の面積春の雲 田島健一
鳥雲に入るや一人となる戸籍 原紀子
「円虹」(主宰=山田佳乃)【1995年創刊・兵庫県神戸市】
<令和5年7月号第343号>
咲くものに散るものに添ふ春の風 横山脩子
杭を打つ音の谺や野火上がる 板垣柳子
銭荷早やおのが水影離したる 石井宏幸
頬杖をつけば春愁なほつのり 石井健治
観音の御手に乗せたきうぐひす餠 芝切志津子
新聞の字さへ怪しき万愚節 赤塚昌弘
クラス替へ有りて中三の春愁 中嶋ふき子
「海原」(代表=安西篤)【2018年創刊・千葉県市川市】
<2023年6月号(第49号)>
黙祷のどこを断ちても白さざんか 伊藤道郎
還らざるものらへ流木立てておく 大西健司
革手袋情死のように重ねられ 桂凛火
労働終はる手のひらの陽炎へり 小西瞬夏
ハミングのほどけ二月のうさぎかな 三枝みずほ
ほうれん草包む戦禍の紙面かな 藤田敦子
冬の葬みんな小さな兎憑き 望月士郎
「火星」(主宰=山尾玉藻)【1936年創刊・大阪府大阪市】
<2023年6月号(通巻1001号)>
蛤汁の砂嚙みあてし上座かな 山尾玉藻
寄生木の風を聞き分け春浅し 永井喬太
とつておきの話に閉てし春障子 蘭定かず子
いさかひか恋かし吹きし春の鴨 今澤淑子
硯海にあり鶯の谷わたり 坂口夫佐子
藤房のとりどりに揺れ月痩する 五島節子
春風も詰めて鯖節量らるる 湯谷良
「かつらぎ」(主宰=森田純一郎)【1929年創刊・兵庫県宝塚市】
<2023年6月号(通巻1122号)>
囲めるは熊野連山桜待つ 森田純一郎
ひとしきり女人高野の春の雪 平田冬か
手触れなばひつつきさうや青蛙 村手圭子
光りつつ春の氷の薄らぎぬ 西岡たか代
モンローの唇に似て落椿 木村由希子
当分は雛の間となる醤蔵 豊原みどり
句作とて先づ爪切るや春愁ひ 菅原好隆
「銀漢」(主宰=伊藤伊那男)【2011年創刊・東京都千代田区】
<2023年7月号(通巻149号)>
満願の遍路なるべし湯に浮くは 伊藤伊那男
龍天に淡海は大き水鏡 中島凌雲
北へ行く雲と語らむ啄木忌 福原 紅
燻りのやがて霞に二月堂 中島凌雲
桑解くや上毛三山弾くやに 萩原陽里
花菜摘む花菜明りのともるまで 戸矢一斗
ふらここを降りて両手の錆臭し 谷口いづみ
「銀化」(主宰=中原道夫)【1998年創刊・東京都港区】
<2023年7月号(通巻298号)>
花冷や皿の鬼門に練り辛子 松王かをり
青饅やこれより先は三河路と 加藤哲也
チューリップたることを辞す開きかな 伊野智彦
真つ白な富士を入学祝とす 石山正子
麗かに三昧の戸の開いてゐる 畑鰻戊
忌の明けぬ人に会ひたる蕨山 上村一九路
蒲公英の絮に拡散恃みけり 後藤正雄
「雲の峰」(主宰=朝妻力)【1989年創刊・2001年結社化・大阪府茨木市】
<2023年6月号(通算384号)>
桜蕊降る西行の眠る寺 高野清風
慈明忌を修し見上ぐる春北斗 原茂美
春暁や供物も積める渡し船 渡邉眞知子
春愁や粛と古刹の血天井 平井紀夫
花時の紀寿の祝に集ひけり 柏原康夫
有り物で料る夕餉や春深し 糟谷倫子
いしぶみの義士の雅号のあたたかし 小林伊久子
「櫟」(主宰=江崎紀和子)【1993年創刊・愛媛県東温市】
<2023年6月号(通巻357号)>
考ふるホモ・サピエンス桜餅 櫛部天思
鷹化して鳩と為る日のゆで卵 戸田一雄
春霖や夫に思春期らしきもの 岡野晃子
自転車の将棋倒しや公孫樹の芽 坂本公子
惑星の囁きあふよ春の宵 松田かをり
春寒や路面電車の胴震ひ 向井公子
啓蟄やスマートウオッチ腕につけ 妻鳥弘子
「澤」(主宰=小澤實)【2000年創刊・東京都杉並区】
<2023年6月号(通巻279号)>
池の面を鴨はしりゆく飛び発たず 小澤實
花の昼笛吹く前の白湯少し 村戸弥生
バレンタインデー少女拳に瓦割る 生井敏夫
あらむはちやとうりあんえいぷりるふーる 光本蕃茄
