クリスマス近づく部屋や日の溢れ
深見けん二
本当に今年最後の一週間と、本当になったとは…。まだ、信じられない思いですが、みなさまはいかがですか。
信じがたい理由には、やはり家をあまり出ないことがあるだろう。今年の始めめに出た緊急事態宣言以降、在宅がすっかり定着し、一年の四分の三が過ぎて解除されたのちも、せいぜい出社は一日程度。年のうつろいは、景色や行事ではなく、カレンダーや予定などの認識に頼ることが多くなった。
一方で、寒暖や日差に前よりも注意を払うようになった気がするのは、私だけだろうか。
クリスマス近づく部屋や日の溢れ
今年を振り返って、今でも強く残るのは、やはり九月に亡くなった深見けん二さんのこと。最後に言葉を交わしたのは、だいぶ前のことだし、人づてに聞くという「つて」の人にも、なかなかお目にかからないここ数年であった。それでも、何かの支えとして、何か悩むときの「脳内問い合わせ先」として、いつもその言葉と存在があった。それは、今後も変わることはないけれど、その深化・進化が止まってしまったことは、何か寄る辺のない気にさせる。
ケアホーム「もみの木」に入居され、穏やかな暮らしを送られていたけん二さんの、去年のクリスマスの句。事情は違えども、外出は少なくなっていたことだろう。それでも、窓から入る日差に時のうつろいを知り、冬至へ向かい、越えてゆく部屋の日々を慈しむ。
いつこのような年末が迎えられるようになるのか、元々私には無理なことなのかわからないけれど、とにかくやれるうちはこの慌ただしい年末を越えてゆくしかない。
それでも、今年のクリスマス、みなさまに、私に、こんな瞬間が一瞬でも、訪れますように。
(阪西敦子)
【阪西敦子のバックナンバー】
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【執筆者プロフィール】
阪西敦子(さかにし・あつこ)
1977年、逗子生まれ。84年、祖母の勧めで七歳より作句、『ホトトギス』児童・生徒の部投句、2008年より同人。1995年より俳誌『円虹』所属。日本伝統俳句協会会員。2010年第21回同新人賞受賞。アンソロジー『天の川銀河発電所』『俳コレ』入集、共著に『ホトトギスの俳人101』など。松山市俳句甲子園審査員、江東区小中学校俳句大会、『100年俳句計画』内「100年投句計画」など選者。句集『金魚』を製作中。
【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】