胸の炎のボレロは雪をもて消さむ文挾夫佐恵【季語＝雪（冬）】

胸の炎(ほ)のボレロは雪をもて消さむ)

文挾夫佐恵

小学校の頃に意識的に何か趣味を持とうとした時期があった。友達と楽しみを共有し合えるような共通の趣味を持てば良いのだが、なぜか盆栽に興味を持った。祖父や父が盆栽を趣味にしていたわけではない。大したきっかけも無く、急に盆栽が格好良く思えたのだ。

早速近所のホームセンターで小さな松の木を一鉢買って貰ったのだが、そう毎日枝を派手に切ることも無い。なかなか変化が感じられずすぐに辞めてしまった。その後盆栽の趣味は父が引き継ぐこととなった。

次に将棋を始めてみた。盆栽に比べると少しは続いたように思う。当時は羽生善治が人気であり、羽生がモデルとなった漫画をバイブルのように毎日読んでいた。将棋部というクラブ活動にも入ったが部員は合計五名もいなかった。しかし、全国的に見ると当時は将棋ブームで将棋好きな少年は多かったのではないかと思う。そして羽生は当時の将棋好き少年にとってはヒーローと言っても過言では無い存在であった。

羽生は今年６月に前人未到の通算1,500勝という記録を達成した。テレビなどでたまに羽生の話題が出ていると、つい目が離せなくなることがある。運転中ならば音量を上げて聞き逃すまいと集中する。子どもの頃に憧れていた存在は大人になってもヒーローのままなのだ。

最近は藤井聡太が話題を呼んでいる。羽生は藤井について「すごい人が現れた」弱点が見えない」と語っている。そして今月８日、棋王戦で藤井対羽生戦が行われ藤井が勝利した。羽生は「ちょっとずつ苦しくなっていった。何が悪かったのかわからない」と振り返る。

令和の将棋少年にとっては藤井がヒーローなのだろうと想像する。

最近、意識的に藤井の特集番組や対局などの動画を見ることがある。それは俳句に集中しているつもりでも気が付くとだらけてしまう時である。そんな時は一旦手を止めて藤井の動画を見ると気が引き締まり、また頑張ろうという気持ちになれるのだ。筆者のリフレッシュ方法の一つである。

リフレッシュした後にまた俳句を作ったり原稿を書く作業に戻るのだが、その際のBGMは日本語の歌は避けるようにしている。どうしても集中しにくいからである。無音で書き進めるか、洋楽またはワールドミュージック、中国の古典的な音楽などは特に集中しやすいように思う。ギターやベースなどの音が入っていると、どうしてもフレーズなどが気になってしまうのだが、中国の琴は筆者が触ったことのない楽器なので、無駄なことを考えずに済むからかもしれない。

原稿が行き詰まった時には癒やしとして、逆に筆が進み過ぎてしまう時は冷静になる為に、聴く曲やジャンルを変えている。

（赤松佑紀）

【執筆者プロフィール】
赤松佑紀（あかまつ・ゆうき）
昭和59年福井県生まれ、広島県在住。音響専門学校在学中にCDデビュー。現在はＷＥＢデザイン会社専務取締役。「香雨」同人。俳人協会会員。
平成25年「狩」入会。平成31年「香雨」入会。令和2年同人。第一回「香雨」評論賞エッセイ部門受賞。令和3年第三回「香雨」新雨賞受賞。令和4年第十回俳句四季新人賞受賞。第三回「香雨」評論賞評論部門受賞。

2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜＝日下野由季→篠崎央子（2021年7月〜）、火曜＝鈴木牛後、水曜＝月野ぽぽな、木曜＝橋本直、金曜＝阪西敦子、土曜＝太田うさぎ、日曜＝小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