篠崎央子 | セクト・ポクリット

馴染むとは好きになること味噌雑煮　西村和子【季語＝雑煮（新年）】

息触れて初夢ふたつ響きあふ　正木ゆう子【季語＝初夢（新年）】

寝化粧の鏡にポインセチア燃ゆ　小路智壽子【季語＝ポインセチア（冬）】

服脱ぎてサンタクロースになるところ　堀切克洋【季語＝サンタクロース（冬）】

山茶花のくれなゐひとに訪はれずに　橋本多佳子【季語＝山茶花（冬）】

恋の句の一つとてなき葛湯かな　岩田由美【季語＝葛湯（冬）】

待ち人の来ず赤い羽根吹かれをり　涼野海音【季語＝赤い羽根（秋）】

男色や鏡の中は鱶の海　男波弘志【季語＝鱶（冬）】

愛かなしつめたき目玉舐めたれば　榮猿丸【季語＝冷たし（冬）】

「ぺットでいいの」林檎が好きで泣き虫で　楠本憲吉【季語＝林檎（秋）】

しんじつを籠めてくれなゐ真弓の実　後藤比奈夫【季語＝真弓の実（秋）】

背のファスナ一気に割るやちちろ鳴く　村山砂田男【季語＝ちちろ鳴く（秋）】

木犀や同棲二年目の畳　髙柳克弘【季語＝木犀（秋）】

手に負へぬ萩の乱れとなりしかな　安住敦【季語＝萩（秋）】

九十の恋かや白き曼珠沙華　文挾夫佐恵【季語＝曼珠沙華（秋）】

もう逢わぬ距りは花野にも似て　澁谷道【季語＝花野（秋）】

目のなかに芒原あり森賀まり　田中裕明【季語＝芒（秋）】

葛の花むかしの恋は山河越え　鷹羽狩行【季語＝葛の花（秋）】

呪ふ人は好きな人なり紅芙蓉　長谷川かな女【季語＝芙蓉（秋）】

あかくあかくカンナが微熱誘ひけり　高柳重信【季語＝カンナ（秋）】

滴りてふたりとは始まりの数　辻美奈子【季語＝滴り（夏）】

みちのくに戀ゆゑ細る瀧もがな　筑紫磐井【季語＝滝（夏）】

告げざる愛地にこぼしつつ泉汲む　恩田侑布子【季語＝泳ぐ（夏）】

愛されずして沖遠く泳ぐなり　藤田湘子【季語＝泳ぐ（夏）】

青大将この日男と女かな　鳴戸奈菜【季語＝青大将（夏）】

むかし吾を縛りし男の子凌霄花　中村苑子【季語＝凌霄花（夏）】

羅や人悲します恋をして鈴木真砂女【季語＝羅（夏）】

ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき　桂信子【季語＝梅雨（夏）】

夏みかん酢つぱしいまさら純潔など　鈴木しづ子【季語＝夏みかん（夏）】

跳ぶ時の内股しろき蟇　能村登四郎【季語＝蟇（夏）】

天使魚の愛うらおもてそして裏　中原道夫【季語＝天使魚（夏）】

Tシャツの干し方愛の終わらせ方　神野紗希【季語＝Tシャツ（夏）】

扇子低く使ひぬ夫に女秘書　藤田直子【季語＝扇子（夏）】

中年の恋のだんだら日覆かな　星野石雀【季語＝日覆（夏）】

散るときのきてちる牡丹哀しまず　稲垣きくの【季語＝牡丹（夏）】

春の水とは濡れてゐるみづのこと　長谷川櫂【季語＝春の水（春）】

人妻ぞいそぎんちやくに指入れて　小澤實【季語＝磯巾着（春）】

春ショール靡きやすくて恋ごこち　檜紀代【季語＝春ショール（春）】

サイネリア待つといふこときらきらす　鎌倉佐弓【季語＝サイネリア（春）】

