年迎ふ父に胆石できたまま島崎寛永【季語＝年迎ふ（新年）】　

2023.01.03
ハイクノミカタマンスリーゲスト

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年迎ふ父に胆石できたまま)

島崎寛永(ひろなが)
（北海道俳句年鑑2022より）

私のコーナーでは、北海道にゆかりのある人物の俳句や北海道の風土を取り上げていければと思う。

どんな句を取り上げようか迷っていたのだが、胆石の句を取り上げることに決めた。なぜなら、執筆直前にMR（※製薬会社の営業職の通称）資格の更新に関わる勉強をしていたからだ。言うまでもなく、胆石の勉強もした。

この句の作者は、島崎寛永さん。北海道の高校を卒業し、関東の大学へ進学、現在は「雪華」に所属している大学生である。

掲句にある胆石とは、胆汁に含まれる成分が結晶化し、胆道内で固まったものである。脂っこい食事後や食べ過ぎの後に起きやすいとされている。年末は、ことさら脂っこい食事が多くなる。作者は、自分の父のことを詠んだのだろう。会社の忘年会に行き、クリスマスにはチキンやケーキを食べ、年末は息子や娘が帰省してきて豪華な宴席をする。

そしてなんと、大晦日からおせちを食べ始める。北海道ならではの風習だ。東京から来た私にとっては衝撃だった。

掲句は、年末から年始にかけての食生活を「胆石」によって、的確に捉えているように思う。自分も同じような食生活で、わずかばかり罪悪感を抱いている。

さらに掲句では、胆石ができたままで過ごしているところに面白みを覚える。北海道の中でも、田舎なのだろうか。「病院に行くまでもない痛みだし…救急をやっている市立病院は距離が離れているし…」こんな気持ちなのだろうなと。そんなことを思った。

作者の他の作品もすこし。光があたりづらい地方結社にも、活きのいい若者はいる。

けふは雪女もパジャマだから良し　島崎寛永
成人の日やふるへたる手をきゆつと　〃

胆石だけでなく、痛風発作、尿路結石など、食生活にかかわる病気は多くある。私もそろそろ気を付けないといけない。そんなことを思いつつ、大泉洋が司会をし、安全地帯が37年ぶりに出場する北海道づくしの紅白歌合戦を見ながら、サッポロクラシックを飲むのだ。

（鈴木総史）

【執筆者プロフィール】
鈴木総史（すずき・そうし）
平成8年（1996）東京都狛江市生まれ、26歳。
北海道旭川市在住。現在、製薬会社の営業（MR）として勤務。
平成26年（2014）、第17回俳句甲子園をきっかけに俳句をはじめる。
平成27年（2015）3月、「群青」入会。櫂未知子と佐藤郁良に師事。本格的に作句を開始。
令和元年（2019）、転勤に伴い、北海道旭川市へ移住。
令和3年（2021）10月、「雪華」入会。橋本喜夫に師事。
令和4年（2022）、作品集「微熱」にて、第37回北海道新聞俳句賞を最年少受賞。
令和5年（2023）1月より、「雪華」同人。
現在、「群青」「雪華」同人。俳人協会会員。