又の名のゆうれい草と遊びけり 後藤夜半【季語=ゆうれい草(夏)】


又の名のゆうれい草と遊びけり

後藤夜半


「ゆうれい草」は銀竜草(ユウレイソウ)なのか、紫陽花(ユウレイグサ)なのかということ。また、仮名遣いが「いうれい」ではないということなど、読む上で少し気になるところがある句だ。前者に関しては、福田若之が「ユウレイソウで間違いないのだろう。そうであってほしいと思う。」と述べているが、私としてもこれに賛成である。

銀竜草の方が「遊びけり」の措辞の効きが良い。銀竜草は湿り気のある山などに生育しているらしく、育てるのはかなり難しいらしい。そういう仄暗い場所、またそういうところに遊んでいる句の人物の仄暗さが、この句に奥行きを持たせていると思う。

「又の名の」という措辞も銀竜草の方が効いてくる。「銀竜」と「幽霊」とは、どちらもフィクショナルな存在であるものの、しかし、言葉におけるイメージにはかなり大きな違いがある。銀竜草、その「又の名の」ユウレイソウと「遊びけり」とした方が、それらの言葉の落差がはっきりして、ウィットがふくよかに感じられる。

しかし、福田が記事にリンクを貼っている西村麒麟と河原で酒を飲む動画などを観ていると、こういう企画が気軽に出来た頃が、懐かしいほど随分昔だったように思えてくる。

ほかにもネットを漂流していると、突然興味深い動画に突き当たることがある。たとえば、俳句甲子園のOBOGによるディベートオルガンメンバーによる具体的な句作についての動画などは、出血大サービスという感じがする。

また、第五回芝不器男俳句新人賞のシンポジウムなんかは、生駒大祐の述べる「参照性」というキーワードを検討する上では必見という気がする。

俳句のコンテンツも、昔より遥かに気軽にアクセスできるようになっている。ただ埋もれているのも勿体ないし、俳句動画のプレイリストみたいなのを作っておいた方が便利ではあるよなと思いはする。するが、なかなかマメなことができないでいる。

そういえば、田中裕明賞の句集を読むキャスを昔やったよなと思って観に行ったら、もう3年前も前だった。今年も半分が終わったわけだし、夏もあっという間に終わるだろう。

安里琉太


【「生駒大祐の述べる「参照性」というキーワードを検討する上では必見」↓】


【執筆者プロフィール】
安里琉太(あさと・りゅうた)
1994年沖縄県生まれ。「銀化」「群青」「」同人。句集に『式日』(左右社・2020年)。 同書により、第44回俳人協会新人賞


2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓



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>>〔4〕ここまでは来たよとモアイ置いていく 大川博幸
>>〔3〕昼ごろより時の感じ既に無くなりて樹立のなかに歩みをとどむ 佐藤佐太郎
>>〔2〕魚卵たべ九月些か悔いありぬ  八田木枯
>>〔1〕松風や俎に置く落霜紅      森澄雄


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