
遠足のひとりは誰も知らない子
小田島渚
昨年11月に発行した私の句集を記念し、先日、出版祝賀会を開催しました。初句集でパーティーとは何ごと! という感じですが、私の句友には何人かの異様なお祭り好きがいて、句集出版となれば祝賀会でしょ! と期待する声が大きく、開かざるを得なかった……という実情はありながらも、開催してみたら、序文を寄せて下さった星野高士先生をはじめ、尊敬する俳人、句会を共に楽しむ仲間、古くからの友人や家族が勢ぞろいし、しゃべったり、歌ったり、踊ったり。大盛り上がりでした。さらに、二次会(俳句相撲あり)、三次会(カラオケ)、有志は四次会(中華料理店で紹興酒雨飲んでたなぁ……)へ。人生で最も幸せな一日となりました。
たった15年前には列席者のほとんどの方とは出会っていなかったのに、約100名の方がお祝いに駆けつけて下さったと思うと、俳句が紡いだご縁は不思議です。脅威です。こんなに愉快な人たちに会わせてくれた俳句には、改めて感謝しかありません。
この祝賀会、私が選んだ内幸町のプレスセンタービルのレストランで開催したのですが、当日、同フロアの日本記者クラブで開催されていたのが、「第43回兜太現代俳句新人賞」の選考会。ほぼ同じ空間で重要な俳句賞の受賞者が選ばれていた偶然に驚きました。
掲句は「羽化の街」(現代俳句協会発行・2022年刊)より。作者の小田島渚さんは5年前の第39回兜太現代俳句新人賞の受賞者。私にとっては銀漢俳句会の大倉句会の仲間です。渚さんは、独自の幻想的な世界感と社会をまっすぐ見据える視点を併せ持ち、それらを詩情ある十七音に表すことができる稀有な俳人。大倉句会の選句用紙を見たときに、一目でこれは渚さんの句だ! と解ることもありますが、チャレンジングな句や比較的伝統な造りの句もあって、毎回彼女の句と選は特別気になってしまいます。
遠足のトップシーズンである5月に、遠足のメッカである高尾山に行ったことがあります。数十の小学校が山頂近くで、ランチの時間。一面子どもだらけ! そこで感心したのは、各校ごとに「赤い帽子」や「オレンジのバンダナ」、「青のネッカチーフ」などわかりやすいアイコンを身に付けていたこと。そこまでしないと、同級生はもちろん引率の先生だって混乱すること間違いなしです。気が付いたら帰りのバスに他校の子どもが乗っていたりして。5月と言えば、まだクラスに馴染みきれていない転校生もいるはずで、その子は、遠足の道中、必死に担任の先生や顔を覚えたクラスメイトから目を離さずに過ごすのだろうな……と思いました。
渚さんの句の〈誰も知らない子〉はリアルに上記のような混乱の中で、他校、他クラスに紛れ込んでしまった子かもしれませんが、高尾山なら天狗の子が入り込んでいるのかもしれません。みんな笑顔で無邪気に楽しんでいる遠足ならではの平和な景として、虚実の境無く鑑賞しました。
(白井飛露)

【執筆者プロフィール】
白井飛露(しらい・ひろ) (本名・聡子)
1977年、千葉県野田市生まれ。流山市在住。2010年「かぞの会」参加、2012年「大倉句会」参加。「玉藻」「銀漢」同人。俳人協会会員。
旅行雑誌の編集プロダクション、ゴルフ雑誌出版社勤務などを経て、(株)ウインダムにて展覧会や美術展のPRに携わる。一般社団法人10000日記念日代表。
2025年11月に初句集『輪郭』(朔出版)上梓。