我が霜におどろきながら四十九へ
平田修
(『曼陀羅』1996年ごろ)
きわめて私事で恐縮だが、明日8月4日は僕の誕生日である。誕生日というものが訪れるらしいことは慣例的に認識しているのだが、果たして誕生日とはなんなのだろうか?知識がないままに誕生日を迎えてしまうことで危険な目に遭ってしまったり、大変な損害を被ってしまう危険性も否定できないため、事前に誕生日に関する情報を整理したうえで臨みたいと思う。まずは手軽な情報収集の手段として、ChatGPTとGeminiにそれぞれの意見を聞いてみた。
ChatGPT
誕生日とは、「人が生まれた日」を記念する日のことです。具体的には、その人がこの世に生を受けた日を毎年祝う日であり、多くの文化で特別な意味を持っています。
誕生日の主な意味や目的:
・生命の始まりを記念する
→ 「あなたがこの世に生まれてきたこと」を祝う日です。
・年齢の節目
→ 誕生日を迎えるごとに1歳年を取ります。日本では、満年齢で年齢を数えるのが一般的です。
・周囲の人との絆を深める機会
→ 家族や友人が祝ってくれることによって、人とのつながりを再確認する日にもなります。
文化的な違い
・日本や欧米ではケーキを囲んで祝う習慣が一般的。
・韓国では、旧暦で祝うこともあります。
・一部の宗教では誕生日を祝わない習慣もあります(例:エホバの証人など)。
誕生日に行われることの例
・ケーキにロウソクを立てて吹き消す
・プレゼントを贈る/もらう
・誕生日カードを書く
・SNSで「おめでとう」とメッセージをもらう
簡単に言うと、「あなたが生まれてきたことに感謝し、成長を祝う日」です。
もし「なんで誕生日を祝うのか?」とか「誰が最初に誕生日を祝ったのか?」などの背景が気になるなら、そういう話もできますよ。
Gemini
誕生日は、人が生まれた日のことです。一般的に、毎年同じ日付が誕生日として祝われます。
誕生日を祝う文化は世界中にあり、家族や友人が集まってパーティーを開いたり、プレゼントを交換したりします。ケーキにろうそくを立てて、その年の年齢の数だけ火を灯し、火を吹き消す前に願いごとをするのも、誕生日のお祝いの定番です。
誕生日を祝う習慣は、古代エジプトのファラオが王座に就いた日を祝ったのが起源だとする説や、古代ローマの皇帝が神々に感謝するために祝日を設けたのが始まりだとする説など、いくつかあります。
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誕生日に関する文化
・プレゼント:誕生日を祝う気持ちを込めて、相手に贈り物をします。
・バースデーソング:「ハッピーバースデートゥーユー」という歌は、世界中で歌われる定番のバースデーソングです。
・誕生石・誕生花:生まれた月ごとに、それぞれ象徴的な宝石や花が決まっています。
誕生日は、その人がこの世に生まれたことを喜び、感謝する、特別な日と言えるでしょう。
つまり一般に、誕生日とは人がこの世に生を受けたことを良いこととして祝福する日のようである。ひとまず危険性の高いものでないことがわかったのはありがたい。ただ一つ気になったのは、Geminiの回答にある「誕生石・誕生花」という項目である。現時点での僕は自分の誕生石・誕生花を知らないため、たとえば当日に誕生石が頭蓋に直撃して死亡……といった事態が起こり得てしまうだろう。また、知らずに口にした誕生花が猛毒を発揮して死亡……という可能性も否定できない。誕生日と命日が同じというのは資料的にアクセシビリティがよいものの、まだやりたいことが残されているために明日死んでしまうということは避けたい。リスクヘッジのため、誕生石・誕生花を調べてみたいと思う。
8月の誕生石は「ペリドット」と「スピネル」という宝石であるらしい。ペリドットは黄緑色の、スピネルは赤や紫といった様々な色を持ついずれも美しい石だ。そして両者ともに、中世ヨーロッパでは魔除けとして用いられてきたものだという。大型の宝石は希少であるため、怪我を負うようなサイズ感のものに出会うことは難しそうである。直撃死の可能性についてはかなり抑えられたと言えるが、一方で悪霊や妖怪という新たな懸念要素が生じてしまった。ペリドットかスピネルを装着していない状態で夜に外出などをした場合、悪霊の追跡によって生気を抜き取られて死亡……という危険性がある。幸いにもいずれもあまり高価な宝石ではないようなので、速やかにどちらかの石を使用した装飾品を手に入れる必要があるだろう。
