ハイクノミカタ

主よ人は木の髄を切る寒い朝 成田千空【季語=寒い(冬)】


主よ人は木の髄を切る寒い

成田千空

『萬緑』創刊から7年後の昭和28年(1953・千空32歳)に、『萬緑』50号を記念して萬緑賞という結社賞が設けられ、その第一回を千空が受賞することになった。(創刊から7年後に50号というのはいささか変ではあるが、その話は私の6月25日のハイクノミカタ「鶏鳴の多さよ夏の旅一歩」での頁に掲載されている。)

下馬評では香西照雄氏などの草田男に近い実力派俳人が受賞することが有力視されていたが、それを覆しての受賞であった。そして、千空受賞の決定打となったのが、草田男の鶴の一声であった。

以下、千空受賞の際の草田男による千空への評価である。すでに将来の千空を見抜いているかのように、千空俳句の潜在的な要素を挙げている点には目を見張るものがある。

その際に掲載された35句は、萬緑賞受賞の前年に誌上に掲載された句から、改めて草田男が選をした句群である。いわゆる萬緑調と呼ばれるリズムや措辞のものも目立つのは、草田男の影響を一身に受けたためであろう。けれども、千空俳句たるモチーフやテーマが端々に色濃く詠まれており、この時点ですでに千空の希求するものが見て取れるのもおもしろい。

「独自の鋭敏な感応力を以て、自己の周囲の風物と生活との中に、わが魂に通ふ純潔と壮健との実相——時代の生活の肯定に値する基盤の相——を感得しては、それを弾力のある団塊のような作品に結実さしては提出しつづけてゐる。(その底に根ざすところの、東北人的、農民的な、むしろ本能的なものが、文学的教養を以て普遍化されてゐる有様を見のがしてはならない。)

現在のところでは、それらのさまざまの要素の間に、一応好ましい均斉がとれてゐることは事実である。又、この数年間、殆ど断続なしに精進の態度が執りつづけられ、近来又とみに好調であることも事実である。今回は、本誌の信頼に値する新人として、先づこの人を俳壇の前に顕彰し勇気づけることこそ適はしいのではないかとの結論に到達した次第である。

 再発表の三十五句は、氏の昨年の総作品六十句を私が再吟味してその中から、好ましきものを選抜したものである。」

仔馬に叶ふ腋四すみあり春を育つ

懸河一途鶺鴒の尾のきしみとぶ

萌えそめし草ぐるみ騒然馬力試し

堅雪行くや負傷の怖れ身を占めそむ

妻が病む夏俎板に微塵の疵

秒針に見入る病者に夜の霧

西瓜の丸み撫しつつ来けん友来たる

乳穂のめぐり足形(あがた)に満てり癒えたまへ

病ひよき妻ゆえ眩し青瓢

銀河一弦足立たぬ友を見舞はん

膝立てて臥す友冬の斧の音

何の分別稲掛忙裡口あけて

藁塚幾座厠に気張る声すなり

夏痩の顔より砂がこぼれたる

溝ありて浮草畜犬も夥し

秋海棠思はぬ会釈老婦より

馬が大事の雪垣ならめ雀群るる

寒托鉢戸開かずば去る(いさぎよ)

防雪林沖のごとくに(すさ)ぶ日ぞ

防雪林吾を待つ母のいまも貧し

笹鳴きや身を傾けて妻を看とる

いで発つや鳴る(から)車木の芽吹く

大雪や滅びゆくもの芸こまかし

雪帽子馬具屋に忘れ来しと思ふ

大頭大口昼の腑抜け鱈

どびろくに呆けたか玩具に蹴つまづく

壺焼芋(つぼやきいも)屋何か途方に暮れゐたる

機械は主軸油光りに揚雲雀

代田青む項根は髪のやはらかく

早苗括りて倦まず一書の来る待つ

接収の報頻りなる岩木山麓にて 五句

青菜種野伏(のぶく)の土の斯く深く

蟇の波紋かりそめならぬ砲音(つつおと)ぞも

蟇土色根こそぎ松の木が倒れ

並ぶ肥樽雲峰嶺に湧きつつあり

行方茫洋草穂に牛の毛深き眼

また、この受賞を受けての千空の感想も掲載されているが、そこでもなお、文学的志向の高さゆえの自身の未完成さに苦しむ千空が見てとれる。

「受賞といふことになると途惑ふ。

 この機会に来し方一年の作品に目を通したが、目を通すことにやはり忍耐を要した。自分の作品を読み返すとなると、どうして斯う穏やかでゐられないのか。作品をつくるとは、一つの認識行為に違ひないが、その過程を経た結果としての作品は一個のりんとした存在であらねばならぬといふ信条が、その通り決して満足に行ってゐないので参るのだらう。この次はどうしても、ちゃんとした作品を産み出さねばならぬと思ふ。

