セクト・ポクリットでは2021年1月より、「コンゲツノハイク」をはじめました。前月に刊行された俳句結社誌・同人誌の最新号から「(最大)7句」を推薦いただき、掲出するコーナーです。今月は、28結社にご参加いただきました!ご参加、ありがとうございます。
このページの句から一句選んで鑑賞する読者参加型コーナー「コンゲツノハイクを読む」は、8月20日締切です。どなたでもご参加いただけますので、詳しくはこちらをご覧ください。
来月分のコンゲツノハイク(8月31日締切)については、こちらのフォームからご投稿ください。
コンゲツノハイク 2021年8月
(2021年7月刊行分)
今月の参加結社(28)=「秋」「秋草」「いには」「炎環」「円虹」「火星」「かつらぎ」「銀化」「銀漢」「雲の峰」「櫟」「澤」「磁石」「秋麗」「鷹」「たかんな」「滝」「田」「天穹」「童子」「ふよう」「南風」「濃美」「松の花」「百鳥」「街」「雪華」「楽園」
「秋」(主宰=佐怒賀正美)【1961年創刊・東京都練馬区】
<2021年7・8月号(通巻596号)>
春風駘蕩音楽堂が膨れてく 青柳 飛
愛(は)しきやし草におぼるる雀の子 阿部まりあ
樹木医と巨木巡りや水温む 原田要三
ヒヤシンス青図の中の宇宙船 藤色葉菜
髪留めはサカナのかたち春の雨 百田登起枝
春光に入りて旋回ブーメラン 安海康代
猪口才な騙し絵のごと蝌蚪群るる 浅井田佳子
「秋草」(主宰=山口昭男)【2010年創刊・兵庫県神戸市】
<2021年8月号(通巻140号)>
堰落つる白き水音半夏生 山口昭男
木耳を喰はぬ男の喉仏 村上瑠璃甫
いつの間に蕗より大き子どもかな 山本祐也
チューリップあつけらかんと笑ひ出す 小山尚子
一本の長き畦道端午来る 松井ゆう子
粽解き死のあとさきを言ひあへり 松本不覚
何も言はずに山蛭を剥しけり 塩崎帆高
「いには」(主宰=村上喜代子)【2005年創刊・千葉県八千代市】
<2021年8月号(通巻155号)>
退くといふ美学ありけり梅青し 村上喜代子
パジャマ抜け殻竜天に登りたる 田中麻衣
風光る二足歩行の覚束無 山﨑照三
ゆりの木の花のいざなふ迎賓館 木嶋純子
夕景に十薬の花紛れざる 後藤善雄
「炎環」(主宰=石寒太)【1989年創刊・埼玉県志木市】
<2021年7月号(通巻493号)>
荒梅雨の底ただよひしあるき神 石寒太
地下街のあをき舟底風信子 Мコスモ
敗けし朝草笛をただ吹き合へり 星野いのり
夏みかん心の左側にきみ 吉田悦花
花は葉に海賊版の地に売られ 齋藤朝比古
跫音のような心音おぼろ月 田島健一
のどけしや宇野宗佑に似たる鯉 岸ゆうこ
「円虹」(主宰=山田佳乃)【1995年創刊・兵庫県神戸市】
<2021年7月号(通巻319号)>
その奥の不意の明るさ山葵沢 辻 桂湖
春愁や独り籠れば声かすれ 髙柳しずか
かたくりや佛師の里の風に咲き 梅垣恭子
翻るものみな綺麗風五月 前田容宏
鮊子の入荷知らせるアナウンス 近藤庸美
空にあと大きく書きて一年生 山下香澄
付いてくるまだ付いてくる熊ん蜂 横道洋子
「火星」(主宰=山尾玉藻)【1936年創刊・大阪府大阪市】
<2021年7月号(通巻978号)>
中空といふふたしかを蚊喰鳥 山尾玉藻
牡丹の切り落とされし余白かな 湯谷良
姿見を運び入れけり春障子 蘭定かず子
チューリップ己が重さに気づき初む 藤田素子
水音のこの星に籾蒔いてあり 松山直美
夕桜魞挿し来たる舟へ降る 山田美惠子
あめんばう水のほころび縫ふやうに 大東由美子
「かつらぎ」(主宰=森田純一郎)【1929年創刊・兵庫県宝塚市】
