指さして七夕竹をこはがる子 阿部青鞋【季語=七夕竹(秋)】


指さして七夕竹をこはがる子

阿部青鞋
(『ひとるたま』昭和58年)

今日は7月7日。七夕である。個人的に遠からぬ縁のある七夕についてのお話に、少々お付き合いいただきたい。

僕の筆名「細村星一郎」は、そっくりそのまま本名である。俳句でもビジネスでも印象に残るいい名前をつけてもらったと親には感謝しているが、当初は少し違う名前になる予定だったらしい。

僕は8月頭の生まれなのだが、予定では7月中に生まれるはずであった。そのため、母は七夕に因んで「星」という字を使うことにした。

加えて、母はその父親(=僕の祖父)の兄弟たちの名の法則「〜彦」を踏襲しようとした。結果、僕の名前の第一案は「星彦」となったのである。

そこで待ったをかけたのが父である。七夕に”因む”とは言ったが、いくらなんでも七夕すぎるだろう…と。父の言う通り、「星彦」になっていたら毎年7月7日は細村少年にとってかなり辛いメモリアルとなっていたことだろう。

結果、父の要望である「◯一郎、◯二郎」と折衷した「星一郎」が採用された。画数の検閲もクリアした、堂々たる名前だ。

そんな事情から、僕は毎年この時期になると「星彦」だった世界線の自分のことを思うのである。

指さして七夕竹をこはがる子
阿部青鞋

短冊を掛ける竹や笹は1〜2mの高さがあり、葉を多く湛えて揺れている。幼い子供の目線から見れば、得体の知れない生物に見えたっておかしくない。もっと言えば、「願い事を書いてぶら下げるとそれを叶えてくれる木」って、かなり怖い。

大きな構造物が苦手なパラレルワールドの星彦少年も、きっと同じように怖がっていたことだろう。あるいは、嫌な思い出の象徴としても怖がっていたかもしれない。短冊には、星彦少年がこの七夕という日を笑顔で過ごせますように、とでも書いておこう。

細村星一郎


【執筆者プロフィール】
細村星一郎(ほそむら・せいいちろう)
2000年生。第16回鬼貫青春俳句大賞。Webサイト「巨大」管理人。


【細村星一郎のバックナンバー】
>>〔13〕鵺一羽はばたきおらん裏銀河 安井浩司
>>〔12〕坂道をおりる呪術なんかないさ 下村槐太
>>〔11〕妹に告げきて燃える海泳ぐ 郡山淳一
>>〔10〕すきとおるそこは太鼓をたたいてとおる 阿部完市
>>〔9〕性あらき郡上の鮎を釣り上げて 飴山實
>>〔8〕蛇を知らぬ天才とゐて風の中 鈴木六林男
>>〔7〕白馬の白き睫毛や霧深し 小澤青柚子
>>〔6〕煌々と渇き渚・渚をずりゆく艾 赤尾兜子
>>〔5〕かんぱちも乗せて離島の連絡船 西池みどり
>>〔4〕古池やにとんだ蛙で蜘蛛るTELかな 加藤郁乎
>>〔3〕銀座明るし針の踵で歩かねば 八木三日女
>>〔2〕象の足しづかに上る重たさよ 島津亮
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