
【秋の季語=晩秋(10月)】雁

雁(がん、かり)は、「水鳥」の一種。北海道宮島沼や宮城県伊豆沼などに冬鳥として飛来する。「鴨」よりは大きく「白鳥」よりは小さい一群の総称である。「かりがね」と四音で読むこともある。
古今和歌集の時代から秋の訪れを告げる鳥として和歌に詠まれてきた。枕詞は「遠つ人」。芭蕉の句では、〈病雁の夜寒に落ちて旅寝かな〉が有名である。俳句史でいえば、石田波郷の〈雁やのこるものみな美しき〉もよく知られている。
その年に初めて見る/聞く雁は「初雁」。また、そのころに吹く風のことを「雁渡し」と呼ぶ。
春になって北方に渡っていくことを「雁帰る」という春の季語で表す。
美味らしく、かつては狩猟の対象であったが、1970年以降は個体数の減少から禁猟となっている。
【雁(上五)】
鳴く雁を仰ぐ六才ともなれば 辻田克巳
雁や太陽がゆき月がゆき 長谷川櫂
雁や夭折の顔やさしかり 田中裕明
【雁(中七)】
胸の上に雁行きし空残りけり 石田波郷
街坂に雁見て息をゆたかにす 福永耕二
俯瞰かくもさびしく雁でありにけり 正木ゆう子
【雁(下五)】
亡き兵の妻の名負ふも雁の頃 馬場移公子
母恋ひの若狭は遠し雁の旅 水上勉
別れむと酒ためらはぬ夜の雁 鷲谷七菜子