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三椏の花三三が九三三が九 稲畑汀子【季語=三椏の花(春)】


三椏の花三三が九三三が九

稲畑汀子

 記事アップの今日は2月24日。どの句を取り上げようか決めかね、猫の日(2月22日=にゃん・にゃん・にゃん)には遅かった…などと考えつつカレンダーを見てみる。2024年2月24日…ニニが四!

 九九のうち1桁の数字同士をかけ算した結果が1桁になるのは一一が一、二二が四、三三が九の3つだけ。四四十六になると桁が変わってしまう。この3つの中で最も俳句的なのはやはり三三が九がずば抜けている。一一が一は広がりが無い。二二が四は音が滑らかすぎるためか計算感が強い。三三が九は音に引っかかりが多い。なんといってもサザン(オールスターズ)と(坂本)九がいるではないか!

 こんなことがきっかけで本日の一句に思い至ったかどうかの真偽はともかく。

 生まれてから今日に至るまで何回引越したかを数えたところ、昨年の引越しで10回目だった。俳句を始めてからは4回目。

 引越しをして最初の1年は季節の花がどこに咲くのかがまだ把握できておらず、咲くたびに喜びと驚きがある。

 今の生活圏では山茶花と梅と連翹まで把握できている。沈丁花と木蓮はなんとしても見つけたいところ。紫陽花は見つけるまで歩く。

三椏の花三三が九三三が九

 三椏の花は歳時記で知った。枝が全部三叉に分かれている植物があるとは。初めて見つけた時きっとなりそこないがあるはずと探してみたが、どの枝も間違いなく三つに分かれている。その先の枝分かれも三叉だ。思った以上にきっちり三三が九だった。

 三三が九と音読してみると、s、z、g、kの子音が口の中に様々な風を起こす。三椏の花に集まる風のようである。

 こうした句は策を巡らせて作るとその狙いが見えやすいが、思わず九口ずさんでできたというからうまく着地したのにも頷ける。

 俳句を詠み、読む理由のひとつに、自然の真理を知りたい、というのがある。花びらの数や虫の脚の数はなぜ皆同じなのか?夕日はなぜ赤いのか?

 三椏の花の枝が必ず三叉に分かれているのにも何らかの理由を見つけたい。それは正解でなくてもいい。科学的に解明できなくても納得出来る仮説があればそこに重ねられる人生の真実があるはずだから。

 三椏の花は生活圏で見つけられないことが多かった。それだけに吟行で出会った時の喜びは大きい。とはいえ今の生活圏で三椏の花を見つけることが目下の課題なのである。

吉田林檎


【執筆者プロフィール】
吉田林檎(よしだ・りんご)
昭和46年(1971)東京生まれ。平成20年(2008)に西村和子指導の「パラソル句会」に参加して俳句をはじめる。平成22年(2010)「知音」入会。平成25年(2013)「知音」同人、平成27年(2015)第3回星野立子賞新人賞受賞、平成28年(2016)第5回青炎賞(「知音」新人賞)を受賞。俳人協会会員。句集に『スカラ座』(ふらんす堂、2019年)


【吉田林檎さんの句集『スカラ座』(ふらんす堂、2019年)はこちら ↓】



【吉田林檎のバックナンバー】
>>〔89〕順番に死ぬわけでなし春二番 山崎聰
>>〔88〕冴返るまだ粗玉の詩句抱き 上田五千石
>>〔87〕節分や海の町には海の鬼 矢島渚男
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>>〔2〕嚔して酒のあらかたこぼれたる  岸本葉子
>>〔1〕水底に届かぬ雪の白さかな    蜂谷一人


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