冬の季語

【冬の季語】冬木

【冬の季語=三冬(11〜1月)】冬木

文字通り冬の木の総称として用いられます。

落葉樹・常緑樹の両方を含みますが、冬らしさをつよく感じさせるのは落葉樹のほうでしょう。例句にも落葉樹と思われる句があります。

冬の落葉樹だけを指す季語に「枯木」「裸木」があります。くらべてみると、「冬木」のほうがあいまいで広がりのあるイメージを持っていることが分かります。

また、「寒木(かんぼく)」も落葉樹・広葉樹の区別はありませんが、この場合「冬木」よりも寒さが強調されます。


【冬木(上五)】
冬木描くいきなり赤を絞り出し 橋本美代子
冬木この手をからませる青春や 加藤郁乎
冬木照り野の寂寥のあつまりぬ 加藤楸邨
冬木道尽きて海とはなりにけり 木山捷平
冬木のどこ曲がりても楼蘭へ行ける 塩野谷仁

【冬木(中七)】
白雲と冬木と終にかかはらず 高浜虚子
昏れて無し冬木の影も吾が影も 三橋鷹女
はるかなる冬木と夢に遊びけり 橋閒石
青年に愛なき冬木日曇る 佐藤鬼房
誰も来ぬ冬木の檻に獣眠る 永井龍夫
つなぎやれば馬も冬木のしづけさに 大野林火
もの言えといきなり冬木ゆすりおり 大山安太郎

【冬木(下五)】
我ここにかくれ終りし大冬木 高浜虚子
大空に伸び傾ける冬木かな 高浜虚子 
わが庭に声々たかし冬木の子ら 栗林一石路
枯れゆけばおのれ光りぬ冬木また 加藤楸邨
人去れば囁きあへる冬木かも 橋本螢治
猫降りて次第にくらくなる冬木 佐藤鬼房
青天は流るるごとし冬木原 近藤楓渓
鴎外の文体で立つ冬木かな 中嶋秀子
明日伐る木ものを云わざるみな冬木 細谷源二


  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 【春の季語】月朧
  2. 【冬の季語】炬燵
  3. 【冬の季語】年惜む
  4. 【春の季語】囀る
  5. 【夏の季語】空蟬/蟬の殻 蟬の抜殻
  6. 【夏の季語】海の家
  7. 【新年の季語】初日記
  8. 【冬の季語】時雨

おすすめ記事

  1. 【クラファン目標達成記念!】神保町に銀漢亭があったころリターンズ【20】/片山辰巳
  2. 後輩の女おでんに泣きじゃくる 加藤又三郎【季語=おでん(冬)】
  3. 【冬の季語】兎狩
  4. 草餅や不参遅参に会つぶれ 富永眉月【季語=草餅(春)】
  5. 夏潮のコバルト裂きて快速艇 牛田修嗣【季語=夏潮(夏)】
  6. 【夏の季語】夜の秋
  7. 冬蟹に尿ればどつと裏返る 只野柯舟【季語=冬蟹(冬)】
  8. 昼顔もパンタグラフも閉ぢにけり 伊藤麻美【季語=昼顔(夏)】
  9. 【冬の季語】数え日
  10. 春の夜のエプロンをとるしぐさ哉 小沢昭一【季語=春の夜(春)】

Pickup記事

  1. 春風にこぼれて赤し歯磨粉 正岡子規【季語=春風(春)】
  2. 「野崎海芋のたべる歳時記」わが家のクスクス
  3. つきの光に花梨が青く垂れてゐる。ずるいなあ先に時が満ちてて 岡井隆
  4. 【連載】もしあの俳人が歌人だったら Session#8
  5. 【#21】中国大連の猫
  6. 【春の季語】鳥の恋
  7. 神保町に銀漢亭があったころ【第79回】佐怒賀直美
  8. 馬鈴薯の一生分が土の上 西村麒麟【季語=馬鈴薯(秋)】
  9. 【春の季語】葱坊主
  10. 【冬の季語】冬河原(冬川原)
PAGE TOP