セクト・ポクリットでは2021年1月より、「コンゲツノハイク」をはじめました。前月に刊行された俳句結社誌・同人誌の最新号から「(最大)7句」を推薦いただき、掲出するコーナーです。今月は、27結社にご参加いただきました!ありがとうございます。来月分(4月30日締切)については、こちらのフォームからご投稿ください。参加は無料です。
コンゲツノハイク 2021年4月
(2021年3月刊行分)
今月の参加結社(27)=「秋」「秋草」「海」「海原」「火星」「かつらぎ」「銀漢」「櫟」「香雨」「澤」「秋麗」「青山」「鷹」「たかんな」「滝」「橘」「田」「天穹」「童子」「濃美」「鳰の子」「松の花」「百鳥」「南風」「街」「雪華」「若竹」
「秋」(主宰=佐怒賀正美)【1961年創刊・東京都練馬区】
掃き鎮め枯野に還す墓仕舞 長沼ひろ志
若冲に勝る大根ふろふきに 青柳飛
ビッグデータ枯葉降る夜の人の影 阿部まりあ
天界の淵へ渦巻く黄葉かな 百田登起枝
広告をスキップさせてマスカット 森山夕香
望の夜や女優の顔で娘の帰る 中川枕流
鴉は横跳び子は一心に黄葉踏む 中川瑠璃子
「秋草」(主宰=山口昭男)【2010年創刊・兵庫県神戸市】
麦を踏む我に発心ありにけり 山口昭男
春寒し埃舞ひたる映写窓 西山みほ
一団のおもひおもひに寒雀 小山尚子
曲がりたるところで傾ぐ畦火かな 三輪小春
エプロンの母を混ぜたる歌留多かな 西江友里
家ぢゆうの匂ひふくらむ二日かな 村上瑠璃甫
消灯の後に冷たき風の来る 小泉和貴子
「海」(主宰=高橋悦男)【1983年創刊・東京都世田谷区】
初矢二の矢外れ始まる弓始 高橋悦男
元日の息吸つて吐き声となる 日下野由季
パワーショベル頭を下げて松飾る 小松和子
潮風を力にひらく野水仙 木下功
父を恋ふ母の弱気や福寿草 島田敦子
七草粥朱塗りの椀に香り立つ 新名篤子
初神籤眼鏡を拭きて読み返す 江川久子
「海原」(代表=安西篤)【2018年創刊・千葉県市川市】
立冬の月を取り込む換気かな 石川青狼
みぞおちの苦いくらがり鳥渡る 伊藤淳子
無口で淋しきスイッチのあり鰯雲 藤野武
里芋のぬめりのように母と娘は 根本奈穂子
文庫本ほどのジェラシー秋桜 梁瀬道子
押印の不要に押印文化の日 後藤雅文
人参抜くもれなく嘘がついてくる かさいもとこ
「火星」(主宰=山尾玉藻)【1936年創刊・大阪府大阪市】
観音へ胡葱の畝ひた伸ぶる 山尾玉藻
湯の柚子の到来物でふんだんで 深澤鱶
大揺れの嵐電で行く札納 大山文子
重なつて肝の据はらぬ寒海鼠 松山直美
冬田面引きずつてゆく近江線 湯谷良
恵方よりぽんぽん船の来たりけり 山田美恵子
初稽古松葉杖の子囲みたる 藤田素子
「かつらぎ」(主宰=森田純一郎)【1929年創刊・兵庫県宝塚市】
鱏の顔まじまじと見る小春かな 森田純一郎
牡丹焚くほのほ小さく育てつつ 平田冬か
流配碑にけふの冬空青過ぎる 村手圭子
露地裏に見失ひたる後の月 堀真一路
新涼や書店は心地よき迷路 田島かよ
突然に空白となる日記果つ 野村親信
ゴーギャンにゴッホに会はむ文化の日 伊藤美貴子
「銀漢」(主宰=伊藤伊那男)【2011年創刊・東京都千代田区】
冬館かつて軍靴が戛戛と 伊藤伊那男
ひとつづつ春呼ぶ色を金平糖 小泉良子
故郷の山河ありあり初電話 半田けい子
とげぬき地蔵へ婆容赦なき寒の水 多田美記
寒ゆるむ手櫛のとほり良きことも 岡城ひとみ
仕事始まだ温まらぬビルの芯 多田悦子
雪を卸し雪に埋るる住処かな 中山桐里
「櫟」(主宰=江崎紀和子)【1993年創刊・愛媛県東温市】
石ころのすべてに力寒波くる 江崎紀和子
尖つて生くる信条冬の鵙 中川令
本音語れば本音返りぬ蕪汁 田邨雅美
星空や京の底冷底知らず 室 達朗
ほろ酔ひや冬三日月を連れ帰り 戸田一雄
瓶底の蜂蜜ぐづり始め冬 藤本ちどり
マネキンの顔の省略うすら寒 岡野晃子
「香雨」(主宰=片山由美子)【2019年創刊・東京都世田谷区】
蟬氷はばたきもせず消えゆきぬ 西宮舞
封蠟のくれなゐ花と十二月 矢野みはる
着ぶくれて恋といふ字を書き損じ 吉川智子
