篠崎央子

いじめると陽炎となる妹よ　仁平勝【季語＝陽炎（春）】

寄り添うて眠るでもなき胡蝶かな　太祇【季語＝胡蝶（春）】

別々に拾ふタクシー花の雨　岡田史乃【季語＝花の雨（春）】

野遊のしばらく黙りゐる二人　涼野海音【季語＝野遊（春）】

逢ふたびのミモザの花の遠げむり　後藤比奈夫【季語＝ミモザ（春）】

走る走る修二会わが恋ふ御僧も　大石悦子【季語＝修二会（春）】

薄氷に書いた名を消し書く純愛　高澤晶子【季語＝薄氷（春）】

約束はいつも待つ側春隣　浅川芳直【季語＝春隣（冬）】

葉牡丹に恋が渦巻く金曜日　浜明史【季語＝葉牡丹（冬）】

さつま汁妻と故郷を異にして　右城暮石【季語＝さつま汁（冬）】

成人の日は恋人の恋人と　如月真菜【季語＝成人の日（新年）】

逢はざりしみじかさに松過ぎにけり　上田五千石【季語＝松過ぐ（新年）】

年惜しむ麻美・眞子・晶子・亜美・マユミ　北大路翼【季語＝年惜しむ（冬）】

ゆず湯の柚子つついて恋を今している　越智友亮【季語＝ゆず湯（冬）】

道逸れてゆきしは恋の狐火か　大野崇文【季語＝狐火（冬）】

わが子宮めくや枯野のヘリポート　柴田千晶【季語＝枯野（冬）】

冬麗や泣かれて抱けば腹突かれ　黒岩徳将【季語＝冬麗（冬）】

ひょんの笛ことばにしては愛逃ぐる　池冨芳子【季語＝ひょんの笛（秋）】

温め酒女友達なる我に　阪西敦子【季語＝温め酒（秋）】

冷やかに傷を舐め合ふ獣かな　澤田和弥【季語＝冷やか（秋）】

桐の実の側室ばかりつらなりぬ　峯尾文世【季語＝桐の実（秋）】

白芙蓉今日一日は恋人で　宮田朗風【季語＝芙蓉（秋）】

生涯の恋の数ほど曼珠沙華　大西泰世【季語＝曼珠沙華（秋）】

十六夜や間違ひ電話の声に惚れ　内田美紗【季語＝十六夜（秋）】

愛に安心なしコスモスの揺れどほし　長谷川秋子【季語＝コスモス（秋）】

緋のカンナ夜の女体とひらひらす　富永寒四郎【季語＝カンナ（秋）】

夏山に噂の恐き二人かな　倉田紘文【季語＝夏山（夏）】

これ以上愛せぬ水を打つてをり　日下野由季【季語＝水を打つ（夏）】

七夕や若く愚かに嗅ぎあへる　高山れおな【季語＝七夕（秋）】

宵山の装ひ解かず抱かれけり　角川春樹【季語＝宵山（夏）】

ぬばたまの夜やひと触れし髪洗ふ　坂本宮尾【季語＝髪洗ふ（夏）】

蛍火や飯盛女飯を盛る　山口青邨【季語＝蛍火（夏）】

あひふれしさみだれ傘の重かりし　中村汀女【季語＝五月雨（夏）】

恋人はめんどうな人さくらんぼ　畑耕一【季語＝さくらんぼ（夏）】

花いばら髪ふれあひてめざめあふ　小池文子【季語＝花いばら（夏）】

婚約とは二人で虹を見る約束　山口優夢【季語＝虹（夏）】

妻となる人五月の波に近づきぬ　田島健一【季語＝五月（夏）】

抱きしめてもらへぬ春の魚では　夏井いつき【季語＝春の魚（春）】

啜り泣く浅蜊のために灯を消せよ　磯貝碧蹄館【季語＝浅蜊（春）】

海市あり別れて匂ふ男あり　秦夕美【季語＝海市（春）】

エリックのばかばかばかと桜降る　太田うさぎ【季語＝桜（春）】

卒業す片恋少女鮮烈に　加藤楸邨【季語＝卒業（春）】

誰をおもひかくもやさしき雛の眉　加藤三七子【季語＝雛（春）】