さくら貝黙うつくしく恋しあふ　仙田洋子【季語＝さくら貝（春）】

椿咲くたびに逢いたくなっちゃだめ　池田澄子【季語＝椿（春）】

沈丁や夜でなければ逢へぬひと　五所平之助【季語＝沈丁（春）】

薄氷の筥の中なる逢瀬かな　大木孝子【季語＝薄氷（春）】

東風吹かば吾をきちんと口説きみよ　如月真菜【季語＝東風（春）】

永き日や相触れし手は触れしまま　日野草城【季語＝永き日（春）】

鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし　三橋鷹女【季語＝鞦韆（春）】

毒舌は健在バレンタインデー　古賀まり子【季語＝バレンタインデー（春）】

春の雪指の炎ゆるを誰に告げむ　河野多希女【季語＝春の雪（春）】

あひみての後を逆さのかいつぶり　柿本多映【季語＝鳰（冬）】

寒月下あにいもうとのやうに寝て　大木あまり【季語＝寒月（冬）】

どこからが恋どこまでが冬の空　黛まどか【季語＝冬の空（冬）】

寒木が枝打ち鳴らす犬の恋　西東三鬼【季語＝寒木（冬）】

ひめはじめ昔男に腰の物　加藤郁乎【季語＝ひめ始（新年）】

女に捨てられたうす雪の夜の街燈　尾崎放哉【季語＝雪（冬）】

靴音を揃えて聖樹まで二人　なつはづき【季語＝聖樹（冬）】

火事かしらあそこも地獄なのかしら　櫂未知子【季語＝火事（冬）】

新宿発は逃避行めき冬薔薇　新海あぐり【季語＝冬薔薇（冬）】

海鼠噛むことも別れも面倒な　遠山陽子【季語＝海鼠（冬）】

七十や釣瓶落しの離婚沙汰　文挾夫佐恵【季語＝釣瓶落し（秋）】

松葉屋の女房の円髷や酉の市　久保田万太郎【季語＝酉の市（冬）】

こほろぎや女の髪の闇あたたか　竹岡一郎【季語＝蟋蟀（秋）】

雀蛤となるべきちぎりもぎりかな　河東碧梧桐【季語＝雀蛤となる（秋）】

恋ともちがふ紅葉の岸をともにして　飯島晴子【季語＝紅葉（秋）】

月光に夜離れはじまる式部の実　保坂敏子【季語＝式部の実（秋）】

愛断たむこころ一途に野分中　鷲谷七菜子【季語＝野分（秋）】

へうたんも髭の男もわれのもの　岩永佐保【季語＝瓢箪（秋）】

【祝1周年】ハイクノミカタ season1 【2020.10-2021.9】

嫁がねば長き青春青蜜柑　大橋敦子【季語＝青蜜柑（秋）】

赤き茸礼讃しては蹴る女　八木三日女【季語＝茸（秋）】

紅さして尾花の下の思ひ草　深谷雄大【季語＝思ひ草（秋）】

天女より人女がよけれ吾亦紅　森澄雄【季語＝吾亦紅（秋）】

誰かまた銀河に溺るる一悲鳴　河原枇杷男【季語＝銀河（秋）】

杜鵑草遠流は恋の咎として　谷中隆子【季語＝杜鵑草（秋）】

求婚の返事来る日をヨット馳す　池田幸利【季語＝ヨット（夏）】

愛情のレモンをしぼる砂糖水　瀧春一【季語＝砂糖水（夏）】

新婚のすべて未知数メロン切る　品川鈴子【季語＝メロン（夏）】

男欲し昼の蛍の掌に匂ふ　小坂順子【季語＝蛍（夏）】

梅漬けてあかき妻の手夜は愛す　能村登四郎【季語＝梅漬ける（夏）】

凌霄は妻恋ふ真昼のシャンデリヤ　中村草田男【季語＝凌霄（夏）】

