【た行】
◯対中いずみ(たいなか・いずみ)1956年ー 〈菱形に赤子をくるみ夏座敷〉〈対岸の比良や比叡や麦青む〉〈浅春の岸辺は龍の匂ひせる〉
◯高濱虚子(たかはま・きょし)1874年ー1959年 〈よし切りや水車はゆるく廻りをり〉〈春風や闘志いだきて丘に立つ〉〈龍の玉深く蔵すといふことを〉〈なく声の大いなるかな汗疹の児〉〈秋風や眼中のもの皆俳句〉〈巡査つと来てラムネ瓶さかしまに〉〈鎌倉を驚かしたる余寒あり〉〈先生が瓜盗人でおはせしか〉〈蛇の衣傍にあり憩ひけり〉〈春山もこめて温泉の国造り〉〈ばばばかと書かれし壁の干菜かな〉〈年を以て巨人としたり歩み去る〉〈旗のごとなびく冬日をふと見たり〉〈一月や去年の日記なほ机辺〉〈子規逝くや十七日の月明に〉〈去年今年貫く棒の如きもの〉〈うつくしき羽子板市や買はで過ぐ〉〈大空に伸び傾ける冬木かな〉〈はなびらの垂れて静かや花菖蒲〉〈川を見るバナナの皮は手より落ち〉〈やす扇ばり/\開きあふぎけり〉
◯髙柳克弘(たかやなぎ・かつひろ)1980年ー 〈神は死んだプールの底の白い線〉
◯高山れおな(たかやま・れおな)1968年ー 〈七夕や若く愚かに嗅ぎあへる〉
◯瀧井孝作(たきい・こうすけ)1894年ー1984年 〈海苔あぶる手もとも袖も美しき〉
◯田島健一(たじま・けんいち)1973年ー 〈妻となる人五月の波に近づきぬ〉〈霧晴れてときどき雲を見る読書〉
◯田中裕明(たなか・ひろあき)1959年ー2004年 〈空へゆく階段のなし稲の花〉〈本の背は金の文字押し胡麻の花〉〈いつまでもからだふるへる菜の花よ〉〈眼前にある花の句とその花と〉〈古きよき俳句を読めり寝正月〉〈目のなかに芒原あり森賀まり〉〈くらき瀧茅の輪の奥に落ちにけり〉〈好きな繪の賣れずにあれば草紅葉〉〈渚にて金澤のこと菊のこと〉〈食欲の戻りてきたる子規忌かな〉〈悉く全集にあり衣被〉
◯田畑美穂女 (たばた・みほじょ)1909年ー? 〈来よ来よと梅の月ヶ瀬より電話〉〈明日のなきかに短夜を使ひけり〉
◯田村奏天(たむら・かなめ)2000年ー 〈つめたいてのひら 月が淋しくないように〉
◯垂水文弥(たるみ・ふみや)2003年ー 〈ソフトクリーム一緒に死んでくれますやうに〉
◯津川絵理子(つがわ・えりこ)1968年ー 〈生きのよき魚つめたし花蘇芳〉〈時雨るるや新幹線の長きかほ〉〈九月来る鏡の中の無音の樹〉〈息ながきパイプオルガン底冷えす〉〈止まり木に鳥の一日ヒヤシンス〉〈軋みつつ花束となるチューリップ〉〈革靴の光の揃ふ今朝の冬〉
◯対馬康子(つしま・やすこ)1953年ー 〈純愛や十字十字の冬木立〉〈耳立てて林檎の兎沈めおり〉
◯寺澤始(てらさわ・はじめ)1970年ー 〈顔を見て出席を取る震災忌〉
◯寺田京子(てらだ・きょうこ)1922年ー1976年 〈金色の種まき赤児がささやくよ〉〈未婚一生洗ひし足袋の合掌す〉〈死なさじと肩つかまるゝ氷の下〉
◯峠谷清広(とうげたに・きよひろ)1957年ー 〈東京や涙が蟻になってゆく〉
◯土橋螢(どばし・けい)〈切腹をしたことがない腹を撫で〉
◯富澤赤黄男(とみざわ・かきお)1902年ー1962年 〈赤い月にんげんしろき足そらす〉〈稻光 碎カレシモノ ヒシメキアイ〉
◯富永寒四郎(とみなが・かんしろう)1913年ー1986年 〈緋のカンナ夜の女体とひらひらす〉
◯鳥居真里子(とりい・まりこ)1948年ー 〈鳥の恋いま白髪となる途中〉
【な行】
◯中井余花朗(なかい・よかろう) 〈酒醸す色とは白や米その他〉
◯中西亮太(なかにし・りょうた) 1992年ー 〈秋の蚊の志なく飛びゆけり〉
◯中原道夫(なかはら・みちお)1951年ー 〈白魚のさかなたること略しけり〉〈天使魚の愛うらおもてそして裏〉〈血を血で洗ふ絨毯の吸へる血は〉〈萩に雨こんな日もなければ困る〉
◯中村汀女(なかむら・ていじょ)1900年ー1988年 〈あひふれしさみだれ傘の重かりし〉〈小燕のさヾめき誰も聞き流し〉
◯中村憲子(なかむら・のりこ) 〈恋の刻急げ アリスの兎もぐもぐもぐ〉
◯夏井いつき(なつい・いつき)1957年ー 〈抱きしめてもらへぬ春の魚では〉〈はるかよりはるかへ蜩のひびく〉
◯行方克巳(なめかた・かつみ)1944年ー 〈冬河原のつぴきならぬ恋ならめ〉〈生涯のいま午後何時鰯雲〉
◯西村麒麟(にしむら・きりん)1983年ー 〈酒足りてゐるか新米まだあるか〉〈いつまでも死なぬ金魚と思ひしが〉〈馬鈴薯の一生分が土の上〉〈アロハ来て息子の嫁を眺めをり〉
◯抜井諒一(ぬくい・りょういち)1982年ー 〈向いてゐる方へは飛べぬばつたかな〉〈対岸や壁のごとくに虫の闇〉
◯能村登四郎(のむら・としろう)1911年ー2001年 〈巴里祭わが巴里の日も遠ざかる〉〈季すぎし西瓜を音もなく食へり〉〈跳ぶ時の内股しろき蟇〉〈梅漬けてあかき妻の手夜は愛す〉〈蓮ほどの枯れぶりなくて男われ〉〈略図よく書けて忘年会だより〉
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