 去年から今年に亙って、僕の身辺は不思議なほど悪い事が続いた。このモンスーン地帯の悪気流め! 僕は生活のアン・バランスの中で、とにかく、めそめそしないことと、生きてゐる証拠を吾と吾が身に示すために俳句をつくった筈である。日常のエモーションは逃さず、一本一本、杭をぶち込む土方仕事をやらかさうと思った。結果は、満足な土方仕事も出来なかったが、それでもこれら無細工な杭たちのお陰で、曲りなりにもこの一年を堪え得たことは有難い。その意味では、これら無細工な杭たちと共にこんどの受賞をよろこんでいいのではないかと思ふ。

 いふまでもなく作品としては不満が多い。

 苦悩から発した作品を帳面に書いて、その苦悩が帳消しになるなんておかしい。

 作品は現実の反映に違ひないが、現実とべた付きのところから作品は腐るだらう。作品はナマの現実と次元を異にしたそれなりのリアリティに依って存在をつづけるに違ひない。アン・バランスの地点——エモーションの性質は、人間内容に関係があり、じたばたしても始まらぬが、曇りのない眼で社会を見つめ、おのれを見つめてゆきたい。

 これらをひっくるめて鉱物質の明るさを獲得出来ないものかと思ふ。」

  ☆

千空と草田男俳句との出逢いはいつであったのであろうか。

それは、千空が肺結核のため帰郷を余儀なくされた昭和16年(1941・千空20歳)にまでさかのぼる。

病床の折に俳句を始めてすぐの事であった。改造社の「俳句研究」に草田男の「青露変」の連作が載っており、そこで千空は初めて草田男の俳句で出会う。

 汝等老いたり虹に頭上げぬ山羊なるか

 人ひとり()の動きみてなぐさまんや

 謠きこえかげろふ来る夜決意成る

 鳴く蟬は海へ落つる日獨り負ひ

 向日葵の前よりの磴まだ尽きず

 向日葵やガード都の門をなす

 花に露十字架に露煌と掛かり

 正午の露消え行進曲鳴り響き

 審判の剣に置く露消えしがごと

 露消えし鏡に時世ありありと

 露に歎く童男童女の聲に帰り

 梅雨も人も葬りの寺もただよすが

 炎天の手の小竹(ささ)(しほ)る葉を巻きて

 青稲の碧羅の空も茅舎以後

 伏目の茅舎芭蕉葉面にあらはるる

 芋の葉の干たる撫で撫づ天馬いづこ

 紅白の供飯の睡蓮茅舎ねむれ

千空はその時の出逢いを、「ばくぜんと考えていた俳句とは違う、人間のなげきの声がひそんでいる、正直な句だと思いました。俳句としてのよさはよくわからないままに、句としておぼえてしまう不思議な句でした。リズミカルな語感に惹かれたのかもしれません」と語る。

その後は、高浜虚子の『進むべき俳句の道』、大野林火の『現代の秀句』などを読み、現代俳句の担い手たちの作品鑑賞とその作家論を読み漁り、現代俳句の豊饒な世界に魅入られていったという。

そしてそれでもなお、草田男俳句に特段の魅力を感じ、生きる力を与えられるような、強い意志が詩として生み出された句、いわば人生や文学の本質を探究する句にのめり込んでいった。

  ☆

私は、11月8日のハイクノミカタで、千空の文学世界を探るうえでの重要な局面として、「東北という精神風土」「中村草田男の文学世界」「戦後を生きるべきいのちの肯定といのちの恢癒」の三つを挙げたが、二つ目の「中村草田男の文学世界」として草田男から千空へと貫くものは何であったのだろうか。

 それは「文学としての俳句の向上」という事に他ならない。

 千空は『萬緑』600号の記念特集での鼎談にて、草田男における文学の話題になると、「草田男の文学はなんであったのか。伝統的な俳句の風流の世界をもうひとつ文学として価値の高い段階に押し上げる。それが草田男先生の俳句のエネルギーの根本になっているわけです。その場合文学が出てくる。俳句が他の文学と対等に位置されるもので、狭い世界に閉じこもっているものではなくて、対等の位置に向上させるものなのです。芭蕉は新しさを花とすべしと言って、新しいことが俳句の目標であると言っていますが、草田男先生は新しいという言葉をあまり使っていない。向上という言葉を使っています。全体として向上しようという方向に活路を求める。」