ダリヤ活け婚家の家風侵しゆく　鍵和田秞子【季語＝ダリヤ（夏）】

馴染むとは好きになること味噌雑煮 西村和子【季語＝雑煮（新年）】

息触れて初夢ふたつ響きあふ 正木ゆう子【季語＝初夢（新年）】

寝化粧の鏡にポインセチア燃ゆ 小路智壽子【季語＝ポインセチア（冬）】

服脱ぎてサンタクロースになるところ 堀切克洋【季語＝サンタクロース（冬）】

山茶花のくれなゐひとに訪はれずに 橋本多佳子【季語＝山茶花（冬）】

恋の句の一つとてなき葛湯かな 岩田由美【季語＝葛湯（冬）】

待ち人の来ず赤い羽根吹かれをり 涼野海音【季語＝赤い羽根（秋）】

男色や鏡の中は鱶の海 男波弘志【季語＝鱶（冬）】

愛かなしつめたき目玉舐めたれば 榮猿丸【季語＝冷たし（冬）】

「ぺットでいいの」林檎が好きで泣き虫で 楠本憲吉￼【季語＝林檎（秋）】

しんじつを籠めてくれなゐ真弓の実￼ 後藤比奈夫￼【季語＝真弓の実（秋）】

背のファスナ一気に割るやちちろ鳴く 村山砂田男￼【季語＝ちちろ鳴く（秋）】

木犀や同棲二年目の畳 髙柳克弘【季語＝木犀（秋）】

手に負へぬ萩の乱れとなりしかな 安住敦【季語＝萩（秋）】

九十の恋かや白き曼珠沙華 文挾夫佐恵【季語＝曼珠沙華（秋）】

もう逢わぬ距りは花野にも似て 澁谷道￼【季語＝花野（秋）】

目のなかに芒原あり森賀まり 田中裕明【季語＝芒（秋）】

葛の花むかしの恋は山河越え 鷹羽狩行￼【季語＝葛の花（秋）】

呪ふ人は好きな人なり紅芙蓉 長谷川かな女￼【季語＝芙蓉（秋）】

あかくあかくカンナが微熱誘ひけり 高柳重信￼【季語＝カンナ（秋）】

滴りてふたりとは始まりの数 辻美奈子【季語＝滴り（夏）】

みちのくに戀ゆゑ細る瀧もがな 筑紫磐井【季語＝滝（夏）】

告げざる愛地にこぼしつつ泉汲む￼ 恩田侑布子￼【季語＝泳ぐ（夏）】

愛されずして沖遠く泳ぐなり￼ 藤田湘子【季語＝泳ぐ（夏）】

青大将この日男と女かな 鳴戸奈菜￼【季語＝青大将（夏）】

むかし吾を縛りし男の子凌霄花 中村苑子【季語＝凌霄花（夏）】

羅や人悲します恋をして￼鈴木真砂女【季語＝羅（夏）】

ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき 桂信子【季語＝梅雨（夏）】

夏みかん酢つぱしいまさら純潔など 鈴木しづ子【季語＝夏みかん（夏）】

跳ぶ時の内股しろき蟇￼ 能村登四郎￼【季語＝蟇（夏）】

天使魚の愛うらおもてそして裏 中原道夫【季語＝天使魚（夏）】

Tシャツの干し方愛の終わらせ方 神野紗希【季語＝Tシャツ（夏）】

扇子低く使ひぬ夫に女秘書 藤田直子【季語＝扇子（夏）】

中年の恋のだんだら日覆かな 星野石雀【季語＝日覆（夏）】

散るときのきてちる牡丹哀しまず 稲垣きくの【季語＝牡丹（夏）】

春の水とは濡れてゐるみづのこと 長谷川櫂【季語＝春の水（春）】

人妻ぞいそぎんちやくに指入れて 小澤實【季語＝磯巾着（春）】

春ショール靡きやすくて恋ごこち 檜紀代【季語＝春ショール（春）】

サイネリア待つといふこときらきらす 鎌倉佐弓【季語＝サイネリア（春）】

