ハイクノミカタ

数と俳句(四)/小滝肇


数と俳句(四))

小滝肇

午後三時異空間めくビアホール  今井肖子

昼ビール・・・なんという甘美な響き。夏の焼けるような暑さの日、ランチタイムの格安オプションのビールがメニュー看板にあると、どんな聖人君子でもその誘惑から免れるのは容易なことではない。しかしながら勤務に忙殺されている同僚の顔が浮かんだりして、「いかんいかん」とか言いながら、お水で耐えた経験のない人はいないのではないか。え、耐える必要ない?―おかしいなあ。とにかくまだ仕事の終わってない時間にビールを飲むのは、背徳の世界に足を踏み入れ悪魔に魂を売る行為とみなされてしまうのがこの国の常で、その罪深さは突然背後から「お前今昼ビール頼んだろ、逮捕する」とか言われても不思議のないくらいだ。ましてや冒頭の句、午後三時。昼ビールですらない。しかもビアホール、確信犯だ。よく捕まらなかったものだ。昼下がりの、日本中が働いてる時間に酒のお店を開けてる方も悪いといえば悪いが、まさかそこに入るとは。そうするとどうだろう、まばらながら客らしき人がいる。きっと昼に来た客がまだ残って喋って楽しんでるのだろう。自分の事は置いておいて、とりあえず「なんて奴らだ」と侮蔑の視線をそれらのテーブルに送る。しかしその時、同じ視線が自分にも送られていることに気が付く。店の人がこの時間帯に隅っこの方で素早く賄い食をとろうとしているが、新たな客の登場にそそくさと席を立ち、「いらっしゃいませ」と目一杯の作り笑顔で出迎える。しかし目元は笑ってはいない。「こんな時間に入ってくるんだ」みたいな、まるで「珍しいものが見れた」、と言わんばかりの目線。

「お好きな席へどうぞ」そりゃそうだろう、こんなに空いているんだから。ぶつぶつ頭の中でつぶやきながら、ど真ん中のテーブルに着く。「ここはウインナーソーセージとザワークラウトが有名なんだよ」とここに入ろうと言い出した同席者は店の人や他の客の様子に気に止めることもなく、穏やかに蘊蓄を授け始める。ここの壁や柱や装飾品は創業時の意匠そのままだとか、あそこの木製のおおきなビヤ樽はここの名物なのだとか、初代は日本でも有名なビール継ぎの名人だったとか。しかし作者の耳には少しも響いてこない。このとてつもない恥ずかしい思いからはやく逃れたい。そして何事もなかったかのように通りを涼しい顔で歩きたい。そんな思いでいっぱいなのだが、でもビールは飲みたい。うん、やはり飲みたい。がら空きでもテーブルとテーブルの間は狭い。そこをビールを片手に抱えて店の人がすいすい練り歩き、作者たちの処に辿り着く。なにするというのでもなく、惰性の乾杯をかわし、ついに背徳の飲み物を口にする。

旨い、旨すぎる。外が暑かったから尚更だ。きっと今まっとうに働いているに違いない友人たちの顔が目に浮かぶ。「すいません、みんなビールが悪いんです」と意味不明の言葉を小声で復唱する。

支払いを終え、店を出てもまだ心臓の鼓動が速いままだ。店の前を速足で離れ、そこからは努めて何事もなかったかのように、いつもよりゆっくりと歩く。それでもきょろきょろ首を動かす。「店を出るところを誰かがみてなかったか」「官憲関係者に尾行されてないか」「店の人たちは口が軽かったりしないか」「やっぱりやめておけばよかった、、、。でも美味しかったー」背徳はビールの味を五割増しにして、作者の記憶の襞に刻まれる。