 「文学の根本は刃物研ぎのこつのようなものです。自分の世界を自己実現していくことです。今の俳壇は軽いです。飯田蛇笏は、俳句は右手ではなくて、左手でするものだと言ったそうですが、そんなに甘っちょろいものではない。草田男先生は、本業も俳句も右手でした。文学としての俳句とは真剣な生き方と句作がひとつということなのです。」と語っている。

 また、千空は草田男本人に対して、草田男を俳人としてではなく、文学者として見ており、俳句をしている人というよりも、文学をしている人として見ているのであって、ある意味では、俳人として見ていないという事を直接話したというエピソードがある。

 それだけ千空にとって、草田男俳句はただの芸にとどまらない、文学としての普遍性・絶対性を見出すべきものであった。そして、その根本には、草田男の「『個』と『全』」という教えが根付いている。

 草田男は昭和33年2月の「俳句」誌上において、「個人と自己」という文章を発表した。その中で草田男は、「芸と文学」「多元の統一」「二重性の世界」「第三存在」といった草田男の俳句論による主要な用語を挙げ、それらすべてが「特殊(個)」と「普遍(全)」との渾然とした同時達成の念願を表明したものであるとしている。

 草田男は同文章中に、以前「現代に於いては、一切を『変転してゆく過程』として認識し、それに適合するものとしての自己の働きを達成しようとする以外に自己の本分はない筈であり、かかる過程としての時代の一端に身を置いて、専門家として全体の機構の必然的な進展成就に奉仕しようとする以外に生きる途はない筈である」と言明したことを踏まえて、「私は『個』と『全』との合一達成の必要を俳句実作の上に唱えたこともある。『個』であるものが、同時に『全』であり得たとき、否、少なくともあり得ようとしたとき、その『個人』は、もはや単なる『個人』ではなくして、厳密な意味に於いては、過程と機構との必然性に奥深く結びつこうと念願し、対処するところの『自己』である。しかも私には、現象の背後に『絶対』を追求しないものは、現象の科学的説明を越えての機構の本質そのものを理解することはできず、過程の彼方に『絶対』を希求しないものは、政治的必要を越えての過程の本質を把握することはできないとしか考えられない。」と語り、その「個人」と「自己」の普遍性との関係に際して、「『個』に忠実でありつつも、同時に『絶対』を追求するものは、必然的に『全』をも亦オノレの上に負荷せずには居られない。」「『個人』としての私が、飽くまでもその個人に結びついた性質のものとしての範囲内で、我妻が可愛い、我子が可愛い、我友が親しい、我亡母が恋しいと詠ったとしたら、これくらい滑稽なことはない。どこからか直ちに、シッペイ返しが返ってくるだろう。『得意そうに怒鳴るな。お前だけにではない、誰にだって、妻は可愛く、子供は可愛い……。』しかしながら、このシッペイ返しの言葉の中に、おのずから私への祝福がふくまれている。誰にだって可愛い妻と、誰にだって可愛い子供とを、私の個人の実感に躍りつつもその妻子の可愛さの普遍性にまで詠いあげたいというのが、私の念願なのである」。「個人とその場が万事の根源である。しかし、『個人』が『個人』の特殊に終わって、『自己』の普遍にまで純化され充実されていないとき、一切は、それこそ、単なる個人の空疎悲劇か、若しくは浮誇の喜劇以上の何物でもない。作者としての単なる『個人』そのものなどに、どれほどの意味と価値とがあろう。『個人』をとおして活かされる『人間性』そのものにこそ、意味と価値とがかかっている」と結論づけている。

 つまりは、草田男による「特殊(個)」と「普遍(全)」の合一への希求という教えそのものが、いわゆる「風土のエスプリ」と言われるいわば風土という特殊性を普遍的なものへと止揚した千空俳句の精神そのものに他ならない。そして、千空俳句の精神を育んだ母胎の一つにこそ草田男主宰の『萬緑』があったのである。

 岩木嶺は大きく手毬唄やさし

 並ぶ肥樽(たご)峰雲嶺に湧きつつあり

 防雪林()を待つ母のいまも貧し

 おけら短命到る処に燈がついて

 馬の市酔ひどれ哀歌くりかへす

 野は北へ牛ほどの藁焼き焦がし

 混沌の夜の底ぢから佞武多引く

 大寒の鉦かんかんと野は平ら

 第一句集『地霊』に収められている句のどれもが、東北や津軽といったただの風土に限定しない普遍性を具えており、肉体的とも言える情念がそこには産み出されている。

  ☆

 そんな中、掲句は草田男の精神ならびに萬緑の精神の影響を多分に受けた句である。上五の「主よ」という言葉は明らかに、聖書や詩篇などに頻出し、弥撒では盛んに唱えられる「kyrie,eleison(主よ憐み給え)」という祈りにおいての「主よ」であり、その中でも掲句は、「Domine,exaudi orationem meum(主よ我が祈りを聞き入れ給へ)」というフレーズが念頭に置かれているであろう。