<2021年7月号(通関1099号)>
少年の心は今も落花浴ぶ 森田純一郎
おもかげは峠先生朴の花 平田冬か
加太に今刈りし若布の長きこと 村手圭子
別火守る障子にうごく僧の影 池田雪彦
妻の待つ入江へ急ぐ蜆舟 小玉えつ女
無器量をわざわざ選りて柚子を画く 中島 葵
エアポケット入るやに雲雀落ち来る 中野勝彦
「銀化」(主宰=中原道夫)【1998年創刊・東京都港区】
<2021年8月号(通巻275号)>
煮る前の繭のかろさをたなごころ 佐藤郁良
男傘借りて帰りぬ桜桃忌 柴田奈美
物の怪の気配に鳴れり軒風鈴 鉄山幸子
白靴を捨ててましぐら老ーい・どん 寺尾亜真李
嬲るとふかたちになりて神輿揉む 坂本晶子
夜光虫の安寧な夜に投石す 金子富也
サイレンが近くで止まる胡瓜揉み 西野徹
「銀漢」(主宰=伊藤伊那男)【2011年創刊・東京都千代田区】
<2021年6月号(通巻126号)>
袋掛して桃の実に富士見せず 伊藤伊那男
川の字のほどけきつたる大朝寝 中島凌雲
柏餅買ふや仏も人数に 長谷川明子
老鶯やこだまの返る石切場 岡城ひとみ
供花として贈るほかなし母の日よ 堀江美州
春の果て姨捨山に置かれたやう 新谷房子
遠足のうぐひす廊下鳴きどほし 瀬戸紀恵
「雲の峰」(主宰=朝妻力)【1989年創刊・2001年結社化・大阪府茨木市】
<2021年7月号(通巻361号)>
梅雨寒しドアを相手の向う傷 朝妻力
走り茶や風樹の嘆といふをふと 酒井多加子
御所はいま車返しの花は葉に 中川晴美
葉桜や橋に名のこす渡し跡 西田洋
松落葉門さし時の風通ふ 吉村征子
安政の今津灯台南吹く うすい明笛
柚の花の香り乗せくる朝戸風 大庭みつゑ
「櫟」(主宰=江崎紀和子)【1993年創刊・愛媛県東温市】
<2021年7月号(通巻334号)>
春愁や働く影を壁に留め 櫛部天思
料亭に活かされてゐる栄螺かな 村上愛子
来し方は問はず語らず花筵 久門ヨシエ
木目より剥がれて蝶の逞しく 末次朗
いくたびも振りかへりつつ入園す 太田美恵子
花の雨五百羅漢の話し声 中村晋
立ち話たけのこひとつ抱きしまま 向井公子
「澤」(主宰=小澤實)【2000年創刊・東京都杉並区】
<2021年7月号(通巻256号)>
コップに焼酎かならずや明日は来る 小澤 實
見送りの赤子たて抱き朝桜 たが啓子
ボトルキャップぷしゆつとひねり五月来る 内堀いっぽ
小鳥の巣しばし揺れたり親発てば 森下秋露
やや冷やし九号酵母生酒ぞ 伊藤善資
車椅子ランナー腕太しよ苜蓿 近藤信男
菜種梅雨検査容器に唾の泡 山下希記
「磁石」(主宰=依田善朗)【2021年1月創刊・埼玉県蓮田市】
<2021年7月号(通巻4号)>
ぬるき湯に母を洗へる弥生かな 依田善朗
磔像に血管の泛くさくらかな 角谷昌子
花過ぎのひんやり垂るる犬の耳 篠崎央子
花冷や救急箱に蝶つがひ 黒澤麻生子
百頭の羊を刈れば春動く 吉住達也
針吞みし魚のただよふ花曇 坂田晃一
記憶より小さき公園陽炎へる 飯田冬眞
「秋麗」(主宰=藤田直子)【2009年創刊・神奈川県川崎市】
<2021年7月号(通巻130号)>
色白の夫でありしよ朴の花 藤田直子
散るためにかくも茂るか桐青葉 井上青軸
厨子なり青梅黄梅匂ふ夜は 大和田いそ子
知覧の新茶帰投ならざる空のあり 朝田悦子
田植果て言祝ぐやうにけもの過ぐ 原真砂子
青嵐ニケは衣を翻し 高原沙羅
山寺に庵主の恋か花ざくろ 松永明美
「鷹俳句会」(主宰=小川軽舟)【1961年創刊・東京都千代田区】
<2021年8月号>
梅雨前線雷鈴生りに北上す 小川軽舟
ががんぼや親なくて切る夜の爪 黒澤あき緒
