ほこりつぽい叙情とか灯を積む彼方の街
金子兜太
「灯」は生活の抒情を象徴しやすい。それは例えば、兜太や欣一らの抒情を批判し、自ら「論理に支えられた抒情」を標榜した飴山實の「誰かまづ灯をともす町冬の雁」や「子の置きし柚子に灯のつく机かな」という句にも見てとれることだ。
飴山の句は「町」だが、兜太の句は「街」であり、「灯を積む」という形容からはビルとかそういう建物が思われる。「ほこりつぽい叙情」は「街」の抒情、割りにモダンな抒情のことだろう。「ほこりつぽい叙情」とはそれ自体抒情的な措辞ではあるが、その通り、抒情とは古ぶものであり、抒情として古びて感じられるそれは抒情されなくなるものだ。これは抒情について考える時、示唆深いことであると思う。また、「彼方」というのも重要な措辞である。遠さとは一つの抒情の形式である。
福田若之の「君はセカイの外へ帰省し無色の街」と、この兜太の句の類似は、それらが単に似通っているという点よりも、抒情というテーマを据えた時に興味深く感じられる。
(安里琉太)
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【執筆者プロフィール】
安里琉太(あさと・りゅうた)
1994年沖縄県生まれ。「銀化」「群青」「滸」同人。句集に『式日』(左右社・2020年)。 同書により、第44回俳人協会新人賞。
2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓
【安里琉太のバックナンバー】
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【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】