千空俳句といえば、「三界に寒紅梅の花の家」「百万遍数珠を廻せば花咲くや」「雀らに水の円光夏来たる」「ししうどや金剛不壊の嶺のかず」といった仏語を用いた句は多数あるが、掲句のようなキリスト教用語を用いた句はほとんど存在しない。また、この句が詠まれた頃、草田男俳句を探求する上で千空はマタイを読んでいたという事もあり、掲句の発想の原点として、草田男俳句におけるキリスト教的かつ西洋文学的思想の影響があることは間違いない。

それでは、掲句に依る射祷の対象とは何であったのか。

横澤放川氏は、掲句に於いては、『萬緑』昭和22年2・3月合併号の雑詠欄巻頭句である「あせるまじ冬木を切れば芯の紅」という香西照雄氏の句にも大きな影響を受けたとしている。

 照雄氏の句は、氏が30歳で復員した時の句であり、同じ巻頭には「裸木(らぼく)に風地には苗菜のひしめける」「掌につかめるほどの冬菜の茎」「新藁よりやや白き鶏朝駈けて」「月覗き吾子も交りて厨せはし」といった生活の喜びと共に平和への祈りが籠められた句が収められている。

 掲句も、照雄氏の句に対するいわば返答句としての役目を果たしており、「主よ」という射祷の裡にはやはり、戦争を経験した者による平和への祈りが籠められているであろう。人間は絶えず何かに祈り、何かを希望する。しかしそれでもなお、人は生活のために営々と寒空の下で木の髄を切らなければならない。そういった一見矛盾するような人間の営みの上に、我々人間は「生きかはり死にかはり」して生きていかなければならないのである。そのような人間としての普遍性を明らかに千空は俳句を文学として希求しているのである。

北杜駿


【執筆者プロフィール】
北杜駿(ほくと・しゅん)
1989年生まれ。千葉県出身。現在は山梨県在住。2019年「森の座」入会、横澤放川に師事。2022年星野立子新人賞受賞。2023年森の座新人賞受賞。「森の座」同人。
Email: shun.hokuto@outlook.com


2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓



【2023年10・11月の火曜日☆西生ゆかりのバックナンバー】
>>〔1〕猫と狆と狆が椎茸ふみあらす 島津亮
>>〔2〕赤福のたひらなへらもあたたかし 杉山久子
>>〔3〕五つずつ配れば四つ余る梨 箱森裕美
>>〔4〕湯の中にパスタのひらく花曇 森賀まり
>>〔5〕しやぼんだま死後は鏡の無き世界 佐々木啄実
>>〔6〕待春やうどんに絡む卵の黄 杉山久子
>>〔7〕もし呼んでよいなら桐の花を呼ぶ 高梨章
>>〔8〕或るときのたつた一つの干葡萄 阿部青鞋

【2023年11月・12月の水曜日☆北杜駿のバックナンバー】
>>〔9〕静臥ただ落葉降りつぐ音ばかり 成田千空
>>〔10〕綿虫や母あるかぎり死は難し 成田千空

【2023年10・11月の木曜日☆野名紅里のバックナンバー】
>>〔1〕黒岩さんと呼べば秋気のひとしきり 歌代美遥
>>〔2〕ロボットの手を拭いてやる秋灯下 杉山久子
>>〔3〕秋・紅茶・鳥はきよとんと幸福に 上田信治
>>〔4〕秋うらら他人が見てゐて樹が抱けぬ 小池康生
>>〔5〕縄跳をもつて大縄跳へ入る 小鳥遊五月
>>〔6〕裸木となりても鳥を匿へり 岡田由季
>>〔7〕水吸うて新聞あをし花八ツ手 森賀まり

【2023年9・10月の水曜日☆伊藤幹哲のバックナンバー】
>>〔1〕暮るるほど湖みえてくる白露かな 根岸善雄
>>〔2〕雨だれを聴きて信濃の濁り酒 德田千鶴子
>>〔3〕雨聴いて一つ灯に寄る今宵かな 村上鬼城
>>〔4〕旅いつも雲に抜かれて大花野  岩田奎
>>〔5〕背広よりニットに移す赤い羽根 野中亮介
>>〔6〕秋草の揺れの移れる体かな 涼野海音
>>〔7〕横顔は子規に若くなしラフランス 広渡敬雄
>>〔8〕萩にふり芒にそそぐ雨とこそ 久保田万太郎

