参道に若葉のしづく降り止まず 今井肖子【季語=若葉(夏)】

参道に若葉のしづく降り止まず
今井肖子

下五の「降り止まず」まで読みきった後、雨の中の景と仮定するか、雨上がりの景と仮定するか、鑑賞に迷いました。

そして、上五まで戻って読み直し、再び「若葉のしづく」という言葉を読んだ瞬間、それは、ただの雨ではなくなりました。

空から降った雨が若葉に受け止められ、葉先に集まり、「しづく」へと姿を変える。
その過程が、「若葉のしづく」という言葉から伝わってきます。
そこには、若葉と雨との関係に生まれた、新しい存在を見る思いがしました。

若葉は雨をそのまま通しません。
自らの色、香り、明るさなどの気配をまとわせることで、雨が「若葉のもの」へと変わってゆくように思われます。

若葉を通って生まれたその「しづく」が「降り止まず」なのであれば、今もなお降り続ける雨が、新しい「若葉のしづく」を、次々に生み続けていると読みたくなりました。

さらに、その「しづく」が降り止まない場所が「参道」であることも印象深いです。

参道は、単なる道ではなく、神仏へ向かう厳かな道です。
そこに絶え間なく降る「若葉のしづく」は、まるで自然の手による祓いのようにも感じられます。

雨が若葉を通ることで柔らかく変化し、参道を静かに清め続けているようでもあり、参道を行く人の心を鎮めているようでもあります。

そして、読者の私もまた、若葉の匂い、湿り気、「若葉のしづく」の音に満ちた参道の中に立たされます。

そこで降り続けているものは、空からの雨でありながら、若葉を通ることで参道を静かに満たす「若葉のしづく」となったのだと思いました。

『ホトトギス』令和八年六月号 所収

菅谷糸


【執筆者プロフィール】
菅谷 糸(すがや・いと)
1977年生まれ。東京都在住。「ホトトギス」所属。日本伝統俳句協会会員。




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