スキーヤー星座の角を曲がりくる 岡田憲幸
息白く三島由紀夫を論じ合ふ 三栖隆介
初雪や絵本のやうにドア開き 馬場公江
寄り来たる綿虫に目のありやなし 渡邊公之
「澤」(主宰=小澤實)【2000年創刊・東京都杉並区】
曇天の島のひともと桜かな 小澤 實
砕きたる氷こほるやまた砕く 山口方眼子
鮭打棒右手に三回素振りして 結城あき
納豆の泡噴く飯に載せしのちも 柳元佑太
炬燵ごと這ひてリモコン取らむとす 戸田典々
買うて来しものみな除菌蜜柑のビニールも 喜心
冬帝がゐる押し入れを開けたれば 小田まり
「秋麗」(主宰=藤田直子)【2009年創刊・神奈川県川崎市】
うぐひすや燻して守る藁の家 藤田直子
天も地も白鳥のものこゑ満ちて 田中康雄
もう付喪神かもしれぬ屏風かな 黒澤麻生子
指先の薄くなりしや母の足袋 岡根谷良臣
冬帽子召せば何処ぞの神に似て 小野安希子
白鳥の生涯白を裏切らず 藤井南帆
門柱に残る猫の餌寒波くる 堀米義嗣
「青山」(主宰=しなだしん)【1982年創刊・神奈川県横浜市】
春光や大屋根に置く石の数 しなだしん
降りやすき夜露や苔と鞍馬石 井越芳子
鷹漁る海に矢のごと突つ込んで 梅崎はつを
点描のごとくに展けみかん山 ローバック恵子
走り根の形のままに落葉嵩 合田睦子
鴨泳ぐ水脈に焼岳従へて 坪井聖子
満月を転がしてゐる早瀬かな 南井俊輔
「鷹」(主宰=小川軽舟)【1961年創刊・東京都千代田区】
パイプオルガン両翼ひろぐ雪の朝 小川軽舟
地獄絵の叫喚かすれ冬の暮 竹岡一郎
光の粒たゆたふ海の二日かな 喜納とし子
眩しさに目玉引つ込む深雪晴 椎名果歩
買初や本屋帽子屋古本屋 有田曳白
冬帝のマントは火色夜が来る 村井ひろみ
爪切を取りに戻りぬ日向ぼこ 加賀東鷭
「たかんな」(主宰=吉田千嘉子)【1993年創刊・青森県八戸市】
貼り終へて障子に正座して対す 平井千代子
白い息どつと吐き出す迷子かな 岩津必枝
看病のおもひの籠る古暦 河角京子
重ね着の中の一枚母の物 庄司紀野
雪被るリュックを肩に熊談議 大内鉄幹
くろがねの色沈めをる冬の鯉 川村久代
詩片かと初雪のひとつふたつを 髙村龍彦
「滝」(主宰=成田一子)【1992年創刊・宮城県仙台市】
立春の花舗に背広の大男 成田一子
海苔炙る指先は北斎の波 石母田星人
掻く雪に砂やはやぶさ又も発つ 佐々木博子
柚子は黄に嬰は目覚めて離乳食 鈴木幸子
寒月や地に粛粛と殺処分 中井由美子
夕映の波ふくらみ来レノンの忌 池添怜子
黎明の震災遺構寒に入る 佐々木經義
「橘」(主宰=佐怒賀直美)【1978年創刊・埼玉県久喜市】
寒夕焼竹の穂先の焦ぐるまで 石田京
家計簿を開く七日の夜なりけり 尾野恵美
埋火を掻き出す今朝のたかぶりに 枝松久子
塩の道牛も囲炉裏の暖もらふ 若林朝子
小春日や怒濤のごとく夫逝ける 鵜川ミドリ
公園のどのベンチにも初御空 小森光夫
大き羽打ちて夜明けの寒鴉 風祭麻里
「田」(主宰=水田光雄)【2003年創刊・千葉県市川市】
落葉せきたて園丁の送風機 細川朱雀
順列よき懸大根の白眩し 井上圭子
クリスマスリースに真向き宅配人 平野山斗士
スケートの一日を遊ぶ子に翼 間 恵子
柚子ひとつ足せば溢るる冬至の湯 笠原小百合
イマジンで終るラジオや冬銀河 上野犀行
鉄棒の端まで冬日ゆきわたり ヒロ杉山
「天穹」(主宰=屋内修一)【1998年創刊・東京都渋谷区】
吹初は御霊へ捧ぐ「花は咲く」 渡辺花穂
転げては起き獅子舞の後ろ足 上山本一興
老いの手に薔薇の香りの皹薬 立道すみ女
凍滝や留めし時の浸み出づる 塚本一夫
頼らるることも生き甲斐実万両 石川洋子
寒卵食んで妊婦の産み力 松本早苗
句を記すお薬手帳春近し 髙野紀子
「童子」(主宰=辻桃子)【1987年創刊・東京都国立市】
本願寺西も東も煤掃いて 夏秋明子
北塞ぎ簟笥三十年そこに たなか迪子
炬燵には頼母子講の女房衆 田中たみ
湯豆腐やふるさと捨てたわけじやなく 唐木トム
大丈夫死んじやゐねえと煤払ふ 松下恵友
綿虫やふはふは生きて喜寿迎へ 草野小象
蝦蛄仙人掌思はぬ金が入りたる 斎藤月子
