【春の季語】菜の花

【春の季語=晩春(4月)】菜の花

【ミニ解説】

菜種油の原料となるアブラナの花です。

産地では春になると、一面が黄色の菜の花畑が現れます。

この風景は江戸時代からのもので、「菜の花や月は東に日は西に」(与謝蕪村)、「いちめんのなのはな/いちめんのなのはな/……」(山村暮鳥「純銀もざいく」)など、近代まで語り継がれる名作があります。

室生犀星にも次のような詩があります。

寂しき春

したたり止まぬ日のひかり
うつうつまはる水ぐるま
あをぞらに
越後の山も見ゆるぞ
さびしいぞ
一日いちにちもの言はず
野にいでてあゆめば
菜種のはなは波をつくりて
いまははや
しんにさびしいぞ


【菜の花(上五)】
菜の花や一輪咲きし松のもと 宗因
菜の花や月は東に日は西に 与謝蕪村 
菜の花やはつとあかるき町はつれ 正岡子規
菜の花や唐の詩人は詩にうとき 幸田露伴
菜の花といふ平凡を愛しけり 富安風生
菜の花のどこをくすぐったら光る 村井和一
菜の花月夜ですよネコが死ぬ夜ですよ 金原まさ子 
菜の花の斜面を潜水服のまま 今井聖 
菜の花や河原に足のやはらかき 田中裕明
菜の花やふはりと斧をふりおとす 冬野虹
菜の花や若き夫婦が夜に来る 南十二国
菜の花のとほくに見えてここも雨 今泉礼奈

【菜の花(中七)】
かさね着や菜の花かほる雨あがり 加舎白雄
べたべたに田も菜の花も照りみだる 水原秋櫻子
本を読む菜の花明り本にあり 山口青邨
抱けば君のなかに菜の花灯りけり 河原枇杷男
家々や菜の花色の燈をともし 木下夕爾
馬駆けて菜の花の黄を引伸ばす 澁谷道
わつわつと菜の花ばかり空ばかり 渡部ひとみ
半島のかたちに菜の花明かりかな 大石登世子
新妻として菜の花を茹でこぼす 神野紗希

【菜の花(下五)】
三輪山の裾ひろがりや菜の花に 瀧井孝作
ひと魂とひと繋がれり菜の花よ 後藤貴子

【菜の花(その他)】
菜の花のなか菜の花を摘む男 松本秀一
恋人奪いの旅だ 菜の花 菜の花 海 坪内稔典 



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