ドローンより火炎噴射ぞ蜂の巣駆除 佐藤涼子
花の雨メタバースより帰還せる 吉成沢子
桜守白眉白髪白髭ぞ 笠井たかし
「秋麗」(主宰=藤田直子)【2009年創刊・神奈川県川崎市】
<2023年6月号(通巻153号)>
カルメンの像薫風を腰に巻き 藤田直子
野遊や次のあそびを思ひつき 三木瑞木
石くれに仏のむかし菫咲く 土橋清志
薫風や子らを放てば駆け止まず 田子慕古
再会は違ふ制服春の街 外池拓人
一木の老い囀を遠ざくる 山田かゆう
若き日を昭和に生きて菊菜の香 頼広節子
「青山」(主宰=しなだしん)【1982年創刊・神奈川県横浜市】
<2023年6月号(通巻487号)>
僕のです一番咲きのチューリップ 山崎ひさを
父の日や真珠の色の土星の環 しなだしん
虎が雨うしろに昏き海の音 井越芳子
春の陽を洗濯物と共に浴ぶ 百瀬 碧
冬涛を受けて立つ気の少しあり 足立宏子
なやらいひの赤鬼として出を待てり 滝口和男
飛行機雲のほぐれて梅の香りけり 稲積愛子
「鷹俳句会」(主宰=小川軽舟)【1961年創刊・東京都千代田区】
<2023年7月号>
擬音語満ちボクシングジム夏近し 小川軽舟
廃校の後の廃村蝌蚪生まる 山下桐子
飲み会を抜けて飲み屋へ春の月 大野潤治
帰省子に乾物戻す匂ひかな 本橋洋子
みちのくに産声のごと花咲けり 佐野恵
高く長く防潮堤や北寄剝く 清家馬子
存分にさくら見し夜の髪重し 鈴木照江
「橘」(主宰=佐怒賀直美)【1978年創刊・埼玉県久喜市】
<2023年7月号(通巻547号)>
杜鵑花咲く狭山の丘の明るさに 尾野恵美
清明や吸呑みの水地震に揺れ 簑口民子
教室の年表折れて雲の峰 持田義男
ひとひらの花を句帳に一人の夜 馬場まさ子
泣きやみてキスはおでこに春の星 築井雅美
さくらさくら帽子ころころころがつて 西野雅子
夕暮や母の春日傘の折り目 吉田八汐
「田」(主宰=水田光雄)【2003年創刊・千葉県市川市】
<2023年7月号(通巻244号)>
十指ほどきて金縷梅のかがやけり 細川朱雀
犀星忌あまたの校歌うたひ継ぎ 井上圭子
いつせいに眼鏡の曇る冬館 渡部あさこ
鞦韆漕ぐ遠白山をぽんと蹴り 伊東慶子
春駒の鼻突き立てて阿蘇の空 草子洗
堆く地べたに春の段ボール 間 恵子
蝶低く日向の起伏なぞり来ぬ 平野山斗士
「天穹」(主宰=屋内修一)【1998年創刊・東京都渋谷区】
<2023年7月号(通巻305号)>
ジーンズの膝の丸見え土筆摘む 山口ひろ女
自販機に故郷の水風光る 青木遵子
アルバムに手形足形子供の日 久保田雅久
ヴィーナスと居残る画室春灯 田嶋しゅうじ
花筵みんなこの世の途中下車 藤栄誠治郎
レコード店に探す青春春夕焼 前川尚子
水温む手波で急かす笹の舟 坂口明子
「都市」(主宰=中西夕紀)【2008年創刊・東京都町田市】
<6月号 通巻93号>
新刊書開かず古りて鳥雲に 中西夕紀
春泥を来てそよ風に座りけり 森有也
利かん気の犬三頭と青き踏む 岩原真咲
隅田川渡る電車の灯のおぼろ 中島晴生
竹林の葉の湧くごとし涅槃西風 北杜青
目に痛き蒼黒の空霧氷林 秋澤夏斗
氷原や無音の中の鳥一羽 永井詩
「南風」(主宰=村上鞆彦)【1933年創刊・東京都葛飾区】
<2023年7月号(通巻956号)>
山吹の散り浮く沢に嗽ぐ 若林哲哉
音たてて折り目ふくらむ紙風船 澤木恭子
バゲットの気泡ななめにクローバー 日野久子
野遊びやここぞと友へ飛びかかる 藤本智子
アネモネの花芯暗黒星雲ぞ 陰山 恵
陽のさして茎の澄みたる土筆かな 帯谷到子
風が葉をときどき返す春子かな 延平昌弥
「鳰の子」(主宰=柴田多鶴子)【2011年創刊・大阪府高槻市】
<2023年6月・7月号(通巻第60号)>
好きな句の話などして桜餅 師岡洋子
何色か知らぬ朝顔まきにけり 春名勲
芽柳の触れたさうなる流れかな 新谷壯夫
