小鳥来る薄き机をひからせて
飯島晴子
「薄き机」は机を横から見た把握であり、「机をひからせて」は、特に机が薄いのであれば、上あるいは斜め上から机の面を見た把握である。だから「薄き机をひからせて」にはなんとなく違和感がある。しかしながら、その違和感、妙に立体的で広々とした感じが、「小鳥来る」と組み合わさるとまた良い効果を発揮する。「小鳥来る」は、青空の下に生臭い空気が漂うような季語であり、大空間を渡ってくるという要素と、小さなものへの慈しみという要素とが宿る。「小鳥来る」という季語の本意を構成するこれら二つの要素(もちろん、これらだけで「小鳥来る」の本意が完成するとは思わないが)と、「薄き机」「机をひからせて」の二つの把握との間に生まれる四つの組み合わせが、同時に提示されることにより、読者はそれらを同時に思い浮かべることを迫られる。さらに、小鳥と机がおそらくは同じ空間にあるわけではない一方で、小鳥が渡ってくるときに艶のある机に映りこむようにも思えるというところまで考えると、実は非常に読み応えのある句だということがわかる。
(小山玄紀)
【執筆者プロフィール】
小山玄紀(こやま・げんき)
平成九年大阪生。櫂未知子・佐藤郁良に師事、「群青」同人。第六回星野立子新人賞、第六回俳句四季新人賞。句集に『ぼうぶら』。俳人協会会員
【小山玄紀さんの句集『ぼうぶら』(2022年)はこちら↓】
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