【新年の季語(1月)】繭玉
日本の一部地域で「正月」とくに「小正月」に、ミズキ、柳、榎などの細い木の枝に小さく切った餅や団子をさして飾る「餅花」のうち、「繭玉」のかたちにしたもの。東日本に多い。一年の五穀豊穣を祈願する予祝の意味をもつとされる。「左義長」の行事で飾ったり、食べたりすることもある。
【繭玉(上五)】
繭玉に寝がての腕あげにけり 芝不器男
繭玉や夕はやけれど灯しけり 高野素十
繭玉のよく揺るるものを見てゐたり 波多野爽波
繭玉や父を忘れし母の顔 岸田稚魚
繭玉の影濃く淡く壁にあり 高浜年尾
繭玉にふれて親しき眉の端 石寒太
繭玉が揺れ浅草の揺るるかな 福井隆子
繭玉のみな楽しげに回りつつ 長谷川櫂
繭玉の紅が重しと枝垂れけり 片山由美子
まゆ玉の影やはらかく縺れたる 黛まどか
繭玉を振つて愛想を尽かしけり 仙田洋子
繭玉に夜のマネキン人形が 鴇田智哉
【繭玉(中七)】
山深く繭玉となす餅搗けり 大石悦子
【繭玉(下五)】
時計いま十二時うてり繭玉に 久保田万太郎