【2023年8・9月の火曜日☆吉田哲二のバックナンバー】
>>〔1〕中干しの稲に力を雲の峰   本宮哲郎
>>〔2〕裸子の尻の青あざまてまてまて 小島健
>>〔3〕起座し得て爽涼の風背を渡る 肥田埜勝美
>>〔4〕鵙の朝肋あはれにかき抱く  石田波郷
>>〔5〕たべ飽きてとんとん歩く鴉の子 高野素十
>>〔6〕葛咲くや嬬恋村の字いくつ  石田波郷
>>〔7〕秋風や眼中のもの皆俳句 高浜虚子
>>〔8〕なきがらや秋風かよふ鼻の穴 飯田蛇笏
>>〔9〕百方に借あるごとし秋の暮 石塚友二

【2023年8月の木曜日☆宮本佳世乃のバックナンバー】
>>〔1〕妹は滝の扉を恣       小山玄紀
>>〔2〕すきとおるそこは太鼓をたたいてとおる 阿部完市
>>〔3〕葛の花来るなと言つたではないか 飯島晴子
>>〔4〕さういへばもう秋か風吹きにけり 今井杏太郎
>>〔5〕夏が淋しいジャングルジムを揺らす 五十嵐秀彦
>>〔6〕蟷螂にコップ被せて閉じ込むる 藤田哲史
>>〔7〕菊食うて夜といふなめらかな川 飯田晴
>>〔8〕片足はみづうみに立ち秋の人 藤本夕衣
>>〔9〕逢いたいと書いてはならぬ月と書く 池田澄子

【2023年7月の火曜日☆北杜駿のバックナンバー】

>>〔5〕「我が毒」ひとが薄めて名薬梅雨永し 中村草田男
>>〔6〕白夜の忠犬百骸挙げて石に近み 中村草田男
>>〔7〕折々己れにおどろく噴水時の中 中村草田男
>>〔8〕めぐりあひやその虹七色七代まで 中村草田男

【2023年7月の水曜日☆小滝肇のバックナンバー】

>>〔5〕数と俳句(一)
>>〔6〕数と俳句(二)
>>〔7〕数と俳句(三)
>>〔8〕数と俳句(四)

【2023年7月の木曜日☆近江文代のバックナンバー】

>>〔10〕来たことも見たこともなき宇都宮 筑紫磐井
>>〔11〕「月光」旅館/開けても開けてもドアがある 高柳重信
>>〔12〕コンビニの枇杷って輪郭だけ 原ゆき
>>〔13〕南浦和のダリヤを仮のあはれとす 摂津幸彦

【2023年6月の火曜日☆北杜駿のバックナンバー】

>>〔1〕田を植ゑるしづかな音へ出でにけり 中村草田男
>>〔2〕妻のみ恋し紅き蟹などを歎かめや  中村草田男
>>〔3〕虹の後さづけられたる旅へ発つ   中村草田男
>>〔4〕鶏鳴の多さよ夏の旅一歩      中村草田男

【2023年6月の水曜日☆古川朋子のバックナンバー】

>>〔6〕妹の手をとり水の香の方へ 小山玄紀
>>〔7〕金魚屋が路地を素通りしてゆきぬ 菖蒲あや
>>〔8〕白い部屋メロンのありてその匂ひ 上田信治
>>〔9〕夕凪を櫂ゆくバター塗るごとく 堀本裕樹

【2023年5月の火曜日☆千野千佳のバックナンバー】

>>〔5〕皮むけばバナナしりりと音すなり 犬星星人
>>〔6〕煮し蕗の透きとほりたり茎の虚  小澤實
>>〔7〕手の甲に子かまきりをり吹きて逃す 土屋幸代
>>〔8〕いつまでも死なぬ金魚と思ひしが 西村麒麟
>>〔9〕夏蝶の口くくくくと蜜に震ふ  堀本裕樹

【2023年5月の水曜日☆古川朋子のバックナンバー】

>>〔1〕遠き屋根に日のあたる春惜しみけり 久保田万太郎
>>〔2〕電車いままつしぐらなり桐の花 星野立子
>>〔3〕葉桜の頃の電車は突つ走る 波多野爽波
>>〔4〕薫風や今メンバー紹介のとこ 佐藤智子
>>〔5〕ハフハフと泳ぎだす蛭ぼく音痴 池禎章

