立春の零下二十度の吐息　三品吏紀【季語＝立春（春）】　

2023.02.07
ハイクノミカタマンスリーゲスト

「岳」, 「群青」, 「雪華」, の, 三品吏紀, 二百二十日, 北海道, 吐息, 度, 春の季語, 立春, 鈴木総史, 零下

立春の零下二十度の吐息)

三品吏(みしなり)紀(き)
（「北海道俳句年鑑2022」より）

今回は飛行機の中でこの原稿を書いている。というのも、東京で友人の結婚式に参列するためだ。久方ぶりの帰省ということでワクワクする気持ちだ。しかし、北海道と東京の気候が違いすぎて、何を着ていくべきか迷ってしまった…。

最終的に、北海道の氷点下仕様のあったかいダウンを着て、東京に向かうこととした。しかし、このダウン、東京に着いたら、すぐにぶん投げたくなるのだろう。なにせ北海道とは20度も違うのだから。

東京に向かうもうひとつの目的として、群青の句会に参加するためというのもある。開催日は、2月4日。立春である。兼題10句での句会であるため、当然、春の季語で作らなくてはならない。そのため、先日春の季語で作ってみたのだが、出来上がった句に、なんとも実感がない。そりゃそうだ。北海道は氷点下22度、猛吹雪だ。春なんて感じることができない。掲句は、そんな私の気持ちを代弁してくれているかのようだ。

掲句の作者は、三品吏紀さん。「岳」と「雪華」に所属されている、十勝地方在住の方である。この句は、道民の立春が全て集約されている。寒さ、雪、銀世界、立春の北海道のどこに春を見つけることができるのだろうか。北海道の立春はこう詠むべき、こう詠まざるを得ないのである。

私が、東京から北海道に来てから、様々な違いを体験してきた。中でも、「寒さ」の違いは、私にとって最も大きな違いだったように思う。東京に帰れば、「北海道寒いでしょう？雪もすごいでしょう？大変じゃない？」という質問がかならず来る。しかも、たくさんの人から。何度も訊かれる。「今回はなんて答えようか」と、事前に回答を準備しておく。なにかユーモアの効いた回答を準備するつもりだ。

立春の東京旅行、久々に心も身体もあたたかく過ごせるのではないかと期待している。

（鈴木総史）

【執筆者プロフィール】
鈴木総史（すずき・そうし）
平成8年（1996）東京都狛江市生まれ、26歳。
北海道旭川市在住。現在、製薬会社の営業（MR）として勤務。
平成26年（2014）、第17回俳句甲子園をきっかけに俳句をはじめる。
平成27年（2015）3月、「群青」入会。櫂未知子と佐藤郁良に師事。本格的に作句を開始。
令和元年（2019）、転勤に伴い、北海道旭川市へ移住。
令和3年（2021）10月、「雪華」入会。橋本喜夫に師事。
令和4年（2022）、作品集「微熱」にて、第37回北海道新聞俳句賞を最年少受賞。
令和5年（2023）1月より、「雪華」同人。
現在、「群青」「雪華」同人。俳人協会会員。