8月の誕生花は「メコノプシス」というケシ科の花。初夏に青い花を咲かせる美しい花である。花言葉は「底知れぬ魅力をたたえた」。飼育の難しい高山植物で、また茎や葉にはトゲが多いというかなり癖のある花である。その生育の難しさから、日本で見られる場所も限られるという。調べたところ、メコノプシスがある植物園のうちで東京から最も近いのは栃木県の上三依水生植物園。ほぼ福島県との県境に位置する遠い場所だ。そしてあろうことか、メコノプシスの開花時期は5月頃なのだという。8月の誕生花の開花時期が5月という矛盾は理解に苦しむが、つまり今年はもう見ることが難しいということである。来年はぜひお目にかかりたいところだが、誕生花を見ることのないままに迎える今年の誕生日はかなり危険なものになることは間違いないだろう。メコノプシスはケシ科の植物であるから、知らないうちに料理や飲料に多少に含まれた大麻成分により死亡……というトリッキーなエンディングが想定される。明日は口に運ぶものについて、慎重な検討を重ねる必要があるだろう。
我が霜におどろきながら四十九へ 平田修
掲句は平田作品にしばしば見られる自らの年齢を詠み込んだ句。文面通り受け取るならば、この句は49歳のときの作品ということになる。自分自身や自分の生み出すものに驚くということは俳句に限らず、あらゆる作家にとって必要な資質であり、必要なマインドセットである。自分自身を驚かせられない者に他人を動かすことはできないという単純な理論だ。もちろんこのことを自らに強い続けるのは容易なことではないが、常に頭の片隅には置いておきたい考え方である。ちなみに明日で僕は25歳になる。この句を書いたときの平田のおよそ半分の年齢だ。平田は25歳のとき、まだ俳句と出会っていなかった。
(細村星一郎)
【執筆者プロフィール】
細村星一郎(ほそむら・せいいちろう)
2000年生。第16回鬼貫青春俳句大賞。Webサイト「巨大」管理人。
【細村星一郎のバックナンバー】
>>〔66〕
>>〔65〕空蟬より俺寒くこわれ出ていたり 平田修
>>〔64〕換気しながら元気な梅でいる 平田修
>>〔63〕あじさいの枯れとひとつにし秋へと入る 平田修
>>〔62〕夕日へとふいとかけ出す青虫でいたり 平田修
>>〔61〕葉の中に混ぜてもらって点ってる 平田修
>>〔60〕あじさいの水の頭を出し闇になる私 平田修
>>〔59〕螢火へ言わんとしたら湿って何も出なかった 平田修
>>〔58〕海豚の子上陸すな〜パンツないぞ 小林健一郎
>>〔57〕夏の月あの貧乏人どうしてるかな 平田修
>>〔56〕逃げの悲しみおぼえ梅くもらせる 平田修
>>〔55〕春の山からしあわせと今何か言った様だ 平田修
>>〔54〕ぼく駄馬だけど一応春へ快走中 平田修
>>〔53〕人體は穴だ穴だと種を蒔くよ 大石雄介
>>〔52〕木枯らしや飯を許され沁みている 平田修
>>〔51〕ひまわりの種喰べ晴れるは冗談冗談 平田修
>>〔50〕腸にけじめの木枯らし喰らうなり 平田修
>>〔49〕木枯らしの葉の四十八となりぎりぎりでいる 平田修
>>〔48〕どん底の芒の日常寝るだけでいる 平田修
>>〔47〕私ごと抜けば大空の秋近い 平田修
>>〔46〕百合の香へすうと刺さってしまいけり 平田修
>>〔45〕はつ夏の風なりいっしょに橋を渡るなり 平田修
>>〔44〕歯にひばり寺町あたりぐるぐるする 平田修
>>〔43〕糞小便の蛆なり俺は春遠い 平田修
>>〔42〕ひまわりを咲かせて淋しとはどういうこと 平田修
>>〔41〕前すっぽと抜けて体ごと桃咲く気分 平田修
>>〔40〕青空の蓬の中に白痴見る 平田修
>>〔39〕さくらへ目が行くだけのまた今年 平田修
>>〔38〕まくら木枯らし木枯らしとなってとむらえる 平田修
>>〔37〕木枯らしのこの葉のいちまいでいる 平田修
>>〔36〕十二から冬へ落っこちてそれっきり 平田修
>>〔35〕死に体にするはずが芒を帰る 平田修
>>〔34〕冬の日へ曳かれちくしょうちくしょうこんちくしょう
>>〔33〕切り株に目しんしんと入ってった 平田修
>>〔32〕木枯らし俺の中から出るも又木枯らし 平田修
>>〔31〕日の綿に座れば無職のひとりもいい 平田修
>>〔30〕冬前にして四十五曲げた川赤い 平田修
>>〔29〕俺の血が根っこでつながる寒い川 平田修
>>〔28〕六畳葉っぱの死ねない唇の元気 平田修
>>〔27〕かがみ込めば冷たい水の水六畳 平田修
>>〔26〕青空の黒い少年入ってゆく 平田修
>>〔25〕握れば冷たい個人の鍵と富士宮 平田修
>>〔24〕生まれて来たか九月に近い空の色 平田修
>>〔23〕身の奥の奥に蛍を詰めてゆく 平田修
>>〔22〕芥回収ひしめくひしめく楽アヒル 平田修
>>〔21〕裁判所金魚一匹しかをらず 菅波祐太
>>〔20〕えんえんと僕の素性の八月へ 平田修
>>〔19〕まなぶたを薄くめくった海がある 平田修
>>〔18〕夏まっさかり俺さかさまに家離る 平田修
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