【2023年4月の火曜日☆千野千佳のバックナンバー】

>>〔1〕春風にこぼれて赤し歯磨粉  正岡子規
>>〔2〕菜の花や部屋一室のラジオ局 相子智恵
>>〔3〕生きのよき魚つめたし花蘇芳 津川絵理子
>>〔4〕遠足や眠る先生はじめて見る 斉藤志歩

【2023年4月の水曜日☆山口遼也のバックナンバー】

>>〔6〕赤福の餡べつとりと山雪解 波多野爽波
>>〔7〕眼前にある花の句とその花と 田中裕明
>>〔8〕対岸の比良や比叡や麦青む 対中いずみ
>>〔9〕美しきものに火種と蝶の息 宇佐美魚目

【2023年3月の火曜日☆三倉十月のバックナンバー】

>>〔1〕窓眩し土を知らざるヒヤシンス 神野紗希
>>〔2〕家濡れて重たくなりぬ花辛夷  森賀まり
>>〔3〕菜の花月夜ですよネコが死ぬ夜ですよ 金原まさ子
>>〔4〕不健全図書を世に出しあたたかし 松本てふこ【←三倉十月さんの自選10句付】

【2023年3月の水曜日☆山口遼也のバックナンバー】

>>〔1〕鳥の巣に鳥が入つてゆくところ 波多野爽波
>>〔2〕砂浜の無数の笑窪鳥交る    鍵和田秞子
>>〔3〕大根の花まで飛んでありし下駄 波多野爽波
>>〔4〕カードキー旅寝の春の灯をともす トオイダイスケ
>>〔5〕桜貝長き翼の海の星      波多野爽波

【2023年2月の火曜日☆鈴木総史のバックナンバー】

>>〔6〕立春の零下二十度の吐息   三品吏紀
>>〔7〕背広来る来るジンギスカンを食べに来る 橋本喜夫
>>〔8〕北寄貝桶ゆすぶつて見せにけり 平川靖子
>>〔9〕地吹雪や蝦夷はからくれなゐの島 櫂未知子

【2023年2月の水曜日☆楠本奇蹄のバックナンバー】

>>〔1〕うらみつらみつらつら椿柵の向う 山岸由佳
>>〔2〕忘れゆくはやさで淡雪が乾く   佐々木紺
>>〔3〕雪虫のそつとくらがりそつと口笛 中嶋憲武
>>〔4〕さくら餅たちまち人に戻りけり  渋川京子

【2023年1月の火曜日☆鈴木総史のバックナンバー】

>>〔1〕年迎ふ父に胆石できたまま   島崎寛永
>>〔2〕初燈明背にあかつきの雪の音 髙橋千草
>>〔3〕蝦夷に生まれ金木犀の香を知らず 青山酔鳴
>>〔4〕流氷が繋ぐ北方領土かな   大槻独舟
>>〔5〕湖をこつんとのこし山眠る 松王かをり

【2023年1月の水曜日☆岡田由季のバックナンバー】

>>〔1〕さしあたり坐つてゐるか鵆見て 飯島晴子
>>〔2〕潜り際毬と見えたり鳰     中田剛
>>〔3〕笹鳴きに覚めて朝とも日暮れとも 中村苑子
>>〔4〕血を分けし者の寝息と梟と   遠藤由樹子

【2022年11・12月の火曜日☆赤松佑紀のバックナンバー】

>>〔1〕氷上と氷中同じ木のたましひ 板倉ケンタ
>>〔2〕凍港や旧露の街はありとのみ 山口誓子
>>〔3〕境内のぬかるみ神の発ちしあと 八染藍子
>>〔4〕舌荒れてをり猟銃に油差す 小澤實
>>〔5〕義士の日や途方に暮れて人の中 日原傳
>>〔6〕枯野ゆく最も遠き灯に魅かれ 鷹羽狩行
>>〔7〕胸の炎のボレロは雪をもて消さむ 文挾夫佐恵
>>〔8〕オルゴールめく牧舎にも聖夜の灯 鷹羽狩行
>>〔9〕去年今年詩累々とありにけり  竹下陶子

【2022年11・12月の水曜日☆近江文代のバックナンバー】

>>〔1〕泣きながら白鳥打てば雪がふる 松下カロ
>>〔2〕牡蠣フライ女の腹にて爆発する 大畑等
>>〔3〕誕生日の切符も自動改札に飲まれる 岡田幸生
>>〔4〕雪が降る千人針をご存じか 堀之内千代
>>〔5〕トローチのすつと消えすつと冬の滝 中嶋憲武
>>〔6〕鱶のあらい皿を洗えば皿は海 谷さやん
>>〔7〕橇にゐる母のざらざらしてきたる 宮本佳世乃
>>〔8〕セーターを脱いだかたちがすでに負け 岡野泰輔
>>〔9〕動かない方も温められている   芳賀博子

