置替へて大朝顔の濃紫
川島奇北
なんとか秋が立ちまして、ちょっと気温のピークはずれましたが、ようやく激しさの下り坂に入った気がするこの頃の日差。旧暦の七夕を明日に控え、風も変わって。ちょっと落ち着かないといけないような、そんな金曜ですよ。
先週、金魚の句を取り上げて、金魚はひらひらして涼を呼び起こすものだったけれど、朝顔はまあ、どちらかと言えば、ひらひらして風を知らせてくれるもの。金魚が風によってひらひらしないのにもかかわらず、風を錯覚させるとすれば、朝顔(の花や葉)をひらひらさせるのは、本当に風だからだ。
置替へて大朝顔の濃紫
「置替へて」という、やや地味な始まりの掲句。鉢で買った朝顔の置き場所を変えてみる。いよいよ花時になったからということもあるだろうし、なにか周りの植栽の盛りも変わったのかもしれない。時のうつろいに伴う必然によるものなんだろう。
位置が変われば、当たる光も風も変わり、視点も変わる。その大きさ、濃さのために「置替へ」られた朝顔が、「置替へ」たことによって、ますます大きく濃く見える。
こんな風に読むと「置替へて」は、なかなかによく働く言葉。他をもって「置替え」がたい。
七夕がお盆にかかることは、案外ないことのようですが、すこしは晴間の見える週末になりますように。
『ホトトギス同人句集』(1938年)
(阪西敦子)
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【執筆者プロフィール】
阪西敦子(さかにし・あつこ)
1977年、逗子生まれ。84年、祖母の勧めで七歳より作句、『ホトトギス』児童・生徒の部投句、2008年より同人。1995年より俳誌『円虹』所属。日本伝統俳句協会会員。2010年第21回同新人賞受賞。アンソロジー『天の川銀河発電所』『俳コレ』入集、共著に『ホトトギスの俳人101』など。松山市俳句甲子園審査員、江東区小中学校俳句大会、『100年俳句計画』内「100年投句計画」など選者。句集『金魚』を製作中。
【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】