海苔あぶる手もとも袖も美しき　瀧井孝作【季語＝海苔（春）】

鳥の恋いま白髪となる途中　鳥居真里子【季語＝鳥の恋（春）】

魚は氷に上るや恋の扉開く　青柳飛【季語＝魚氷に上る（春）】

寒いねと彼は煙草に火を点ける　正木ゆう子【季語＝寒い（冬）】

純愛や十字十字の冬木立　対馬康子【季語＝冬木立（冬）】

冬河原のつぴきならぬ恋ならめ　行方克巳【季語＝冬河原（冬）】

忽然と昭和をはりぬ夕霧忌　森竹須美子【季語＝夕霧忌（冬）】

恋にしてわざと敗けたるかるた哉　羅蘇山人【季語＝かるた（新年）】

クリスマス「君と結婚していたら」　堀井春一郎【季語＝クリスマス（冬）】

毛糸玉秘密を芯に巻かれけり　小澤克己【季語＝毛糸玉（冬）】

恋の刻急げ　アリスの兎もぐもぐもぐ　中村憲子【季語＝兎（冬）】

デモすすむ恋人たちは落葉に佇ち　宮坂静生【季語＝落葉（冬）】

美しき時雨の虹に人を待つ　森田愛子【季語＝時雨（冬）】

弟へ恋と湯婆ゆづります　攝津幸彦【季語＝湯婆（冬）】

にんじんサラダわたし奥様ぢやないぞ　小川楓子【季語＝にんじん（冬）】

山椒の実噛み愛憎の身の細り　清水径子【季語＝山椒の実（秋）】

恋ふたつ　レモンはうまく切れません　松本恭子【季語＝レモン（秋）】

あきざくら咽喉に穴あく情死かな　宇多喜代子【季語＝あきざくら（秋）】

赤い月にんげんしろき足そらす　富澤赤黄男【季語＝月（秋）】

泥棒の恋や月より吊る洋燈　大屋達治【季語＝月（秋）】

耳飾るをとこのしなや西鶴忌　山上樹実雄【季語＝西鶴忌（秋）】

昼の虫手紙はみんな恋に似て　細川加賀【季語＝昼の虫（秋）】

朝貌や惚れた女も二三日　夏目漱石【季語＝朝貌（秋）】

秋茄子の漬け色不倫めけるかな　岸田稚魚【季語＝秋茄子（秋）】

中年や遠くみのれる夜の桃　西東三鬼【季語＝桃（秋）】

太る妻よ派手な夏着は捨てちまへ　ねじめ正也【季語＝夏着（夏）】

冷房とまる高階純愛の男女残し　金子兜太【季語＝冷房（夏）】

白衣とて胸に少しの香水を　坊城中子【季語＝香水（夏）】

きつかけはハンカチ借りしだけのこと　須佐薫子【季語＝ハンカチ（夏）】

わが恋人涼しチョークの粉がこぼれ　友岡子郷【季語＝涼し（夏）】

姦通よ夏木のそよぐ夕まぐれ　宇多喜代子【季語＝夏木（夏）】

水喧嘩恋のもつれも加はりて　相島虚吼【季語＝水喧嘩（夏）】

キャベツに刃花嫁衣裳は一度きり　山田径子【季語＝キャベツ（夏）】

さよならと梅雨の車窓に指で書く　長谷川素逝【季語＝梅雨（夏）】

夏帯にほのかな浮気心かな　吉屋信子【季語＝夏帯（夏）】

虎の尾を一本持つて恋人来　小林貴子【季語＝虎尾草（夏）】

マグダラのマリア恋しや芥子の花　有馬朗人【季語＝芥子の花（夏）】

五十なほ待つ心あり髪洗ふ　大石悦子【季語＝髪洗ふ（夏）】

青い薔薇わたくし恋のペシミスト　高澤晶子【季語＝薔薇（夏）】

恋終りアスパラガスの青すぎる　神保千恵子【季語＝アスパラガス（春）】

春の雁うすうす果てし旅の恋　小林康治【季語＝春の雁（春）】

恋の神えやみの神や鎮花祭　松瀬青々【季語＝鎮花祭（春）】

妻が言へり杏咲き満ち恋したしと　草間時彦【季語＝杏の花（春）】

