年迎ふ山河それぞれ位置に就き 鷹羽狩行【季語=年迎ふ(新年)】

年迎ふ山河それぞれ位置に就き

鷹羽狩行

2025年もよろしくお願いします。今年は曜日の関係で仕事始が6日の人も多いのではないだろうか。奇跡の9連休と言われた今年の年末年始。2年連続9連休でも「奇跡」なのだろうか?とりあえず今はもう少しお正月気分を満喫しますか。

年迎ふ山河それぞれ位置に就き

山河はどんな時にも動かないものだが、新年を迎えるために位置に就いているというのだ。

「年新た」「正月」「初明り」など新年を表す季語はほかにもたくさんあるが、この句では改まった感じの「年迎ふ」が絶妙に効いている。

「就く」に「就」の字を用いている点にも注目したい。ただそこにあるだけではなく王座に就いたような格調高さがあるのだ。

新しい年を迎えるたび、この句を思い出しては記憶の中の全ての山河が呼び覚まされる。

『十五峯』(2007年刊)所収。

吉田林檎


【執筆者プロフィール】
吉田林檎(よしだ・りんご)
昭和46年(1971)東京生まれ。平成20年(2008)に西村和子指導の「パラソル句会」に参加して俳句をはじめる。平成22年(2010)「知音」入会。平成25年(2013)「知音」同人、平成27年(2015)第3回星野立子賞新人賞受賞、平成28年(2016)第5回青炎賞(「知音」新人賞)を受賞。俳人協会会員。句集に『スカラ座』(ふらんす堂、2019年)


【吉田林檎さんの句集『スカラ座』(ふらんす堂、2019年)はこちら ↓】



【吉田林檎のバックナンバー】
>>〔133〕新人類とかつて呼ばれし日向ぼこ 杉山久子
>>〔132〕立膝の膝をとりかへ注連作 山下由理子
>>〔131〕亡き母に叱られさうな湯ざめかな 八木林之助
>>〔130〕かくしごと二つ三つありおでん煮る 常原拓
>>〔129〕〔林檎の本#1〕木﨑賢治『プロデュースの基本』
>>〔128〕鯛焼や雨の端から晴れてゆく 小川楓子
>>〔127〕茅枯れてみづがき山は蒼天に入る   前田普羅
>>〔126〕落葉道黙をもて人黙らしむ   藤井あかり
>>〔125〕とんぼ連れて味方あつまる山の国 阿部完市
>>〔124〕初鴨の一直線に水ひらく 月野ぽぽな
>>〔123〕ついそこと言うてどこまで鰯雲 宇多喜代子
>>〔122〕釣銭のかすかな湿り草紅葉 村上瑠璃甫
>>〔121〕夜なべしにとんとんあがる二階かな 森川暁水
>>〔120〕秋の蚊の志なく飛びゆけり 中西亮太
>>〔119〕草木のすつと立ちたる良夜かな 草子洗
>>〔118〕ポケットにギターのピック鰯雲 後閑達雄
>>〔117〕雨音のかむさりにけり虫の宿 松本たかし
>>〔116〕顔を見て出席を取る震災忌 寺澤始
>>〔115〕赤とんぼじっとしたまま明日どうする 渥美清
>>〔114〕東京の空の明るき星祭 森瑞穂
>>〔113〕ねむりても旅の花火の胸にひらく 大野林火
>>〔112〕口笛を吹いて晩夏の雲を呼ぶ 乾佐伎
>>〔111〕葛切を食べて賢くなりしかな 今井杏太郎
>>〔110〕昼寝よりさめて寝ている者を見る 鈴木六林男
>>〔109〕クリームパンにクリームぎつしり雲の峰 江渡華子
>>〔108〕少年の雨の匂ひやかぶと虫 石寒太
>>〔107〕白玉やバンド解散しても会ふ 黒岩徳将
>>〔106〕樹も草もしづかにて梅雨はじまりぬ 日野草城
>>〔105〕鳥不意に人語を発す更衣 有馬朗人
>>〔104〕身支度は誰より早く旅涼し 阪西敦子
>>〔103〕しろがねの盆の無限に夏館 小山玄紀
>>〔102〕泉に手浸し言葉の湧くを待つ 大串章
>>〔101〕メロン食ふたちまち湖を作りつつ 鈴木総史
>>〔100〕再縁といへど目出度し桜鯛 麻葉


>>〔99〕土のこと水のこと聞き苗を買ふ 渡部有紀子
>>〔98〕大空へ解き放たれし燕かな 前北かおる
>>〔97〕花散るや金輪際のそこひまで 池田瑠那
>>〔96〕さくら仰ぎて雨男雨女 山上樹実雄
>>〔95〕春雷の一喝父の忌なりけり 太田壽子
>>〔94〕あり余る有給休暇鳥の恋 広渡敬雄
>>〔93〕嚙み合はぬ鞄のチャック鳥曇 山田牧
>>〔92〕卒業歌ぴたりと止みて後は風 岩田由美
>>〔91〕鷹鳩と化して大いに恋をせよ 仙田洋子
>>〔90〕三椏の花三三が九三三が九 稲畑汀子
>>〔89〕順番に死ぬわけでなし春二番 山崎聰
>>〔88〕冴返るまだ粗玉の詩句抱き 上田五千石
>>〔87〕節分や海の町には海の鬼 矢島渚男
>>〔86〕手袋に切符一人に戻りたる 浅川芳直
>>〔85〕マフラーを巻いてやる少し絞めてやる 柴田佐知子
>>〔84〕降る雪や玉のごとくにランプ拭く 飯田蛇笏
>>〔83〕ラヂオさへ黙せり寒の曇り日を 日野草城
>>〔82〕数へ日の残り日二日のみとなる 右城暮石
>>〔81〕風邪を引くいのちありしと思ふかな 後藤夜半
>>〔80〕破門状書いて破れば時雨かな 詠み人知らず

関連記事