【2022年10月の火曜日☆太田うさぎ(復活!)のバックナンバー】

>>〔92〕老僧の忘れかけたる茸の城 小林衹郊
>>〔93〕輝きてビラ秋空にまだ高し  西澤春雪
>>〔94〕懐石の芋の葉にのり衣被    平林春子
>>〔95〕ひよんの実や昨日と違ふ風を見て   高橋安芸

【2022年9月の水曜日☆田口茉於のバックナンバー】

>>〔5〕運動会静かな廊下歩きをり  岡田由季
>>〔6〕後の月瑞穂の国の夜なりけり 村上鬼城
>>〔7〕秋冷やチーズに皮膚のやうなもの 小野あらた
>>〔8〕逢えぬなら思いぬ草紅葉にしゃがみ 池田澄子

【2022年9月の火曜日☆岡野泰輔のバックナンバー】

>>〔1〕帰るかな現金を白桃にして    原ゆき
>>〔2〕ビル、がく、ずれて、ゆくな、ん、てきれ、いき、れ なかはられいこ
>>〔3〕サフランもつて迅い太子についてゆく 飯島晴子
>>〔4〕琴墜ちてくる秋天をくらりくらり  金原まさ子

【2022年9月の水曜日☆田口茉於のバックナンバー】

>>〔1〕九月来る鏡の中の無音の樹   津川絵理子
>>〔2〕雨月なり後部座席に人眠らせ    榮猿丸
>>〔3〕秋思かがやくストローを嚙みながら 小川楓子
>>〔4〕いちじくを食べた子供の匂ひとか  鴇田智哉

【2022年6月の火曜日☆杉原祐之のバックナンバー】

>>〔1〕仔馬にも少し荷を付け時鳥    橋本鶏二
>>〔2〕ほととぎす孝君零君ききたまへ  京極杞陽
>>〔3〕いちまいの水田になりて暮れのこり 長谷川素逝
>>〔4〕雲の峰ぬつと東京駅の上     鈴木花蓑

【2022年6月の水曜日☆松野苑子のバックナンバー】

>>〔1〕でで虫の繰り出す肉に後れをとる 飯島晴子
>>〔2〕襖しめて空蟬を吹きくらすかな  飯島晴子
>>〔3〕螢とび疑ひぶかき親の箸     飯島晴子
>>〔4〕十薬の蕊高くわが荒野なり    飯島晴子
>>〔5〕丹田に力を入れて浮いて来い   飯島晴子

【2022年5月の火曜日☆沼尾將之のバックナンバー】

>>〔1〕田螺容れるほどに洗面器が古りし 加倉井秋を
>>〔2〕桐咲ける景色にいつも沼を感ず  加倉井秋を
>>〔3〕葉桜の夜へ手を出すための窓   加倉井秋を
>>〔4〕新綠を描くみどりをまぜてゐる  加倉井秋を
>>〔5〕美校生として征く額の花咲きぬ  加倉井秋を

【2022年5月の水曜日☆木田智美のバックナンバー】

>>〔1〕きりんの子かゞやく草を喰む五月  杉山久子
>>〔2〕甘き花呑みて緋鯉となりしかな   坊城俊樹
>>〔3〕ジェラートを売る青年の空腹よ   安里琉太
>>〔4〕いちごジャム塗れとおもちゃの剣で脅す 神野紗希

【2022年4月の火曜日☆九堂夜想のバックナンバー】

>>〔1〕回廊をのむ回廊のアヴェ・マリア  豊口陽子
>>〔2〕未生以前の石笛までも刎ねる    小野初江
>>〔3〕水鳥の和音に還る手毬唄      吉村毬子
>>〔4〕星老いる日の大蛤を生みぬ     三枝桂子

【2022年4月の水曜日☆大西朋のバックナンバー】

>>〔1〕大利根にほどけそめたる春の雲   安東次男
>>〔2〕回廊をのむ回廊のアヴェ・マリア  豊口陽子
>>〔3〕田に人のゐるやすらぎに春の雲  宇佐美魚目
>>〔4〕鶯や米原の町濡れやすく     加藤喜代子

【2022年3月の火曜日☆松尾清隆のバックナンバー】

>>〔1〕死はいやぞ其きさらぎの二日灸   正岡子規
>>〔2〕菜の花やはつとあかるき町はつれ  正岡子規
>>〔3〕春や昔十五万石の城下哉      正岡子規
>>〔4〕蛤の吐いたやうなる港かな     正岡子規
>>〔5〕おとつさんこんなに花がちつてるよ 正岡子規

