
花びらの流るる坂の名を知らず
ふけとしこ
4月も中頃であるれけど、まだまだ未練がましく、残る桜を楽しんでいる。
挙句は「句集 インコに肩を」ふけとしこ(本阿弥書店・2009年刊)より。
俳句で花と言えば桜、桜といえばソメイヨシノ。
ソメイヨシノは世の中にたくさん植えられているから、私はそう思ってしまう。
坂の名前を知らないのは、はじめて来た場所だからだろうか、それとも、よく知っているけれど、何か理由があって知らないことにしたいのだろうか。
私なんかだったら浅はかだから、坂の名前なんて知らないままに、この街に暮らしてしまっているのかもしれない。
ふけとしこさんの俳句を読むと、季節のものごとが今まさにここにあるように思えて、ほがらかな気持ちになる。
鬱かしら茉莉花の香に襲われて ふけとしこ
生きていると、ほがらかなことばかりではない。ふっと気を抜くと、あれっ私、いなくなりたいのかな、と思いそうになる。
「襲われて」とあるから、茉莉花が鬱の存在をほのめかしているのだろうか。
そうだとしたらおそろしい。
おそろしい。植物は美しい側面ばかりではない。
ご縁があって、ふけとしこさんの句会で学んでいたことがある。
句会に行くと箱が置いてあることがあって、その箱には、その季節に実るいろいろな植物をふけさんや、句会に来られる方々が入れてくれていた。その植物などが兼題ということでもなくて、珍しいものをいろいろ見せていただいた。
吟行会の話もその句会に来られている方に聞くことがあった。私も行ってみたかったが、ほどなくして、世の中がコロナウイルスを恐れなくてはいけないようになり、みんなで集う吟行ができなくなってしまった。
私はこの句会での吟行に参加することはできなかったけれど、私は句会に置かれるこの箱が小さな吟行のようで、とても楽しみだった。
ふけさんのようにはいかないだろうけど、私も季節のさまざまを、身近に親しく、俳句に作れたらいいな、と思っている。
(内橋可奈子)
【執筆者プロフィール】
内橋 可奈子(うちはし・かなこ)
1983年生まれ。兵庫県在住。「伊丹市俳句協会」会員。「窓の会」常連。