「南風」(主宰=村上鞆彦)【1933年創刊・東京都葛飾区】
その色に罹災の記憶夕焚火 帯谷麗加
湯湯婆のあばらに遊ぶ寡婦の足 中島昭子
我が蒔きし一菜も加へ七草粥 内田波子
初日さす母の帽子とちちの杖 藤本くに子
脈透けて雪ペリカンの喉袋 若林哲哉
片雲のごと喪の家に賀状くる 桑原規之
ヒトラーユーゲント水仙群れ立ちて 山本こうし
「鳰の子」(主宰=柴田多鶴子)【2011年創刊・大阪府高槻市】
大き鳥飛びゆく方を恵方とす 柴田多鶴子
地の塩となりたる医師や冬の虹 新谷壯夫
風呂敷の紫匂ふ賀客かな 師岡洋子
風花に追はれて上る五条坂 春名勲
日の光風のなごみや春立てり 岩出くに男
辻褄の合はぬ話に咳一つ 岩崎可代子
ポインセチア溢るる愛に疲れけり 本土彰
「濃美」(主宰=渡辺純枝)【2009年創刊・岐阜県岐阜市】
雀の仔六文銭の鬼瓦 渡辺純枝
かの役者通る頃なる近松忌 小峠靜水
いくつもの正月がありまたひとつ 山田豊志
枯れもまた装ひの色水こだま 高田雅章
干蒲団膨らみに満ちたりてゐし 伊佐治克子
廻らねば立てぬ立てぬと独楽の脚 樫田きさ代
そぞろ寒古道具屋の仏の手 植村紀美子
「松の花」(主宰=松尾隆信)【1998年創刊・神奈川県平塚市】
われ出でて右往左往の柚子湯の柚 松尾隆信
去年今年命毛長き熊野筆 渡辺絹江
古稀過ぎを踏み遊びたる霜柱 三谷二三子
競り人は蕪を土鈴のごと振れり 荒井寿一
億年の後の地球の海鼠食ぶ 福嶋慈代
サーカスの跡地に霜の降る夜かな 十亀健一
三歳はなかなか頑固冬木の芽 瀧谷弥可
「百鳥」(主宰=大串章)【1994年創刊・千葉県鎌ケ谷市】
鷹の影見上げ始祖鳥思ひけり 大串章
後れゆく安けさ我も落葉道 松内佳子
贋作ときまりし壺や寒の入り 宮沢美和子
さらに続く探査機の旅大根煮る 徳永真弓
雪吊りを美しき檻とも思ひけり 不破秀介
白鳥の餌を欲るこゑの昂れり 酒井康正
ふるさとは大海の果て雪便り 長谷川久美子
「街」(主宰=今井聖)【1996年創刊・神奈川県横浜市】
春宵の五色五片のチーズかな 今井聖
冷やかに私どもとしましては 井上郁代
暖房の効いて目ぼしき土産なし 太田うさぎ
昇給と転勤告げて焚火消す 黒岩徳将
太陽の黒点冬の野菜たち 竹内宗一郎
馬一頭放ちて冬のテラリウム 藤井祐喜
日向ぼこ敵に囲まれたるやうに 西澤みず季
「雪華」(主宰=橋本喜夫)【1978年創刊・北海道旭川市】
なやらひや星芒へ扉押し広げ 三国眞澄
狼月といふ一月の月仰ぐ 野村多美子
北斎の大波に似て地吹雪ける 小山内美智子
氷河期の訃音ダイヤモンドダスト 藤原ハルミ
合鍵は汝を絡めとる朧月 三品吏記
手首から滴る伊予柑も明日も 福井たんぽぽ
冬銀河地上は闇になりきれず 小山八重子
「若竹」(主宰=加古宗也)【1928年創刊・愛知県西尾市】
比良越の風に吹き寄る鳰 阿知波裕子
冬木の芽逃げてるだけのドッヂボール 竹原多枝子
ふる里は薩摩の端つこ賀状来る 松元貞子
涸滝や猿投の山に皇子の墓 堀田朋子
除夜の鐘内なる闇を打ち放つ 藤原博惠
みかん色の冬の日中の寝覚めかな 中野こと葉
遅れゐる時計をなほす寒夜かな 高橋冬竹
【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2021年4月30日
*対象は原則として2021年4月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2021年5月5日
◆投稿先
以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/
【「コンゲツノハイク」のバックナンバー】
>>2021年3月の「コンゲツノハイク」(2021年2月刊行分)【29結社参加】
>>2021年2月の「コンゲツノハイク」(2021年1月刊行分)【21結社参加】
>>2021年1月の「コンゲツノハイク」(2020年12月刊行分)【14結社参加】
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