四月馬鹿ならず子に恋告げらるる　山田弘子【季語＝四月馬鹿（春）】

深追いの恋はすまじき沈丁花　芳村うつぎ【季語＝沈丁花（春）】

恋人奪いの旅だ　菜の花　菜の花　海　坪内稔典【季語＝菜の花（春）】

いぬふぐり昔の恋を問はれけり　谷口摩耶【季語＝いぬふぐり（春）】

バレンタインデー心に鍵の穴ひとつ　上田日差子【季語＝バレンタインデー（春）】

逢曳や冬鶯に啼かれもし　安住敦【季語＝冬鶯（冬）】

かいつぶり離ればなれはいい関係　山﨑十生【季語＝鳰（冬）】

消すまじき育つるまじき火は埋む　京極杞陽【季語＝埋火（冬）】

兎の目よりもムンクの嫉妬の目　森田智子【季語＝兎（冬）】

馴染むとは好きになること味噌雑煮　西村和子【季語＝雑煮（新年）】

息触れて初夢ふたつ響きあふ　正木ゆう子【季語＝初夢（新年）】

寝化粧の鏡にポインセチア燃ゆ　小路智壽子【季語＝ポインセチア（冬）】

服脱ぎてサンタクロースになるところ　堀切克洋【季語＝サンタクロース（冬）】

山茶花のくれなゐひとに訪はれずに　橋本多佳子【季語＝山茶花（冬）】

いじめると陽炎となる妹よ 仁平勝【季語＝陽炎（春）】

寄り添うて眠るでもなき胡蝶かな 太祇【季語＝胡蝶（春）】

別々に拾ふタクシー花の雨 岡田史乃【季語＝花の雨（春）】

野遊のしばらく黙りゐる二人 涼野海音【季語＝野遊（春）】

逢ふたびのミモザの花の遠げむり 後藤比奈夫【季語＝ミモザ（春）】

走る走る修二会わが恋ふ御僧も 大石悦子【季語＝修二会（春）】

薄氷に書いた名を消し書く純愛 高澤晶子【季語＝薄氷（春）】

約束はいつも待つ側春隣 浅川芳直【季語＝春隣（冬）】

葉牡丹に恋が渦巻く金曜日 浜明史【季語＝葉牡丹（冬）】

さつま汁妻と故郷を異にして 右城暮石【季語＝さつま汁（冬）】

成人の日は恋人の恋人と 如月真菜【季語＝成人の日（新年）】

逢はざりしみじかさに松過ぎにけり 上田五千石【季語＝松過ぐ（新年）】

年惜しむ麻美・眞子・晶子・亜美・マユミ 北大路翼【季語＝年惜しむ（冬）】

ゆず湯の柚子つついて恋を今している 越智友亮【季語＝ゆず湯（冬）】

道逸れてゆきしは恋の狐火か 大野崇文【季語＝狐火（冬）】

わが子宮めくや枯野のヘリポート 柴田千晶【季語＝枯野（冬）】

冬麗や泣かれて抱けば腹突かれ 黒岩徳将【季語＝冬麗（冬）】

ひょんの笛ことばにしては愛逃ぐる 池冨芳子【季語＝ひょんの笛（秋）】

温め酒女友達なる我に 阪西敦子【季語＝温め酒（秋）】

冷やかに傷を舐め合ふ獣かな 澤田和弥【季語＝冷やか（秋）】

桐の実の側室ばかりつらなりぬ 峯尾文世【季語＝桐の実（秋）】

白芙蓉今日一日は恋人で 宮田朗風【季語＝芙蓉（秋）】

生涯の恋の数ほど曼珠沙華 大西泰世【季語＝曼珠沙華（秋）】

十六夜や間違ひ電話の声に惚れ 内田美紗【季語＝十六夜（秋）】

愛に安心なしコスモスの揺れどほし 長谷川秋子【季語＝コスモス（秋）】

緋のカンナ夜の女体とひらひらす 富永寒四郎【季語＝カンナ（秋）】

夏山に噂の恐き二人かな 倉田紘文【季語＝夏山（夏）】

これ以上愛せぬ水を打つてをり 日下野由季【季語＝水を打つ（夏）】

七夕や若く愚かに嗅ぎあへる 高山れおな【季語＝七夕（秋）】