以上はあくまで筆者の妄想であるので、関係各位には慈悲の心を以て許容していただきたい処だが、こんなに妄想が広がるのも上五の「午後三時」のせいなのは言うまでもない。午後二時ではまだ昼の感じが残るし、午後四時だと繁忙の夕刻に寄り過ぎている。もっとも客が来てはいけない時間はこの午後三時あたりであり、見てはいけないビアホールらしくないあからさまな閑散の世界を、客は目の当たりにすることになる。異空間とは日常的でない空間のことで、店舗デザインでは来店者の脳をオンからオフモードに切り替えるのが容易となるようそのように設計することも多い。しかし作者はそれを言っているのではなさそうだ。「らしくない」のだ。たくさんのテーブルを満たす客、その背をうねるホールスタッフ、何重奏にも聞こえてくる周囲の声・声・声、、、。「ビアホールってそうでしょ」と思ったすべてがここにはなく、本来の喧騒はすっかり閑散に置き換えられてしまっている。中七で「異空間めく」、と言ったのはそれを感じたからではないか、とまずは思う。予想を狂わせた空間はマイナスに働くと大いに居心地の悪さを伴うものだから。しかしそう単純でもない。ただ空いているだけなら客としてはラッキーというほかはない。しかし前段の妄想話に書いたように誠実無比な働き者文化の中に育った日本人としては、誰もが仕事に精を出しているであろう時間に酒を口にすることが「うしろめたい」。本人がそれほど意識しなくてもDNAがその感覚を与える。真空を走る光の速度以外、一定と言えるもののほぼ見当たらないこの世界では、空間がごく相対的なものであることを踏まえると、感覚が容易にそれを歪めてしまうのは、ムンクやダリでなくとも現代絵画にも多く示されている通りだ。「うしろめたさ」に歪められたビアホールーなんとも独創的な作者のデッサンが、ここには見て取れるではないか。

ちなみに作者は、数学に苦手意識のある方と筆者を含めた何人かで雑談してた時、私が「数学は言語のひとつと理解してるし、それ自体文学だと認識してます」とか言ったとき「数学は哲学です」とぴしゃりと仰られた猛者(失礼!)です。恐れ入りました。

以上、七月の四週に渡って書かせていただいた「数と俳句」のシリーズもこれにて校了です。お読みいただいた皆様ありがとうございました。近詠十句は今回はタイトルに合わせて拙句ながら数詞を用いた句を。

小滝肇


【近詠10句】

薺粥空気に色のある一日

春寒の五線譜に置く四分音符

六月のシーラカンスの海の鬱

天蕎麦の天に稚鮎の二尾三尾

葛餅や愛は百円では売らぬ

七色の戦士に会うよ夏休み

手花火や大きな闇の中の二人

味玉は二つ空浮く月ひとつ

万力で締める十一月の虚

本当に一人で過ごすクリスマス


【執筆者プロフィール】
小滝肇(こたき・はじめ)
昭和三十年広島市生まれ
平成十六年俳誌「春耕」入会
春耕同人、銀漢創刊同人を経て
現在無所属
平成三十年 第一句集『凡そ君と』


【お知らせ】
2015年に亡くなられた俳人・澤田和弥さんの句文集の出版するクラウドファンディングのプロジェクトが立ち上がっています。詳細は以下のバナーから!(Motion Galleryのプロジェクトページに遷移します)

2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓



【2023年7月の火曜日☆北杜駿のバックナンバー】

>>〔5〕「我が毒」ひとが薄めて名薬梅雨永し 中村草田男
>>〔6〕白夜の忠犬百骸挙げて石に近み 中村草田男
>>〔7〕折々己れにおどろく噴水時の中 中村草田男
>>〔8〕めぐりあひやその虹七色七代まで 中村草田男

【2023年7月の水曜日☆小滝肇のバックナンバー】

>>〔5〕数と俳句(一)
>>〔6〕数と俳句(二)
>>〔7〕数と俳句(三)

【2023年7月の木曜日☆近江文代のバックナンバー】

>>〔10〕来たことも見たこともなき宇都宮 筑紫磐井
>>〔11〕「月光」旅館/開けても開けてもドアがある 高柳重信
>>〔12〕コンビニの枇杷って輪郭だけ 原ゆき

【2023年6月の火曜日☆北杜駿のバックナンバー】

>>〔1〕田を植ゑるしづかな音へ出でにけり 中村草田男
>>〔2〕妻のみ恋し紅き蟹などを歎かめや  中村草田男
>>〔3〕虹の後さづけられたる旅へ発つ   中村草田男
>>〔4〕鶏鳴の多さよ夏の旅一歩      中村草田男

【2023年6月の水曜日☆古川朋子のバックナンバー】

>>〔6〕妹の手をとり水の香の方へ 小山玄紀
>>〔7〕金魚屋が路地を素通りしてゆきぬ 菖蒲あや
>>〔8〕白い部屋メロンのありてその匂ひ 上田信治
>>〔9〕夕凪を櫂ゆくバター塗るごとく 堀本裕樹