【2022年3月の水曜日☆藤本智子のバックナンバー】

>>〔1〕蝌蚪乱れ一大交響楽おこる    野見山朱鳥
>>〔2〕廃墟春日首なきイエス胴なき使徒 野見山朱鳥
>>〔3〕春天の塔上翼なき人等      野見山朱鳥
>>〔4〕春星や言葉の棘はぬけがたし   野見山朱鳥
>>〔5〕春愁は人なき都会魚なき海    野見山朱鳥

【2022年2月の火曜日☆永山智郎のバックナンバー】

>>〔1〕年玉受く何も握れぬ手でありしが  髙柳克弘
>>〔2〕復讐の馬乗りの僕嗤っていた    福田若之
>>〔3〕片蔭の死角から攻め落としけり   兒玉鈴音
>>〔4〕おそろしき一直線の彼方かな     畠山弘

【2022年2月の水曜日☆内村恭子のバックナンバー】

>>〔1〕琅玕や一月沼の横たはり      石田波郷
>>〔2〕ミシン台並びやすめり針供養    石田波郷
>>〔3〕ひざにゐて猫涅槃図に間に合はず  有馬朗人
>>〔4〕仕る手に笛もなし古雛      松本たかし

【2022年1月の火曜日☆菅敦のバックナンバー】

>>〔1〕賀の客の若きあぐらはよかりけり 能村登四郎
>>〔2〕血を血で洗ふ絨毯の吸へる血は   中原道夫
>>〔3〕鉄瓶の音こそ佳けれ雪催      潮田幸司
>>〔4〕嗚呼これは温室独特の匂ひ      田口武

【2022年1月の水曜日☆吉田林檎のバックナンバー】

>>〔1〕水底に届かぬ雪の白さかな    蜂谷一人
>>〔2〕嚔して酒のあらかたこぼれたる  岸本葉子
>>〔3〕呼吸するごとく雪降るヘルシンキ 細谷喨々
>>〔4〕胎動に覚め金色の冬林檎     神野紗希

【2021年12月の火曜日☆小滝肇のバックナンバー】

>>〔1〕柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺    正岡子規
>>〔2〕内装がしばらく見えて昼の火事   岡野泰輔
>>〔3〕なだらかな坂数へ日のとある日の 太田うさぎ
>>〔4〕共にゐてさみしき獣初しぐれ   中町とおと

【2021年12月の水曜日☆川原風人のバックナンバー】

>>〔1〕綿入が似合う淋しいけど似合う    大庭紫逢
>>〔2〕枯葉言ふ「最期とは軽いこの音さ」   林翔
>>〔3〕鏡台や猟銃音の湖心より      藺草慶子
>>〔4〕みな聖樹に吊られてをりぬ羽持てど 堀田季何
>>〔5〕ともかくもくはへし煙草懐手    木下夕爾

【2021年11月の火曜日☆望月清彦のバックナンバー】

>>〔1〕海くれて鴨のこゑほのかに白し      芭蕉
>>〔2〕木枯やたけにかくれてしづまりぬ    芭蕉
>>〔3〕葱白く洗ひたてたるさむさ哉      芭蕉
>>〔4〕埋火もきゆやなみだの烹る音      芭蕉
>>〔5-1〕蝶落ちて大音響の結氷期  富沢赤黄男【前編】
>>〔5-2〕蝶落ちて大音響の結氷期  富沢赤黄男【後編】

【2021年11月の水曜日☆町田無鹿のバックナンバー】

>>〔1〕秋灯机の上の幾山河        吉屋信子
>>〔2〕息ながきパイプオルガン底冷えす 津川絵理子
>>〔3〕後輩の女おでんに泣きじゃくる  加藤又三郎
>>〔4〕未婚一生洗ひし足袋の合掌す    寺田京子

【2021年10月の火曜日☆千々和恵美子のバックナンバー】

>>〔1〕橡の実のつぶて颪や豊前坊     杉田久女
>>〔2〕鶴の来るために大空あけて待つ  後藤比奈夫
>>〔3〕どつさりと菊着せられて切腹す   仙田洋子
>>〔4〕藁の栓してみちのくの濁酒     山口青邨

【2021年10月の水曜日☆小田島渚のバックナンバー】

>>〔1〕秋の川真白な石を拾ひけり   夏目漱石
>>〔2〕稻光 碎カレシモノ ヒシメキアイ 富澤赤黄男
>>〔3〕嵐の埠頭蹴る油にもまみれ針なき時計 赤尾兜子
>>〔4〕野分吾が鼻孔を出でて遊ぶかな   永田耕衣


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