さくら貝黙うつくしく恋しあふ 仙田洋子【季語＝さくら貝（春）】

椿咲くたびに逢いたくなっちゃだめ 池田澄子【季語＝椿（春）】

沈丁や夜でなければ逢へぬひと 五所平之助【季語＝沈丁（春）】

薄氷の筥の中なる逢瀬かな 大木孝子【季語＝薄氷（春）】

東風吹かば吾をきちんと口説きみよ 如月真菜【季語＝東風（春）】

永き日や相触れし手は触れしまま 日野草城【季語＝永き日（春）】

鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし￼ 三橋鷹女￼【季語＝鞦韆（春）】

毒舌は健在バレンタインデー 古賀まり子【季語＝バレンタインデー（春）】

春の雪指の炎ゆるを誰に告げむ 河野多希女【季語＝春の雪（春）】

あひみての後を逆さのかいつぶり 柿本多映【季語＝鳰（冬）】

寒月下あにいもうとのやうに寝て 大木あまり【季語＝寒月（冬）】

どこからが恋どこまでが冬の空 黛まどか【季語＝冬の空（冬）】

寒木が枝打ち鳴らす犬の恋 西東三鬼【季語＝寒木（冬）】

ひめはじめ昔男に腰の物 加藤郁乎【季語＝ひめ始（新年）】

女に捨てられたうす雪の夜の街燈 尾崎放哉【季語＝雪（冬）】

靴音を揃えて聖樹まで二人 なつはづき【季語＝聖樹（冬）】

火事かしらあそこも地獄なのかしら 櫂未知子【季語＝火事（冬）】

新宿発は逃避行めき冬薔薇 新海あぐり【季語＝冬薔薇（冬）】

海鼠噛むことも別れも面倒な 遠山陽子【季語＝海鼠（冬）】

七十や釣瓶落しの離婚沙汰 文挾夫佐恵【季語＝釣瓶落し（秋）】

松葉屋の女房の円髷や酉の市 久保田万太郎【季語＝酉の市（冬）】

こほろぎや女の髪の闇あたたか 竹岡一郎【季語＝蟋蟀（秋）】

雀蛤となるべきちぎりもぎりかな 河東碧梧桐【季語＝雀蛤となる（秋）】

恋ともちがふ紅葉の岸をともにして 飯島晴子【季語＝紅葉（秋）】

月光に夜離れはじまる式部の実 保坂敏子【季語＝式部の実（秋）】

愛断たむこころ一途に野分中 鷲谷七菜子【季語＝野分（秋）】

へうたんも髭の男もわれのもの 岩永佐保【季語＝瓢箪（秋）】

【祝1周年】ハイクノミカタ season1 【2020.10-2021.9】

嫁がねば長き青春青蜜柑 大橋敦子【季語＝青蜜柑（秋）】

赤き茸礼讃しては蹴る女 八木三日女【季語＝茸（秋）】

紅さして尾花の下の思ひ草 深谷雄大【季語＝思ひ草（秋）】

天女より人女がよけれ吾亦紅 森澄雄【季語＝吾亦紅（秋）】

誰かまた銀河に溺るる一悲鳴 河原枇杷男【季語＝銀河（秋）】

杜鵑草遠流は恋の咎として 谷中隆子【季語＝杜鵑草（秋）】

求婚の返事来る日をヨット馳す 池田幸利【季語＝ヨット（夏）】

愛情のレモンをしぼる砂糖水 瀧春一【季語＝砂糖水（夏）】

新婚のすべて未知数メロン切る 品川鈴子【季語＝メロン（夏）】

男欲し昼の蛍の掌に匂ふ 小坂順子【季語＝蛍（夏）】

梅漬けてあかき妻の手夜は愛す 能村登四郎【季語＝梅漬ける（夏）】

凌霄は妻恋ふ真昼のシャンデリヤ 中村草田男【季語＝凌霄（夏）】