【2023年5月の火曜日☆千野千佳のバックナンバー】

>>〔5〕皮むけばバナナしりりと音すなり 犬星星人
>>〔6〕煮し蕗の透きとほりたり茎の虚  小澤實
>>〔7〕手の甲に子かまきりをり吹きて逃す 土屋幸代
>>〔8〕いつまでも死なぬ金魚と思ひしが 西村麒麟
>>〔9〕夏蝶の口くくくくと蜜に震ふ  堀本裕樹

【2023年5月の水曜日☆古川朋子のバックナンバー】

>>〔1〕遠き屋根に日のあたる春惜しみけり 久保田万太郎
>>〔2〕電車いままつしぐらなり桐の花 星野立子
>>〔3〕葉桜の頃の電車は突つ走る 波多野爽波
>>〔4〕薫風や今メンバー紹介のとこ 佐藤智子
>>〔5〕ハフハフと泳ぎだす蛭ぼく音痴 池禎章

【2023年4月の火曜日☆千野千佳のバックナンバー】

>>〔1〕春風にこぼれて赤し歯磨粉  正岡子規
>>〔2〕菜の花や部屋一室のラジオ局 相子智恵
>>〔3〕生きのよき魚つめたし花蘇芳 津川絵理子
>>〔4〕遠足や眠る先生はじめて見る 斉藤志歩

【2023年4月の水曜日☆山口遼也のバックナンバー】

>>〔6〕赤福の餡べつとりと山雪解 波多野爽波
>>〔7〕眼前にある花の句とその花と 田中裕明
>>〔8〕対岸の比良や比叡や麦青む 対中いずみ
>>〔9〕美しきものに火種と蝶の息 宇佐美魚目

【2023年3月の火曜日☆三倉十月のバックナンバー】

>>〔1〕窓眩し土を知らざるヒヤシンス 神野紗希
>>〔2〕家濡れて重たくなりぬ花辛夷  森賀まり
>>〔3〕菜の花月夜ですよネコが死ぬ夜ですよ 金原まさ子
>>〔4〕不健全図書を世に出しあたたかし 松本てふこ【←三倉十月さんの自選10句付】

【2023年3月の水曜日☆山口遼也のバックナンバー】

>>〔1〕鳥の巣に鳥が入つてゆくところ 波多野爽波
>>〔2〕砂浜の無数の笑窪鳥交る    鍵和田秞子
>>〔3〕大根の花まで飛んでありし下駄 波多野爽波
>>〔4〕カードキー旅寝の春の灯をともす トオイダイスケ
>>〔5〕桜貝長き翼の海の星      波多野爽波

【2023年2月の火曜日☆鈴木総史のバックナンバー】

>>〔6〕立春の零下二十度の吐息   三品吏紀
>>〔7〕背広来る来るジンギスカンを食べに来る 橋本喜夫
>>〔8〕北寄貝桶ゆすぶつて見せにけり 平川靖子
>>〔9〕地吹雪や蝦夷はからくれなゐの島 櫂未知子

【2023年2月の水曜日☆楠本奇蹄のバックナンバー】

>>〔1〕うらみつらみつらつら椿柵の向う 山岸由佳
>>〔2〕忘れゆくはやさで淡雪が乾く   佐々木紺
>>〔3〕雪虫のそつとくらがりそつと口笛 中嶋憲武
>>〔4〕さくら餅たちまち人に戻りけり  渋川京子

【2023年1月の火曜日☆鈴木総史のバックナンバー】

>>〔1〕年迎ふ父に胆石できたまま   島崎寛永
>>〔2〕初燈明背にあかつきの雪の音 髙橋千草
>>〔3〕蝦夷に生まれ金木犀の香を知らず 青山酔鳴
>>〔4〕流氷が繋ぐ北方領土かな   大槻独舟
>>〔5〕湖をこつんとのこし山眠る 松王かをり

【2023年1月の水曜日☆岡田由季のバックナンバー】

>>〔1〕さしあたり坐つてゐるか鵆見て 飯島晴子
>>〔2〕潜り際毬と見えたり鳰     中田剛
>>〔3〕笹鳴きに覚めて朝とも日暮れとも 中村苑子
>>〔4〕血を分けし者の寝息と梟と   遠藤由樹子

