季語・歳時記

【春の季語】梅

【春の季語=初春(2月)】梅

まだ雪が残っていることもある「二月」、明るい「」の始まりを象徴するのが梅の花。

おおまかにいって、赤い「紅梅」と白い「白梅」がある。「立春」より先に咲いた梅については、「早梅」や「梅早し」などという冬の季語がある。「蠟梅」も冬の季語。「梅擬」がまったく別の植物であり晩秋の季語である。

中国から輸入された植物であることもあり、紅白に美しく咲いて馥郁と香る梅は古来、和歌において愛唱されてきた。『万葉集』での梅の和歌は、最も多い「」に次ぐ歌数で、100首を超える。遣唐使の影響で当時の貴族は庭に梅を植えて「花見」を楽しんだ。〈平成〉のあとに選ばれた〈令和〉の年号もまた、梅の歌にちなむ。

東風吹かばにほひをこせよ梅の花主なしとて春な忘れそ(拾遺和歌集 雑春 1006番)

は、平安時代の学者であり政治家であった菅原道真(845年-903年)による作として有名。文楽や歌舞伎の人気演目のひとつである『菅原伝授手習鑑』のなかでも詠われている。「東風」も春の季語である。

和名ウメの語源には、中国語の梅(マイ、ムイ、メイ)が日本的な発音でウメとなったというものや、渡来当時はmme(ンメ)のように発音していたが、これが「ムメ」のように表記され、さらに mumeとなりume (ウメ)へと転訛したというものなど、諸説ある。


【梅(上五)】
梅が香や封切をまたす小盃 井上井月
梅が香や木魚しづかに竹の奥 永井荷風
梅咲きぬ温泉は爪の伸び易き 梶井基次郎
梅ほつほつ人ごゑ遠きところより 深川正一郎
梅寂し人を笑はせをるときも 横山白虹
梅咲いて庭中に青鮫が来ている 金子兜太
梅ひらく畳にしずかなる疲れ 渋川京子
梅咲いて湖を香らす若狭かな 遠藤若狭男
梅の花ごみ収集車の中はごみ 山下彩乃

【梅(中七)】
近道の梅案内や畦づたひ 山本京童
来よ来よと梅の月ヶ瀬より電話 田畑美穂女

【梅(下五)】
日曜に遊びにござれ梅の花 芥川龍之介
ますらをの首途送るか梅の花 穴沢利夫
母の死や枝の先まで梅の花 永田耕衣
足に火がついてもさむし梅の花 阿部青鞋
あかさたなはまやらわをん梅ひらく 西原天気
花の向き迷ひなかりし梅白し 金原知典
工具箱にどかと腰掛け梅見上げ 小川春休

【ほかの季語と】
来て見れば来てよかりしよ梅椿 星野立子
梅にうぐひす骨格に肉まつはるよ 岡田一実


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