子を負ふて芒の中に立つてをり 濱口今夜【季語=芒(秋)】


子を負ふて芒の中に立つてをり

濱口今夜

子を背負った人が芒の中に立っている。ただそれだけの景です。
子を背負っているのは作者自身なのか、それとも作者はその人を見ているのか。句からは分かりません。

一句を読む時、私は作者が何に心を動かされたのかを追体験しようとすることがあります。そして、この句を読んでいるうちに、私は自分が子を背負って芒の中に立っていました。

背中には子の重さと温かさがあり、目の前には芒がある。
背中の子と一緒に芒を眺めているのかもしれないし、子を背負いながらも自分ひとりの時間として佇んでいるのかもしれない。
子の重さと温もりを感じるほどに、目の前の芒の軽さと乾いた感じが立ち上がってくるような気がしました。

芒について殆ど何も描かれていないのに、これほど芒を感じられることが不思議です。

『浜口今夜句集』(昭和19年)所収

(菅谷糸)


【執筆者プロフィール】
菅谷 糸(すがや・いと)
1977年生まれ。東京都在住。「ホトトギス」所属。日本伝統俳句協会会員。


【菅谷糸のバックナンバー】
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>>〔4〕ひさびさの雨に上向き草の花 荒井桂子
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>>〔6〕皆出かけスポーツの日の大あくび 葛原由起
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>>〔34〕大根の花供へある仏かな 為成菖蒲園
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>>〔37〕二の腕も蛭も等しく濡れてをり 田丸千種
>>〔38〕モジリアニ風の妊婦の薄暑かな 佐伯緋路
>>〔39〕参道に若葉のしづく降り止まず 今井肖子
>>〔40〕激論の卓さくらんぼそつと出す 玉手のり子
>>〔41〕姫女菀みな花びらのどこか欠け 抜井諒一
>>〔42〕焚きやめて蒼朮薫る家の中 杉田久女
>>〔43〕セルを著て家居たのしむ心かな 高濱年尾
>>〔44〕眞すぐに合歓の花落つ池の上 星野立子
>>〔45〕赴任先からとバナナの送られし 稲畑廣太郎
>>〔46〕柱影映りもぞする油団かな 高濱虚子
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>>〔48〕どれくらゐ飲めばいいのか生ビール 真篠みどり
>>〔49〕水が水らしく流れて今朝の秋 山下しげ人
>>〔50〕八月の狛犬の阿の猛猛し 椋誠一朗
>>〔51〕かなかなの暮れて手をぬく厨ごと 添田みわ子
>>〔52〕きちかうの色を深むることもなく 三村純也
>>〔53〕霧吸つて吐いて岩山一歩づつ 岸田祐子
>>〔54〕同じ虫聞いて一と言話したる 深見けん二
>>〔55〕星空を源流として秋の川 山田佳乃
>>〔56〕瓢簞のくびれ足らざるものも良し 千野千佳
>>〔57〕月浴びてゐるとも知らず輝いて 若杉朋哉
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