宵山の装ひ解かず抱かれけり 角川春樹【季語＝宵山（夏）】

ぬばたまの夜やひと触れし髪洗ふ 坂本宮尾【季語＝髪洗ふ（夏）】

蛍火や飯盛女飯を盛る 山口青邨【季語＝蛍火（夏）】

あひふれしさみだれ傘の重かりし 中村汀女【季語＝五月雨（夏）】

恋人はめんどうな人さくらんぼ 畑耕一【季語＝さくらんぼ（夏）】

花いばら髪ふれあひてめざめあふ 小池文子【季語＝花いばら（夏）】

婚約とは二人で虹を見る約束 山口優夢【季語＝虹（夏）】

妻となる人五月の波に近づきぬ 田島健一【季語＝五月（夏）】

抱きしめてもらへぬ春の魚では 夏井いつき【季語＝春の魚（春）】

啜り泣く浅蜊のために灯を消せよ 磯貝碧蹄館【季語＝浅蜊（春）】

海市あり別れて匂ふ男あり 秦夕美【季語＝海市（春）】

エリックのばかばかばかと桜降る 太田うさぎ【季語＝桜（春）】

卒業す片恋少女鮮烈に 加藤楸邨【季語＝卒業（春）】

誰をおもひかくもやさしき雛の眉 加藤三七子【季語＝雛（春）】

海苔あぶる手もとも袖も美しき 瀧井孝作【季語＝海苔（春）】

鳥の恋いま白髪となる途中 鳥居真里子【季語＝鳥の恋（春）】

魚は氷に上るや恋の扉開く 青柳飛【季語＝魚氷に上る（春）】

寒いねと彼は煙草に火を点ける 正木ゆう子【季語＝寒い（冬）】

純愛や十字十字の冬木立 対馬康子【季語＝冬木立（冬）】

冬河原のつぴきならぬ恋ならめ 行方克巳【季語＝冬河原（冬）】

忽然と昭和をはりぬ夕霧忌 森竹須美子【季語＝夕霧忌（冬）】

恋にしてわざと敗けたるかるた哉 羅蘇山人【季語＝かるた（新年）】

クリスマス「君と結婚していたら」 堀井春一郎【季語＝クリスマス（冬）】

毛糸玉秘密を芯に巻かれけり 小澤克己【季語＝毛糸玉（冬）】

恋の刻急げ アリスの兎もぐもぐもぐ 中村憲子【季語＝兎（冬）】

デモすすむ恋人たちは落葉に佇ち 宮坂静生【季語＝落葉（冬）】

美しき時雨の虹に人を待つ 森田愛子【季語＝時雨（冬）】

弟へ恋と湯婆ゆづります 攝津幸彦【季語＝湯婆（冬）】

にんじんサラダわたし奥様ぢやないぞ 小川楓子【季語＝にんじん（冬）】

山椒の実噛み愛憎の身の細り 清水径子【季語＝山椒の実（秋）】

恋ふたつ レモンはうまく切れません 松本恭子【季語＝レモン（秋）】

あきざくら咽喉に穴あく情死かな 宇多喜代子【季語＝あきざくら（秋）】

赤い月にんげんしろき足そらす 富澤赤黄男【季語＝月（秋）】

泥棒の恋や月より吊る洋燈 大屋達治【季語＝月（秋）】

耳飾るをとこのしなや西鶴忌 山上樹実雄【季語＝西鶴忌（秋）】

昼の虫手紙はみんな恋に似て 細川加賀【季語＝昼の虫（秋）】

朝貌や惚れた女も二三日 夏目漱石【季語＝朝貌（秋）】

秋茄子の漬け色不倫めけるかな 岸田稚魚【季語＝秋茄子（秋）】

中年や遠くみのれる夜の桃 西東三鬼【季語＝桃（秋）】

太る妻よ派手な夏着は捨てちまへ ねじめ正也【季語＝夏着（夏）】

冷房とまる高階純愛の男女残し 金子兜太【季語＝冷房（夏）】

白衣とて胸に少しの香水を 坊城中子【季語＝香水（夏）】

きつかけはハンカチ借りしだけのこと 須佐薫子【季語＝ハンカチ（夏）】