【2022年11・12月の火曜日☆赤松佑紀のバックナンバー】

>>〔1〕氷上と氷中同じ木のたましひ 板倉ケンタ
>>〔2〕凍港や旧露の街はありとのみ 山口誓子
>>〔3〕境内のぬかるみ神の発ちしあと 八染藍子
>>〔4〕舌荒れてをり猟銃に油差す 小澤實
>>〔5〕義士の日や途方に暮れて人の中 日原傳
>>〔6〕枯野ゆく最も遠き灯に魅かれ 鷹羽狩行
>>〔7〕胸の炎のボレロは雪をもて消さむ 文挾夫佐恵
>>〔8〕オルゴールめく牧舎にも聖夜の灯 鷹羽狩行
>>〔9〕去年今年詩累々とありにけり  竹下陶子

【2022年11・12月の水曜日☆近江文代のバックナンバー】

>>〔1〕泣きながら白鳥打てば雪がふる 松下カロ
>>〔2〕牡蠣フライ女の腹にて爆発する 大畑等
>>〔3〕誕生日の切符も自動改札に飲まれる 岡田幸生
>>〔4〕雪が降る千人針をご存じか 堀之内千代
>>〔5〕トローチのすつと消えすつと冬の滝 中嶋憲武
>>〔6〕鱶のあらい皿を洗えば皿は海 谷さやん
>>〔7〕橇にゐる母のざらざらしてきたる 宮本佳世乃
>>〔8〕セーターを脱いだかたちがすでに負け 岡野泰輔
>>〔9〕動かない方も温められている   芳賀博子

【2022年10月の火曜日☆太田うさぎ(復活!)のバックナンバー】

>>〔92〕老僧の忘れかけたる茸の城 小林衹郊
>>〔93〕輝きてビラ秋空にまだ高し  西澤春雪
>>〔94〕懐石の芋の葉にのり衣被    平林春子
>>〔95〕ひよんの実や昨日と違ふ風を見て   高橋安芸

【2022年9月の水曜日☆田口茉於のバックナンバー】

>>〔5〕運動会静かな廊下歩きをり  岡田由季
>>〔6〕後の月瑞穂の国の夜なりけり 村上鬼城
>>〔7〕秋冷やチーズに皮膚のやうなもの 小野あらた
>>〔8〕逢えぬなら思いぬ草紅葉にしゃがみ 池田澄子

【2022年9月の火曜日☆岡野泰輔のバックナンバー】

>>〔1〕帰るかな現金を白桃にして    原ゆき
>>〔2〕ビル、がく、ずれて、ゆくな、ん、てきれ、いき、れ なかはられいこ
>>〔3〕サフランもつて迅い太子についてゆく 飯島晴子
>>〔4〕琴墜ちてくる秋天をくらりくらり  金原まさ子

【2022年9月の水曜日☆田口茉於のバックナンバー】

>>〔1〕九月来る鏡の中の無音の樹   津川絵理子
>>〔2〕雨月なり後部座席に人眠らせ    榮猿丸
>>〔3〕秋思かがやくストローを嚙みながら 小川楓子
>>〔4〕いちじくを食べた子供の匂ひとか  鴇田智哉

【2022年6月の火曜日☆杉原祐之のバックナンバー】

>>〔1〕仔馬にも少し荷を付け時鳥    橋本鶏二
>>〔2〕ほととぎす孝君零君ききたまへ  京極杞陽
>>〔3〕いちまいの水田になりて暮れのこり 長谷川素逝
>>〔4〕雲の峰ぬつと東京駅の上     鈴木花蓑

【2022年6月の水曜日☆松野苑子のバックナンバー】

>>〔1〕でで虫の繰り出す肉に後れをとる 飯島晴子
>>〔2〕襖しめて空蟬を吹きくらすかな  飯島晴子
>>〔3〕螢とび疑ひぶかき親の箸     飯島晴子
>>〔4〕十薬の蕊高くわが荒野なり    飯島晴子
>>〔5〕丹田に力を入れて浮いて来い   飯島晴子

【2022年5月の火曜日☆沼尾將之のバックナンバー】

>>〔1〕田螺容れるほどに洗面器が古りし 加倉井秋を
>>〔2〕桐咲ける景色にいつも沼を感ず  加倉井秋を
>>〔3〕葉桜の夜へ手を出すための窓   加倉井秋を
>>〔4〕新綠を描くみどりをまぜてゐる  加倉井秋を
>>〔5〕美校生として征く額の花咲きぬ  加倉井秋を

