
瓢簞のくびれ足らざるものも良し
千野千佳
瓢簞棚に幾つもの瓢簞がぶら下がっていると、私はいつまでも眺めていたくなります。なぜなのかは、これまで考えたこともありませんでした。
掲句を読んで、そういえば瓢簞はひとつひとつ形が違うことに気付きました。
いかにも瓢簞らしく真ん中がきゅっとくびれたものがあれば、少しくびれの緩いものもあります。大きく立派な瓢簞の隣に、小さいながら既に瓢簞らしい形をしたものが生っていたりします。
収穫された後には、酒壺になるのだろうか、花器になるのだろうかと、その先の姿を想像するのも楽しいものです。
「くびれ足らざる」と気付くからには、作者の中にも「瓢簞とはこういう形」という物差しがあるのでしょう。けれども、実際に生っている瓢簞を眺めれば、その物差しから少し外れた形にも目が留まります。そして作者は、そういうものも「良し」と受け取ります。
頭の中にある端正な瓢簞の形よりも、目の前に生っている瓢簞はずっと様々です。
くびれが足りないことさえ、その瓢簞をもう一度よく見る理由になります。
掲句を読んで、私が瓢簞棚の前をなかなか離れられない理由が、少し分かったような気がしました。
句集『鶯餅』(ふらんす堂) 所収
(菅谷糸)
【執筆者プロフィール】
菅谷 糸(すがや・いと)
1977年生まれ。東京都在住。「ホトトギス」所属。日本伝統俳句協会会員。

【菅谷糸のバックナンバー】
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