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【#24】愛媛の興居島

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【連載】
趣味と写真と、ときどき俳句と【#24】


愛媛の興居島

青木亮人(愛媛大学准教授)


三月になり、陽ざしが春めいてきた。

上の写真は愛媛県の興居島(ごごしま)で撮ったもので、春になると思い出す写真だ。興居島は松山市から船で10分ほどで着き、約1,000人が住んでいる。

個人的に島が好きで、船で渡って島でのんびり過ごしていると何ともいえない幸福感を感じてしまう。それも春に訪れるのが好きで、かつては近くの島に行ったりしていた。

写真の興居島は蜜柑がよく実る島で知られ、降り注ぐ陽光と海からの照り返しの双方を浴びた蜜柑はたわわに実り、甘くなるそうだ。

そんな興居島のテトラポットの上に干された洗濯ものは、春の陽ざしと海面の反射光でこれ以上なく完璧に乾きそうな気配を漂わせており、ついシャッターを切ったのだった。

この写真を撮った時は、半日かけて興居島を巡り、のんびり過ごした。自転車に乗って信号のない海沿いの道を走りながら島の各所の寺社仏閣や浜に立ち寄ったり、山に登って海の景色を眺めたりした。春爛漫の一日で、あまりによく晴れた日だったために赤くなるほど日焼けしたのを覚えている(海の照り返しも凄かった)。

島には廃校をカフェとして再利用した「しまのテーブルごごしま」があるが、私が訪れた時には休みだった。今度来る時にはこのカフェでカレーを食そうと思いながら、帰りの船に乗ったものだ。

島に渡ってから数日後、大学で講義をしていると私の急激な日焼けに受講生が奇異に感じたらしく、講義後に「どこかに行かれたんですか?」と質問があった。あまりに気持ちよく日焼けしていたので、沖縄かどこかに旅行に出かけたように感じたのだろう。

私は興居島に渡ったことを話すと、受講生は意外そうな表情を浮かべ、「どこか南の方に旅行されたかと思ったのですが、興居島とは…」と残念そうだった。

「日焼けしたかったら興居島に行くといいよ」と言うと、受講生たちは笑った。

受講生たちの中には興居島出身の学生もいた。

その学生は笑顔が素敵で、春の陽ざしを想わせる笑い方だった。

興居島のマップ

【次回は3月15日ごろ配信予定です】


【執筆者プロフィール】
青木亮人(あおき・まこと)
昭和49年、北海道生れ。近現代俳句研究、愛媛大学准教授。著書に『近代俳句の諸相』『さくっと近代俳句入門』など。


【「趣味と写真と、ときどき俳句と」バックナンバー】

>>[#23] 懐かしいノラ猫たち
>>[#22] 鍛冶屋とセイウチ
>>[#21] 中国大連の猫
>>[#20] ミュンヘンの冬と初夏
>>[#19] 子猫たちのいる場所
>>[#18] チャップリン映画の愉しみ方
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>>[#16] 秋の夜長の漢詩、古琴
>>[#15] 秋に聴きたくなる曲
>>[#14] 「流れ」について
>>[#13-4] 松山藩主松平定行公と東野、高浜虚子や今井つる女が訪れた茶屋について(4)
>>[#13-3] 松山藩主松平定行公と東野、高浜虚子や今井つる女が訪れた茶屋について(3)
>>[#13-2] 松山藩主松平定行公と東野、高浜虚子や今井つる女が訪れた茶屋について(2)
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>>[#12] 愛媛のご当地菓子
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>>[#10] 食事の場面
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>>[#8] 書きものとガムラン
>>[#7] 「何となく」の読書、シャッター
>>[#6] 落語と猫と
>>[#5] 勉強の仕方
>>[#4] 原付の上のサバトラ猫
>>[#3] Sex Pistolsを初めて聴いた時のこと
>>[#2] 猫を撮り始めたことについて
>>[#1] 「木綿のハンカチーフ」を大学授業で扱った時のこと



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