芹と名がつく賑やかな娘が走る 中村梨々【季語=芹(春)】 


と名がつく賑やかな娘が走る)

(中村梨々

去る3月2日に、松江市の「書架 青と緑」(@shoka_books)さんで、念願の「第1回書架句会(仮)」を開催した。松江への赴任が決まった段階より、店主の日下踏子さんに相談をし、「超結社の句会を立ち上げたい」という思いを汲んでいただき、実現に至った。当日も様々な準備をしていただき、スムーズに句会を遂行することができた。大変感謝しております。

今日は、その句会レポートのようなものを書いていきたいと思う。

定員8名というコンパクトな句会である。人数が限られている、だからこその濃密な時間を過ごせたように思う。句会に参加してくれた方では、俳句歴の長い方から、俳句初心者の方まで幅広く参加いただいた。また、場所も松江市のみならず、島根の他の市からや京都などの県外からの参加もあった。

句会自体は、当季雑詠(3月2日なので春の季語)で5句を事前投句いただき、当日選句時間を設け、好きな句を5句選句いただいた。自己披講形式で、高点句から順に講評を行い、点の入った句は全て講評を行った。

掲句は、中村梨々(@riri74N)さんの句。作者は普段、詩をやられている方である。私の句集の出版元であるふらんす堂(@furansudo)さんから「たくさんの窓から手を振る」という詩集を2012年に出されている。今回俳句は初めてとのことだったが、大変素敵な句を出していただけた。詩と俳句にもシナジーがあるのかもしれない。

掲句は、芹のあるような水辺の公園を子どもが走り回っている様子だろうか。その娘は、おそらく「せりな」というような呼ばれ方をしているのだろう。芹の名が付くというところで、もしかしたら「この場所がその娘の名前の由来になってるのかな」などと思った。根拠はないが、なんとなく芹と名が付く女の子は、賑やかそうである。先日の句会で、個人的に最も好きだった句であった。

他の皆さんも素敵な句を出してくれた。
以下に、今回の参加者それぞれの句を紹介する。

<花屋からミモザを抱いて人と人     日下踏子>
<猫の恋トラオはついに帰宅せず      壇>
<真に受けたわけではないが猫の恋    都丸>
<とんとんと名字に朱肉つけて春     熱田俊月>
<雨音を聞くための傘卒業す     山口遼也>
<汽水湖の鳥鳴きやまず雛祭     鈴木総史>

新天地の松江にて立ち上げた超結社句会。
長く続けていけるよう、頑張らないといけないと思った。

鈴木総史


【執筆者プロフィール】
鈴木総史(すずき・そうし)
平成8年(1996)東京都生まれ、27歳。
北海道旭川市在住。3月より島根県松江市へ引越予定。
平成27年(2015)3月、「群青」入会。櫂未知子と佐藤郁良に師事。
令和3年(2021)10月、「雪華」入会。
令和4年(2022)、作品集「微熱」にて、第37回北海道新聞俳句賞を受賞。
令和5年(2023)1月より、「雪華」同人。
令和5年(2023)、連作「雨の予感」にて、第11回星野立子新人賞を受賞。
令和6年(2024)3月に、第一句集『氷湖いま』を上梓予定。
現在、「群青」「雪華」同人。俳人協会会員。


2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓


【2024年2月の火曜日☆鈴木総史のバックナンバー】
>>〔10〕足跡が足跡を踏む雪野かな 鈴木牛後
>>〔11〕父の手に負へぬ夜泣きや夏の月 吉田哲二
>>〔12〕トラックに早春を積み引越しす 柊月子
>>〔13〕故郷のすすしの陰や春の雪 原石鼎

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>>〔1〕雪折を振り返ることしかできず 瀬間陽子
>>〔2〕虎の上に虎乗る春や筥いじり 永田耕衣

【2024年2月の木曜日☆板倉ケンタのバックナンバー】
>>〔1〕寒卵良い学校へゆくために 岩田奎
>>〔2〕泥に降る雪うつくしや泥になる 小川軽舟
>>〔3〕時計屋の時計春の夜どれがほんと 久保田万太郎

【2024年1月の火曜日☆土井探花のバックナンバー】
>>〔5〕初夢のあとアボカドの種まんまる 神野紗希
>>〔6〕許したい許したい真っ青な毛糸 神野紗希
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【2024年1月の木曜日☆浅川芳直のバックナンバー】
>>〔5〕いつよりも長く頭を下げ初詣 八木澤高原
>>〔6〕冬蟹に尿ればどつと裏返る 只野柯舟
>>〔7〕わが腕は翼風花抱き受け 世古諏訪
>>〔8〕室咲きをきりきり締めて届きたり 蓬田紀枝子


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