わが恋人涼しチョークの粉がこぼれ 友岡子郷【季語＝涼し（夏）】

姦通よ夏木のそよぐ夕まぐれ 宇多喜代子【季語＝夏木（夏）】

水喧嘩恋のもつれも加はりて 相島虚吼【季語＝水喧嘩（夏）】

キャベツに刃花嫁衣裳は一度きり 山田径子【季語＝キャベツ（夏）】

さよならと梅雨の車窓に指で書く 長谷川素逝【季語＝梅雨（夏）】

夏帯にほのかな浮気心かな 吉屋信子【季語＝夏帯（夏）】

虎の尾を一本持つて恋人来 小林貴子【季語＝虎尾草（夏）】

いじめると陽炎となる妹よ　仁平勝【季語＝陽炎（春）】

寄り添うて眠るでもなき胡蝶かな　太祇【季語＝胡蝶（春）】

別々に拾ふタクシー花の雨　岡田史乃【季語＝花の雨（春）】

野遊のしばらく黙りゐる二人　涼野海音【季語＝野遊（春）】

逢ふたびのミモザの花の遠げむり　後藤比奈夫【季語＝ミモザ（春）】

走る走る修二会わが恋ふ御僧も　大石悦子【季語＝修二会（春）】

薄氷に書いた名を消し書く純愛　高澤晶子【季語＝薄氷（春）】

約束はいつも待つ側春隣　浅川芳直【季語＝春隣（冬）】

葉牡丹に恋が渦巻く金曜日　浜明史【季語＝葉牡丹（冬）】

さつま汁妻と故郷を異にして　右城暮石【季語＝さつま汁（冬）】

成人の日は恋人の恋人と　如月真菜【季語＝成人の日（新年）】

逢はざりしみじかさに松過ぎにけり　上田五千石【季語＝松過ぐ（新年）】

年惜しむ麻美・眞子・晶子・亜美・マユミ　北大路翼【季語＝年惜しむ（冬）】

ゆず湯の柚子つついて恋を今している　越智友亮【季語＝ゆず湯（冬）】

道逸れてゆきしは恋の狐火か　大野崇文【季語＝狐火（冬）】

わが子宮めくや枯野のヘリポート　柴田千晶【季語＝枯野（冬）】

冬麗や泣かれて抱けば腹突かれ　黒岩徳将【季語＝冬麗（冬）】

ひょんの笛ことばにしては愛逃ぐる　池冨芳子【季語＝ひょんの笛（秋）】

温め酒女友達なる我に　阪西敦子【季語＝温め酒（秋）】

冷やかに傷を舐め合ふ獣かな　澤田和弥【季語＝冷やか（秋）】

桐の実の側室ばかりつらなりぬ　峯尾文世【季語＝桐の実（秋）】

白芙蓉今日一日は恋人で　宮田朗風【季語＝芙蓉（秋）】

生涯の恋の数ほど曼珠沙華　大西泰世【季語＝曼珠沙華（秋）】

十六夜や間違ひ電話の声に惚れ　内田美紗【季語＝十六夜（秋）】

愛に安心なしコスモスの揺れどほし　長谷川秋子【季語＝コスモス（秋）】

緋のカンナ夜の女体とひらひらす　富永寒四郎【季語＝カンナ（秋）】

夏山に噂の恐き二人かな　倉田紘文【季語＝夏山（夏）】

これ以上愛せぬ水を打つてをり　日下野由季【季語＝水を打つ（夏）】

七夕や若く愚かに嗅ぎあへる　高山れおな【季語＝七夕（秋）】

宵山の装ひ解かず抱かれけり　角川春樹【季語＝宵山（夏）】

ぬばたまの夜やひと触れし髪洗ふ　坂本宮尾【季語＝髪洗ふ（夏）】

蛍火や飯盛女飯を盛る　山口青邨【季語＝蛍火（夏）】

あひふれしさみだれ傘の重かりし　中村汀女【季語＝五月雨（夏）】

恋人はめんどうな人さくらんぼ　畑耕一【季語＝さくらんぼ（夏）】

花いばら髪ふれあひてめざめあふ　小池文子【季語＝花いばら（夏）】

婚約とは二人で虹を見る約束　山口優夢【季語＝虹（夏）】

妻となる人五月の波に近づきぬ　田島健一【季語＝五月（夏）】

