捩花の誤解ねぢれて空は青　細谷喨々【季語＝捩花（夏）】

2024.05.08
ハイクノミカタマンスリーゲスト

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捩花の誤解ねぢれて空は青

細谷喨々

予約していた居酒屋に、店から近いバス停の場所を聞こうと電話をして、会話を続けている途中で気づいた。

予約を入れた店じゃない別の店に電話をしていたのだ。

行く予定の店は、串揚げ半蔵（串揚げの店）

電話した店は、　串蔵（焼鳥屋）

似ているけれど違う。

頭の中で勝手に短縮してしまっていた。

気づいて、そしらぬ顔をして電話を切ったので、まあいいか。

別の日。

「１２時に予約していた杉山です」告げると、お店の人が戸惑った表情で「うちはランチの予約はしていないのですが…」と言われた。

私「あれ？確かにしたはずですが…」

「もしかして愛知県にうちと同じ名前のお店があるんですが、そちらにかけられたのでは？」

私「まさかあ～それは絶対ないです」

おかしいなあ…とブツブツ言いながら、ちょうど席が空いていたのでまあいいかと座った。

同行の友人は

「杉山さん、夢の中で予約したんじゃないん？」

と、これまた怖いことを言う。

別件の予約とごっちゃになって勘違いしたのかな？

スケジュール帳にはしっかりお店の名前と１２時予約と記しているのに。

まあいいか、すぐに座れたし。

パスタをいただいていると、１２時３０分ころ電話が鳴った。

着信の文字を見ると「一宮市」

ここには友人がいる。○○ちゃんどうかしたのかな？

「もしもし○○ですが」

と、先方が名乗られたのはこのお店と同じ名前。

オーマイﾂ！！やってもうた。

愛知県のお店にしっかり予約を入れていた。

もう平謝りに謝った。同行の友人はお腹を抱えて笑っている。

ちなみに今回間違ったお店の名前は

「キアッケラ」（イタリア語で「おしゃべり」という意味）

山口にあるお店の正式名称は

「オリーブオイル＆カフェ　キアッケラ」

愛知県にあるのは

「イタリア食堂　キアッケラ」

愛知県のキアッケラさん、本当にごめんなさい。

いつか「行かねばなるまい」と決意した。

捩花の誤解ねぢれて空は青　　　

ねぢれてしまった誤解とは厄介だが、誤解がねぢれたら、正解に戻っていたりして？

「空は青」と突き抜けてゆくところが愉快。私も大体いつもこんな感じ。

周囲に迷惑をかけつつ「空は青」。

ところで、「行かねばなるまい」と言えば、拙著『行かねばなるまい』まだまだ在庫あります。

（強引に宣伝）

（杉山久子）

【執筆者プロフィール】
杉山久子（すぎやま・ひさこ）
平成元年より作句。第２回芝不器男俳句新人賞受賞。句集『栞』他４冊。紀行文集『行かねばなるまい』。

早くから才能を発揮し、芝不器男俳句新人賞、山口県芸術文化振興奨励賞に続き、前作『泉』では第1回姨捨俳句大賞を受賞した著者。宇宙の中の一存在として詠み、しなやかで独創的な感性が煌めく注目の第四句集。

◆帯より

冬星につなぎとめたき小舟あり

過ぎてゆく日常に栞をはさむように句を作っているのかもしれないと、少し前から感じるようになった。
言葉にならないけれど言葉を取り巻くもの、言葉と言葉のあわいにあるものの輝きも、ともに受け取り、味わってゆきたい。（杉山久子）

1997年7月～1999年4月、
月刊俳句新聞『子規新報』に連載された
「お遍路は風まかせ」が書籍化！
（まだまだ在庫あります！！）

興味本位からスタートした
ドタバタ四国遍路紀行……

180ページの本書の下端両角には
表紙画も担当した流水彩子のパラパラ漫画付き。
装丁は律川エレキ。