梅雨寒し舞鶴港も饂飩屋も 志田千惠
古紙として縛る書物や夏に入る 景山而遊
転職か我慢か棒立ちのシャワー 柏倉健介
時間売る生業暗し百合ひらく 藤山直樹
朝富士や鷭の浮巣に一番子 中山智津子
「たかんな」(主宰=吉田千嘉子)【1993年創刊・青森県八戸市】
<2021年7月号(通巻343号)>
あかときの百間河川魞を挿す 難波政子
大甕の水のかげりや蝌蚪群るる 岩津必枝
駅の灯の消えて春月残りけり 下河原 勝
国宝の天守を望み蜆汁 鈴木興治
話すたび変はる馴初め万愚節 野村英利
目鼻立ち春秋に富み入社式 鎌田義正
誕生の仔馬を囲む南部弁 滝沢鷹太郎
「滝」(主宰=成田一子)【1992年創刊・宮城県仙台市】
<2021年7月号(通巻354号)>
冷房の全身エステ湯灌めく 成田一子
螻蛄の夜の父のうはごと銃どこだ 石母田星人
あるだけの明るさの中麦を刈る 阿部風々子
半仙戯夜に乗つたら哀しけれ 芳賀翅子
見ず知らずの我をおそふかしやぼん玉 小林邦子
切凧やのそりひろごるトリチウム 冨成壽一
うつかりと相槌茅花流しかな 鈴木幸子
「田」(主宰=水田光雄)【2003年創刊・千葉県市川市】
<2021年8月号 通巻221号>
寄書きの文字に羽生え卒業す 細川朱雀
鯉の押す水ぬめぬめと梅雨入かな 西川知世
白き杖雀隠れに触れゆける 間 恵子
海胆割れて秘色の水をこぼしけり 佐藤千恵子
春の蠅とまる土星の輪のあたり 草子洗
つつかれて今日の始まる薄氷 村上清美
便箋に砂漠の匂ひ五月来る フォーサー涼夏
「天穹」(主宰=屋内修一)【1998年創刊・東京都渋谷区】
<2021年8月号(通巻282号)>
金管楽器に囲まれてゐる新樹かな 野間しげる
一尺を五歩の練り足祭足袋 籠田幸鳴
終ひ風呂てふも独りよ青葉木菟 加納千女
何もかもケチャップの味子供の日 田中国太郎
夏蝶や岩に張り付くクライマー 藤原基子
湯船の栓抜けば春愁吸ひ込まれ 尾中 恵
装束のごとくマスクし疫の夏 巾村和敏
「童子」(主宰=辻桃子)【1987年創刊・東京都国立市】
<2021年7月号(通巻407号)>
卯月野や額するどく沈壽官 辻 桃子
「寄つてけし」とてお彼岸の茶店婆 安部元気
祖母が家の香りしたるや花の袖 如月真菜
レガッタが(株)大久保の前過ぎぬ 佐藤明彦
明易を八の字寄せし寝顔にて 石井みや
雄の水鶏(くひな)か巣を離れすぐ戻る 浜崎素粒子
蟻せはし蝶の翅曳きみみず曳き はらてふ古
「南風」(主宰=村上鞆彦)【1933年創刊・東京都葛飾区】
<2021年8月号(通巻933号)>
そら豆をむく楽しさよ全部むく 上田和子
肉食はねば身体の冷ゆるアマリリス 原隆三郎
梅雨の蝶草のうねりへ沈み落ち 岡辺明代
ぽこぽこと摘果のバケツ薄暑光 桑原規之
それではと筍飯に箸を割る 赤城嘉宣
揺れ止まぬ薔薇の香を抱く家路かな 田上美喜子
金管の束なす音色新樹光 日野久子
「濃美」(主宰=渡辺純枝)【2009年創刊・岐阜県岐阜市】
<2021年8月号(通巻149号)>
夏旺んどれもゆかしき野菜花 渡辺純枝
いつせいにバス降りてくる更衣 山田豊志
渡し場に一の鳥居や燕来る 橋本和子
灯をともす燐寸の匂ひ昭和の日 恒川敬代
ささやかな寄附を納めて春日傘 浅野幸子
縄電車あげ羽に出会ひ急停車 伊神さと子
みどり児の耳の色してさくら貝 近藤はる
「ふよう」(主宰=千々和恵美子)【2005年創刊・福岡県遠賀郡】
<2021年7月号(通巻77号)>
恋螢もつるる迦陵頻伽かな 千々和恵美子
草笛や水平線の白光す 安倍真理子
頰杖をつく癖梅雨のはじまれり 貴田将子
終バスの客の下り来る螢橋 藤井さわこ