【2022年5月の水曜日☆木田智美のバックナンバー】

>>〔1〕きりんの子かゞやく草を喰む五月  杉山久子
>>〔2〕甘き花呑みて緋鯉となりしかな   坊城俊樹
>>〔3〕ジェラートを売る青年の空腹よ   安里琉太
>>〔4〕いちごジャム塗れとおもちゃの剣で脅す 神野紗希

【2022年4月の火曜日☆九堂夜想のバックナンバー】

>>〔1〕回廊をのむ回廊のアヴェ・マリア  豊口陽子
>>〔2〕未生以前の石笛までも刎ねる    小野初江
>>〔3〕水鳥の和音に還る手毬唄      吉村毬子
>>〔4〕星老いる日の大蛤を生みぬ     三枝桂子

【2022年4月の水曜日☆大西朋のバックナンバー】

>>〔1〕大利根にほどけそめたる春の雲   安東次男
>>〔2〕回廊をのむ回廊のアヴェ・マリア  豊口陽子
>>〔3〕田に人のゐるやすらぎに春の雲  宇佐美魚目
>>〔4〕鶯や米原の町濡れやすく     加藤喜代子

【2022年3月の火曜日☆松尾清隆のバックナンバー】

>>〔1〕死はいやぞ其きさらぎの二日灸   正岡子規
>>〔2〕菜の花やはつとあかるき町はつれ  正岡子規
>>〔3〕春や昔十五万石の城下哉      正岡子規
>>〔4〕蛤の吐いたやうなる港かな     正岡子規
>>〔5〕おとつさんこんなに花がちつてるよ 正岡子規

【2022年3月の水曜日☆藤本智子のバックナンバー】

>>〔1〕蝌蚪乱れ一大交響楽おこる    野見山朱鳥
>>〔2〕廃墟春日首なきイエス胴なき使徒 野見山朱鳥
>>〔3〕春天の塔上翼なき人等      野見山朱鳥
>>〔4〕春星や言葉の棘はぬけがたし   野見山朱鳥
>>〔5〕春愁は人なき都会魚なき海    野見山朱鳥

【2022年2月の火曜日☆永山智郎のバックナンバー】

>>〔1〕年玉受く何も握れぬ手でありしが  髙柳克弘
>>〔2〕復讐の馬乗りの僕嗤っていた    福田若之
>>〔3〕片蔭の死角から攻め落としけり   兒玉鈴音
>>〔4〕おそろしき一直線の彼方かな     畠山弘

【2022年2月の水曜日☆内村恭子のバックナンバー】

>>〔1〕琅玕や一月沼の横たはり      石田波郷
>>〔2〕ミシン台並びやすめり針供養    石田波郷
>>〔3〕ひざにゐて猫涅槃図に間に合はず  有馬朗人
>>〔4〕仕る手に笛もなし古雛      松本たかし

【2022年1月の火曜日☆菅敦のバックナンバー】

>>〔1〕賀の客の若きあぐらはよかりけり 能村登四郎
>>〔2〕血を血で洗ふ絨毯の吸へる血は   中原道夫
>>〔3〕鉄瓶の音こそ佳けれ雪催      潮田幸司
>>〔4〕嗚呼これは温室独特の匂ひ      田口武

【2022年1月の水曜日☆吉田林檎のバックナンバー】

>>〔1〕水底に届かぬ雪の白さかな    蜂谷一人
>>〔2〕嚔して酒のあらかたこぼれたる  岸本葉子
>>〔3〕呼吸するごとく雪降るヘルシンキ 細谷喨々
>>〔4〕胎動に覚め金色の冬林檎     神野紗希

【2021年12月の火曜日☆小滝肇のバックナンバー】

>>〔1〕柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺    正岡子規
>>〔2〕内装がしばらく見えて昼の火事   岡野泰輔
>>〔3〕なだらかな坂数へ日のとある日の 太田うさぎ
>>〔4〕共にゐてさみしき獣初しぐれ   中町とおと

【2021年12月の水曜日☆川原風人のバックナンバー】

>>〔1〕綿入が似合う淋しいけど似合う    大庭紫逢
>>〔2〕枯葉言ふ「最期とは軽いこの音さ」   林翔
>>〔3〕鏡台や猟銃音の湖心より      藺草慶子
>>〔4〕みな聖樹に吊られてをりぬ羽持てど 堀田季何
>>〔5〕ともかくもくはへし煙草懐手    木下夕爾