花冷えや捨舟に降る小糠雨 岩出くに男
日向の香日蔭の香あり梅の園 岩崎可代子
うすら日や顔の冷たき梅まつり 松本美佐子
永き日の山椒魚のオブジェかな 本土彰
「濃美」(主宰=渡辺純枝)【2009年創刊・岐阜県岐阜市】
<2023年7月号(通巻172号)>
一島の暮れ残りあり石蓴籠 渡辺純枝
襞といふ濃く深きもの春思にも 関谷恭子
どこからも読める句集やあたたかし 加治屋時子
里山は山羊一匹の花見かな 緒方房子
つちふるや象の睫毛の長かりき 中島美恵子
オムライスふはつと朧月夜かな 浅野しげ子
朝市の最前列の土筆かな 後藤五百合
「ふよう」(主宰=千々和恵美子)【2005年創刊・福岡県遠賀郡】
<2023年6月号(通巻100号)>
夏燕海をはるかに観覧車 千々和恵美子
検診のまづまづ茅花流しかな 貴田将子
湯治場の桶に檜の香や時鳥 森 和子
かざす手に傾ぐしやもじやどんたく隊 明石和夫
紙風船つくかろやかな昭和の音 後藤欣子
清和かな百光放つ水平線 前原泰子
抱いて待つ脈なき妻の救急車 坂井俊郎
「ホトトギス」(主宰=稲畑廣太郎)【1897年創刊・東京都千代田区】
<2023年7月号(通巻1519号)>
水の綺羅水の修羅行く小鮎かな 稲畑廣太郎
風の譜に光の音符春立ちぬ 涌羅由美
春立つや野山一水より弛ぶ 中村恵美
畦焼きし後大粒の雨となる 塚本早苗
提灯の百の灯りて初恵美須 杉森大介
空と雲あはひなくして春立てり 吉岡簫子
でこぼこのアスファルトよりたんぽぽ出 金子奈緒美
「街」(主宰=今井聖)【1996年創刊・神奈川県横浜市】
<2023年6月号>
大魚拓囲む卒業部員の名 今井聖
猫車押す卒業の次の日も 太田うさぎ
海の色そのままかけてかき氷 北大路翼
合掌の隙間より蝶生まれけり 黒岩徳将
真ん丸にならむと歪むしやぼん玉 小久保佳世子
ぶらんこに腹載せてをり垂れてをり 西生ゆかり
午後の授業抜けて磯巾着とゐる 西澤みず季
「松の花」(主宰=松尾隆信)【1998年創刊・神奈川県平塚市】
<2023年6月号(通巻306号)>
夕ひばり川底の石見えてをる 松尾隆信
侵攻の紙面が包む春キャベツ 伊熊朋則
推敲の耳に雨音誓子の忌 伊藤真理子
鳥雲に父の遺骨は石ひとつ 佐藤公子
三越を過ぎて日銀花の雨 矢野玲奈
地虫出づ子は階を飛びて行く 瀧谷弥可
太股を隠さぬ少女鼓草 森脇由美子
「森の座」(代表=横澤放川)【2017年創刊・東京都文京区】
<2023年6月号>
新生即更新泉のこゑやこゑ 横澤放川
春満月へ到達できぬロケットよ 奈良比佐子
けふ海は特別な青たんぽぽよ 田山康子
どどどどど星集り来お水取り 小池厚子
さるぼぼの寄せ合ふ肩や冴え返る 中村百仙
葦を焼く焔壁なし立ち上がる 内田和子
もののみなとほくにありて春ともし 渡辺多佳子
「雪華」(主宰=橋本喜夫)【1978年創刊・北海道旭川市】
<2023年7月号>
母の日と言うて己を甘やかす 西川良子
春ショール母の残り香もうあらず 高垣美恵子
つぎつぎと光裏返して瀑布 島崎寛永
霾やどこか硝煙ただよへる 小泉晃治
初夏の鎖骨を辷りゆく光 増田植歌
楽園を捨て去るごとく蚯蚓這ふ 三品吏紀
春愁を水切り籠に立てておく 村一草
【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2023年7月31日
*対象は原則として2023年7月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2023年8月5日
◆投稿先
以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/
【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】