【連載】
趣味と写真と、ときどき俳句と【#19】
子猫たちのいる場所
青木亮人(愛媛大学准教授)
同じ地域を散歩していると色々な変化に気づくことがある。道路脇の木がいつの間にか伐採されたり、あるいは老夫婦が過ごす一軒家が空き家になった後、やがて家を潰す工事が始まり、跡地が駐車場になっていたりする。
散歩の途中で立ち寄る公園では春や秋にどこからともなく子猫が現れ、元気な姿を見せることがあった。
下の写真は五月の初夏だったと思う。昼下がりに二匹の子猫が眠気に勝てず、落ちかかっているところだ。この後、白猫は黒猫を落としてしまい、落ちた子猫はビックリしていた。
その子猫たちは全部で四匹ほど見かけたが、いつしか姿を見なくなった。少し心配になり、何度も公園に立ち寄ってみたのだが、梅雨が明けて夏になっても姿は見えなかった。
一度、子猫たちが母猫にじゃれついているのを見かけたことがある。小さな白猫と黒猫が母猫に飛びかかったり、周囲をグルグル回っては母猫の尻尾に噛みついたりした後、お腹を探って乳を吸い出した。
下の写真はその時に撮ったもので、母猫が少し潤んだ眼でこちらを見上げていたのを覚えている。私はシャッターを切った後、猫たちの邪魔にならないように静かに離れ、公園を出て散歩を続けた。
あの小さな白猫や黒猫たちは元気だろうか、と時々思い出すことがある。
その子猫たちのいる場所はできれば暖かい場所であってほしいと思う。そこに柔らかい陽光が降りそそぎ、じゃれあう仲間たちがいればもう言うことはない。
【次回は12月30日ごろ配信予定です】
【執筆者プロフィール】
青木亮人(あおき・まこと)
昭和49年、北海道生れ。近現代俳句研究、愛媛大学准教授。著書に『近代俳句の諸相』『さくっと近代俳句入門』など。
【「趣味と写真と、ときどき俳句と」バックナンバー】
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