ハイクノミカタ

初夢にドームがありぬあとは忘れ 加倉井秋を【季語=初夢(新年)】


初夢にドームがありぬあとは忘れ

加倉井秋を


一富士二鷹三茄子の初夢ならばめでたいが、ドームというのはなんとも味気ない。 だが、それがまたリアルな印象を与える。

ドームという巨大な空洞。夢という無意識的な領域。無意識は、普段は主体的に思える自身の内側にある空洞とも言えよう。丸みを帯びた巨大なドームのシルエットだけが夢の印象として残っている。

(安里琉太)


【執筆者プロフィール】
安里琉太(あさと・りゅうた)
1994年沖縄県生まれ。「銀化」「群青」「」同人。句集に『式日』(左右社・2020年)。 同書により、第44回俳人協会新人賞



安里琉太のバックナンバー】

>>〔13〕氷上の暮色ひしめく風の中    廣瀬直人
>>〔12〕旗のごとなびく冬日をふと見たり 高浜虚子
>>〔11〕休みの日晝まで霜を見てゐたり  永田耕衣
>>〔10〕目薬の看板の目はどちらの目 古今亭志ん生
>>〔9〕こぼれたるミルクをしんとぬぐふとき天上天下花野なるべし 水原紫苑
>>〔8〕短日のかかるところにふとをりて  清崎敏郎
>>〔7〕GAFA世界わがバ美肉のウマ逃げよ  関悦史
>>〔6〕生きるの大好き冬のはじめが春に似て 池田澄子
>>〔5〕青年鹿を愛せり嵐の斜面にて  金子兜太
>>〔4〕ここまでは来たよとモアイ置いていく 大川博幸
>>〔3〕昼ごろより時の感じ既に無くなりて樹立のなかに歩みをとどむ 佐藤佐太郎
>>〔2〕魚卵たべ九月些か悔いありぬ  八田木枯
>>〔1〕松風や俎に置く落霜紅      森澄雄


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 大いなる梵字のもつれ穴まどひ 竹中宏【季語=穴惑(秋)】
  2. 永遠とポップコーンと冬銀河 神野紗希【季語=冬銀河(冬)】
  3. 夏帯にほのかな浮気心かな 吉屋信子【季語=夏帯(夏)】
  4. へたな字で書く瀞芋を農家売る 阿波野青畝【季語=山芋(秋)】
  5. 流氷や宗谷の門波荒れやまず 山口誓子【季語=流氷(春)】
  6. 純愛や十字十字の冬木立 対馬康子【季語=冬木立(冬)】
  7. 自転車の片足大地春惜しむ 松下道臣【季語=春惜しむ(春)】
  8. みどり児のゐて冬瀧の見える家 飯島晴子【季語=冬瀧(冬)】

おすすめ記事

  1. 澤龜の萬歳見せう御國ぶり 正岡子規【季語=萬歳(新年)】
  2. しんじつを籠めてくれなゐ真弓の実 後藤比奈夫【季語=真弓の実(秋)】
  3. 【夏の季語】噴水
  4. 【クラファン目標達成記念!】神保町に銀漢亭があったころリターンズ【11】/吉田林檎(「知音」同人)
  5. 「ぺットでいいの」林檎が好きで泣き虫で 楠本憲吉【季語=林檎(秋)】
  6. 【特別寄稿】屋根裏バル鱗kokera/中村かりん
  7. 「パリ子育て俳句さんぽ」【10月29日配信分】
  8. 【書評】小池康生 第2句集『奎星』(飯塚書店、2020年)
  9. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第37回】龍安寺と高野素十
  10. 生前の長湯の母を待つ暮春 三橋敏雄【季語=暮春(春)】

Pickup記事

  1. 【連載】もしあの俳人が歌人だったら Session#15
  2. 【特別寄稿】屋根裏バル鱗kokera/中村かりん
  3. 黄金週間屋上に鳥居ひとつ 松本てふこ【季語=黄金週間(夏)】
  4. 団栗の二つであふれ吾子の手は 今瀬剛一【季語=団栗(秋)】
  5. 而して蕃茄の酸味口にあり 嶋田青峰【季語=トマト(夏)】
  6. 狐火にせめてををしき文字書かん 飯島晴子【季語=狐火(冬)】
  7. 森の秀は雲と睦めり花サビタ 林翔【季語=さびたの花(夏)】
  8. 見てゐたる春のともしびゆらぎけり 池内たけし【季語=春灯(春)】
  9. ひっくゝりつっ立てば早案山子かな 高田蝶衣【季語=案山子(秋)】
  10. 雛納めせし日人形持ち歩く 千原草之【季語=雛納(春)】
PAGE TOP