黒々と腹這い避妊具と遊ぶ 平田修

黒々と腹這い避妊具と遊ぶ
平田修
(「明日出よう」(『回覧誌』4号、1986年))

先日ダーツバーに行った際、くじ引きを行っていた。指定のドリンクを頼めばタンブラーやシールといった景品が当たるというものだったので、せっかくならと思い1回挑戦してみたところ、僕が引き当てたのはC賞。その景品はオリジナルパッケージのコンドームであった。なんて下世話な店なんだ……と思った一方で、望まない妊娠や性感染症を防ぐことができるれっきとした医療機器であるコンドームを下品なアイテムだと断じてしまったことにハッとさせられた。ダーツバーは飲酒の場であり、複数人の飲み会の場にそのようなアイテムが現れれば「下ネタ」的な消費をされることを想定してそのような景品を設定した店の品性が疑うべきものであるのは間違いのだが、こちら側の態度としてコンドームというものを単なるジョークグッズとして消費しつづけるのもまた違うような気がしたのである。

掲句は自室での暇つぶしだろうか。うつ伏せでゴロゴロしながら、コンドームを開けて伸ばしたり水を入れたりして遊んでいるような景を想像した。コンドームというのは基本的に薬局やコンビニで買うものだが、特にホモソーシャルな集団では冗談として友人から渡されたりすることもある。機会は多くないかもしれないが、先のダーツバーのようにくじ引きの景品やイベントの参加賞で受け取ることもある。しかしコンドームというのは貰って困るものでもないが、使う予定がないときに貰ってもどうしようもないものである。Youtubeなどではその伸縮性や密封性から水を入れて遊んだりする動画も散見されるから、相当ヒマであればそういう遊びを家で試してみることもあるだろう(もっとも、掲句の発表当時にYoutubeは存在しないが)。

自室でひとりコンドームを伸び縮みさせるのは単なる手遊びであるわけだが、コンドームというアイテムはその性質上どうしてもそれを使用する場面を幻視させる。そしてそれは同時に、それを一緒に使用する「相手」の存在を立ち上げるということでもある。それは特定に人物であったり架空の人物かもしれないが、つまりこれは単なる一人遊びとは決定的に異なり、常に相手となる他者の不在とともに行われる遊戯なのである。孤独にも種類があるが、平田は誰よりも他者のことを思いながら孤独を全うした人であったとつくづく思う。

細村星一郎


【執筆者プロフィール】
細村星一郎(ほそむら・せいいちろう)
2000年生。第16回鬼貫青春俳句大賞。Webサイト「巨大」管理人。



【細村星一郎のバックナンバー】
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