ダリヤ活け婚家の家風侵しゆく 鍵和田秞子【季語＝ダリヤ（夏）】

馴染むとは好きになること味噌雑煮　西村和子【季語＝雑煮（新年）】

息触れて初夢ふたつ響きあふ　正木ゆう子【季語＝初夢（新年）】

寝化粧の鏡にポインセチア燃ゆ　小路智壽子【季語＝ポインセチア（冬）】

服脱ぎてサンタクロースになるところ　堀切克洋【季語＝サンタクロース（冬）】

山茶花のくれなゐひとに訪はれずに　橋本多佳子【季語＝山茶花（冬）】

恋の句の一つとてなき葛湯かな　岩田由美【季語＝葛湯（冬）】

待ち人の来ず赤い羽根吹かれをり　涼野海音【季語＝赤い羽根（秋）】

男色や鏡の中は鱶の海　男波弘志【季語＝鱶（冬）】

愛かなしつめたき目玉舐めたれば　榮猿丸【季語＝冷たし（冬）】

「ぺットでいいの」林檎が好きで泣き虫で　楠本憲吉【季語＝林檎（秋）】

しんじつを籠めてくれなゐ真弓の実　後藤比奈夫【季語＝真弓の実（秋）】

背のファスナ一気に割るやちちろ鳴く　村山砂田男【季語＝ちちろ鳴く（秋）】

木犀や同棲二年目の畳　髙柳克弘【季語＝木犀（秋）】

手に負へぬ萩の乱れとなりしかな　安住敦【季語＝萩（秋）】

九十の恋かや白き曼珠沙華　文挾夫佐恵【季語＝曼珠沙華（秋）】

もう逢わぬ距りは花野にも似て　澁谷道【季語＝花野（秋）】

目のなかに芒原あり森賀まり　田中裕明【季語＝芒（秋）】

葛の花むかしの恋は山河越え　鷹羽狩行【季語＝葛の花（秋）】

呪ふ人は好きな人なり紅芙蓉　長谷川かな女【季語＝芙蓉（秋）】

あかくあかくカンナが微熱誘ひけり　高柳重信【季語＝カンナ（秋）】

滴りてふたりとは始まりの数　辻美奈子【季語＝滴り（夏）】

みちのくに戀ゆゑ細る瀧もがな　筑紫磐井【季語＝滝（夏）】

告げざる愛地にこぼしつつ泉汲む　恩田侑布子【季語＝泳ぐ（夏）】

愛されずして沖遠く泳ぐなり　藤田湘子【季語＝泳ぐ（夏）】

青大将この日男と女かな　鳴戸奈菜【季語＝青大将（夏）】

むかし吾を縛りし男の子凌霄花　中村苑子【季語＝凌霄花（夏）】

羅や人悲します恋をして鈴木真砂女【季語＝羅（夏）】

ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき　桂信子【季語＝梅雨（夏）】

夏みかん酢つぱしいまさら純潔など　鈴木しづ子【季語＝夏みかん（夏）】

跳ぶ時の内股しろき蟇　能村登四郎【季語＝蟇（夏）】

天使魚の愛うらおもてそして裏　中原道夫【季語＝天使魚（夏）】

Tシャツの干し方愛の終わらせ方　神野紗希【季語＝Tシャツ（夏）】

扇子低く使ひぬ夫に女秘書　藤田直子【季語＝扇子（夏）】

中年の恋のだんだら日覆かな　星野石雀【季語＝日覆（夏）】

散るときのきてちる牡丹哀しまず　稲垣きくの【季語＝牡丹（夏）】

春の水とは濡れてゐるみづのこと　長谷川櫂【季語＝春の水（春）】

人妻ぞいそぎんちやくに指入れて　小澤實【季語＝磯巾着（春）】

春ショール靡きやすくて恋ごこち　檜紀代【季語＝春ショール（春）】

サイネリア待つといふこときらきらす　鎌倉佐弓【季語＝サイネリア（春）】