抱きしめてもらへぬ春の魚では　夏井いつき【季語＝春の魚（春）】

啜り泣く浅蜊のために灯を消せよ　磯貝碧蹄館【季語＝浅蜊（春）】

海市あり別れて匂ふ男あり　秦夕美【季語＝海市（春）】

エリックのばかばかばかと桜降る　太田うさぎ【季語＝桜（春）】

卒業す片恋少女鮮烈に　加藤楸邨【季語＝卒業（春）】

誰をおもひかくもやさしき雛の眉　加藤三七子【季語＝雛（春）】

海苔あぶる手もとも袖も美しき　瀧井孝作【季語＝海苔（春）】

鳥の恋いま白髪となる途中　鳥居真里子【季語＝鳥の恋（春）】

魚は氷に上るや恋の扉開く　青柳飛【季語＝魚氷に上る（春）】

寒いねと彼は煙草に火を点ける　正木ゆう子【季語＝寒い（冬）】

純愛や十字十字の冬木立　対馬康子【季語＝冬木立（冬）】

冬河原のつぴきならぬ恋ならめ　行方克巳【季語＝冬河原（冬）】

忽然と昭和をはりぬ夕霧忌　森竹須美子【季語＝夕霧忌（冬）】

恋にしてわざと敗けたるかるた哉　羅蘇山人【季語＝かるた（新年）】

クリスマス「君と結婚していたら」　堀井春一郎【季語＝クリスマス（冬）】

毛糸玉秘密を芯に巻かれけり　小澤克己【季語＝毛糸玉（冬）】

恋の刻急げ　アリスの兎もぐもぐもぐ　中村憲子【季語＝兎（冬）】

デモすすむ恋人たちは落葉に佇ち　宮坂静生【季語＝落葉（冬）】

美しき時雨の虹に人を待つ　森田愛子【季語＝時雨（冬）】

弟へ恋と湯婆ゆづります　攝津幸彦【季語＝湯婆（冬）】

にんじんサラダわたし奥様ぢやないぞ　小川楓子【季語＝にんじん（冬）】

山椒の実噛み愛憎の身の細り　清水径子【季語＝山椒の実（秋）】

恋ふたつ　レモンはうまく切れません　松本恭子【季語＝レモン（秋）】

あきざくら咽喉に穴あく情死かな　宇多喜代子【季語＝あきざくら（秋）】

赤い月にんげんしろき足そらす　富澤赤黄男【季語＝月（秋）】

泥棒の恋や月より吊る洋燈　大屋達治【季語＝月（秋）】

耳飾るをとこのしなや西鶴忌　山上樹実雄【季語＝西鶴忌（秋）】

昼の虫手紙はみんな恋に似て　細川加賀【季語＝昼の虫（秋）】

朝貌や惚れた女も二三日　夏目漱石【季語＝朝貌（秋）】

秋茄子の漬け色不倫めけるかな　岸田稚魚【季語＝秋茄子（秋）】

中年や遠くみのれる夜の桃　西東三鬼【季語＝桃（秋）】

太る妻よ派手な夏着は捨てちまへ　ねじめ正也【季語＝夏着（夏）】

冷房とまる高階純愛の男女残し　金子兜太【季語＝冷房（夏）】

白衣とて胸に少しの香水を　坊城中子【季語＝香水（夏）】

きつかけはハンカチ借りしだけのこと　須佐薫子【季語＝ハンカチ（夏）】

わが恋人涼しチョークの粉がこぼれ　友岡子郷【季語＝涼し（夏）】

姦通よ夏木のそよぐ夕まぐれ　宇多喜代子【季語＝夏木（夏）】

水喧嘩恋のもつれも加はりて　相島虚吼【季語＝水喧嘩（夏）】

キャベツに刃花嫁衣裳は一度きり　山田径子【季語＝キャベツ（夏）】

さよならと梅雨の車窓に指で書く　長谷川素逝【季語＝梅雨（夏）】

夏帯にほのかな浮気心かな　吉屋信子【季語＝夏帯（夏）】

虎の尾を一本持つて恋人来　小林貴子【季語＝虎尾草（夏）】

マグダラのマリア恋しや芥子の花　有馬朗人【季語＝芥子の花（夏）】