【2021年11月の火曜日☆望月清彦のバックナンバー】

>>〔1〕海くれて鴨のこゑほのかに白し      芭蕉
>>〔2〕木枯やたけにかくれてしづまりぬ    芭蕉
>>〔3〕葱白く洗ひたてたるさむさ哉      芭蕉
>>〔4〕埋火もきゆやなみだの烹る音      芭蕉
>>〔5-1〕蝶落ちて大音響の結氷期  富沢赤黄男【前編】
>>〔5-2〕蝶落ちて大音響の結氷期  富沢赤黄男【後編】

【2021年11月の水曜日☆町田無鹿のバックナンバー】

>>〔1〕秋灯机の上の幾山河        吉屋信子
>>〔2〕息ながきパイプオルガン底冷えす 津川絵理子
>>〔3〕後輩の女おでんに泣きじゃくる  加藤又三郎
>>〔4〕未婚一生洗ひし足袋の合掌す    寺田京子

【2021年10月の火曜日☆千々和恵美子のバックナンバー】

>>〔1〕橡の実のつぶて颪や豊前坊     杉田久女
>>〔2〕鶴の来るために大空あけて待つ  後藤比奈夫
>>〔3〕どつさりと菊着せられて切腹す   仙田洋子
>>〔4〕藁の栓してみちのくの濁酒     山口青邨

【2021年10月の水曜日☆小田島渚のバックナンバー】

>>〔1〕秋の川真白な石を拾ひけり   夏目漱石
>>〔2〕稻光 碎カレシモノ ヒシメキアイ 富澤赤黄男
>>〔3〕嵐の埠頭蹴る油にもまみれ針なき時計 赤尾兜子
>>〔4〕野分吾が鼻孔を出でて遊ぶかな   永田耕衣


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 胸の炎のボレロは雪をもて消さむ 文挾夫佐恵【季語=雪(冬)】
  2. あまり寒く笑へば妻もわらふなり 石川桂郎【季語=寒し(冬)】
  3. 梅雨の日の烈しくさせば罌粟は燃ゆ 篠田悌二郎【季語=梅雨・罌粟…
  4. どの絵にも前のめりして秋の人 藤本夕衣【季語=秋(秋)】
  5. コーヒー沸く香りの朝はハットハウスの青さで 古屋翠渓
  6. 菊食うて夜といふなめらかな川 飯田晴【季語=菊(秋)】
  7. 夏蝶の口くくくくと蜜に震ふ 堀本裕樹【季語=夏蝶(夏)】
  8. 恋さめた猫よ物書くまで墨すり溜めし 河東碧梧桐【季語=恋猫(春)…

おすすめ記事

  1. 【春の季語】春寒
  2. 「野崎海芋のたべる歳時記」桃のティアン
  3. 神保町に銀漢亭があったころ【第101回】田村元
  4. 【連載】歳時記のトリセツ(11)/佐藤りえさん
  5. 【秋の季語】銀漢
  6. 賀の客の若きあぐらはよかりけり 能村登四郎【季語=賀客(新年)】
  7. 永遠に下る九月の明るい坂 今井聖【季語=九月(秋)】
  8. 【春の季語】春月
  9. 手に負へぬ萩の乱れとなりしかな 安住敦【季語=萩(秋)】
  10. ひそひそと四万六千日の猫 菊田一平【季語=四万六千日(夏)】

Pickup記事

  1. ライオンは人を見飽きて夏の果 久米祐哉【季語=夏の果(夏)】
  2. 【冬の季語】冬の滝
  3. 【春の季語】春二番
  4. 誕生日の切符も自動改札に飲まれる 岡田幸生
  5. 【クラファン目標達成記念!】神保町に銀漢亭があったころリターンズ【10】/辻本芙紗(「銀漢」同人)
  6. 【秋の季語】秋風
  7. 黄金週間屋上に鳥居ひとつ 松本てふこ【季語=黄金週間(夏)】
  8. 【新年の季語】歌留多
  9. 【冬の季語】冬帽子
  10. 夏山に勅封の大扉あり 宇佐美魚目【季語=夏山(夏)】
PAGE TOP