さくら貝黙うつくしく恋しあふ　仙田洋子【季語＝さくら貝（春）】

椿咲くたびに逢いたくなっちゃだめ　池田澄子【季語＝椿（春）】

沈丁や夜でなければ逢へぬひと　五所平之助【季語＝沈丁（春）】

薄氷の筥の中なる逢瀬かな　大木孝子【季語＝薄氷（春）】

東風吹かば吾をきちんと口説きみよ　如月真菜【季語＝東風（春）】

永き日や相触れし手は触れしまま　日野草城【季語＝永き日（春）】

鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし　三橋鷹女【季語＝鞦韆（春）】

毒舌は健在バレンタインデー　古賀まり子【季語＝バレンタインデー（春）】

春の雪指の炎ゆるを誰に告げむ　河野多希女【季語＝春の雪（春）】

あひみての後を逆さのかいつぶり　柿本多映【季語＝鳰（冬）】

寒月下あにいもうとのやうに寝て　大木あまり【季語＝寒月（冬）】

どこからが恋どこまでが冬の空　黛まどか【季語＝冬の空（冬）】

寒木が枝打ち鳴らす犬の恋　西東三鬼【季語＝寒木（冬）】

ひめはじめ昔男に腰の物　加藤郁乎【季語＝ひめ始（新年）】

女に捨てられたうす雪の夜の街燈　尾崎放哉【季語＝雪（冬）】

靴音を揃えて聖樹まで二人　なつはづき【季語＝聖樹（冬）】

火事かしらあそこも地獄なのかしら　櫂未知子【季語＝火事（冬）】

新宿発は逃避行めき冬薔薇　新海あぐり【季語＝冬薔薇（冬）】

海鼠噛むことも別れも面倒な　遠山陽子【季語＝海鼠（冬）】

七十や釣瓶落しの離婚沙汰　文挾夫佐恵【季語＝釣瓶落し（秋）】

松葉屋の女房の円髷や酉の市　久保田万太郎【季語＝酉の市（冬）】

こほろぎや女の髪の闇あたたか　竹岡一郎【季語＝蟋蟀（秋）】

雀蛤となるべきちぎりもぎりかな　河東碧梧桐【季語＝雀蛤となる（秋）】

恋ともちがふ紅葉の岸をともにして　飯島晴子【季語＝紅葉（秋）】

月光に夜離れはじまる式部の実　保坂敏子【季語＝式部の実（秋）】

愛断たむこころ一途に野分中　鷲谷七菜子【季語＝野分（秋）】

へうたんも髭の男もわれのもの　岩永佐保【季語＝瓢箪（秋）】

嫁がねば長き青春青蜜柑　大橋敦子【季語＝青蜜柑（秋）】

赤き茸礼讃しては蹴る女　八木三日女【季語＝茸（秋）】

紅さして尾花の下の思ひ草　深谷雄大【季語＝思ひ草（秋）】

天女より人女がよけれ吾亦紅　森澄雄【季語＝吾亦紅（秋）】

誰かまた銀河に溺るる一悲鳴　河原枇杷男【季語＝銀河（秋）】

杜鵑草遠流は恋の咎として　谷中隆子【季語＝杜鵑草（秋）】

求婚の返事来る日をヨット馳す　池田幸利【季語＝ヨット（夏）】

愛情のレモンをしぼる砂糖水　瀧春一【季語＝砂糖水（夏）】

新婚のすべて未知数メロン切る　品川鈴子【季語＝メロン（夏）】

男欲し昼の蛍の掌に匂ふ　小坂順子【季語＝蛍（夏）】

梅漬けてあかき妻の手夜は愛す　能村登四郎【季語＝梅漬ける（夏）】

凌霄は妻恋ふ真昼のシャンデリヤ　中村草田男【季語＝凌霄（夏）】

ダリヤ活け婚家の家風侵しゆく　鍵和田秞子【季語＝ダリヤ（夏）】