涼風や良き隔たりの丸太椅子 森 和子
父の日の太き万年筆洗ふ 垣内かをる
黒揚羽いま木漏れ日の乱反射 明石和夫
「松の花」(主宰=松尾隆信)【1998年創刊・神奈川県平塚市】
<2021年7月号(通巻283号)>
山頂の榎と春を惜しみけり 松尾隆信
花を待つ人亡し花の人を待つ O生
月おぼろ路地へゆつくり喪の車 伊藤真理子
ひゆつと風白藤の香のたちにけり 吉武由紀子
しきりなることの静けさ花吹雪 森脇由美子
また一人逃水追うて帰らざる しかい良通
子どもらの上の桜を雲と思ふ 松尾清隆
「百鳥」(主宰=大串章)【1994年創刊・千葉県鎌ケ谷市】
<2021年7月号(通巻328号)>
青田道一人辿れば旅人めく 大串章
たんぽぽや地平に屋根のぎつしりと 森賀まり
勝鶏の火焔の鶏冠収まらず 平野きらら
啄木忌われ生涯に職一つ 柿澤喜三郎
門出せし孫の机や春の塵 下村一馬
花ミモザ希臘の島を巡る旅 原ヤス子
我もまた花の下にて春死なむ 芹澤真紀子
「街」(主宰=今井聖)【1996年創刊・神奈川県横浜市】
<No. 150>
捕虫網須走口に集結す 今井聖
朧夜の押せば涙の出る体 小久保佳世子
広辞苑ほどの仏壇花辛夷 柴田千晶
どの管か何の管だか春の夢 松野苑子
賀茂祭川に掬ひしもの返す 黒岩徳将
青空に飽きたる泰山木の花 西澤みず季
中指にある遠足の時の傷 藤井祐喜
「雪華」(主宰=橋本喜夫)【1978年創刊・北海道旭川市】
<2021年8月号>
銀砂を積むか一艘の夏の月 土井探花
叛逆か隷属か蟻迷走す 髙橋亜紀彦
西日射す時計バンドの余り穴 成海誠二
蟇鳴けば高野聖に獣出づ Fよしと
軍港の方へと逸れて白日傘 星出航太郎
腎臓の眠るかたちの甜瓜 福井たんぽぽ
バニラアイスをいびりつつ待つてゐる 田島ハル
「楽園」(主宰=堀田季何)【2021年創刊】
<第1巻第2号(通巻2号)>
花筏とぎれ水面の深呼吸 玉木たまね
跣ゆゑゲンもアベベも記憶せる 小田狂声
わたくしのかわいいが小鳥を囓る さ青
鯵の鰓火輪のごとしちぎり取る 香野
戦メリでめちゃ泣く友の家で吐く 橋本牧人
刮ぐなり月の軽石で記憶ごと 半片
「妊娠した?」「してないよママ」夏が来た 小山桜子
【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2021年8月31日
*対象は原則として2021年8月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2021年9月5日
◆投稿先
以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/
【「コンゲツノハイク」のバックナンバー】
>>2021年7月の「コンゲツノハイク」(2021年6月刊行分)【32結社参加】
→→→ 2021年7月の「コンゲツノハイク」を読む
>>2021年6月の「コンゲツノハイク」(2021年5月刊行分)【33結社参加】
>>2021年5月の「コンゲツノハイク」(2021年4月刊行分)【34結社参加】
>>2021年4月の「コンゲツノハイク」(2021年3月刊行分)【27結社参加】
>>2021年3月の「コンゲツノハイク」(2021年2月刊行分)【29結社参加】
>>2021年2月の「コンゲツノハイク」(2021年1月刊行分)【21結社参加】
>>2021年1月の「コンゲツノハイク」(2020年12月刊行分)【14結社参加】
【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】