ハイクノミカタ | セクト・ポクリット

産みたての卵や一つ大新緑　橋本夢道【季語＝新緑（夏）】

水の地球すこしはなれて春の月　正木ゆう子【季語＝春の月（春）】

他人とは自分のひとり残る雪　杉浦圭祐【季語＝残る雪（春）】

紀元前二〇二年の虞美人草　水津達大【季語＝虞美人草（夏）】

竹秋や男と女畳拭く　飯島晴子【季語＝竹秋（春）】

世にまじり立たなんとして朝寝かな　松本たかし【季語＝朝寝（春）】

非常口に緑の男いつも逃げ　田川飛旅子【季語＝緑（夏）？】

さまざまの事おもひ出す桜かな　松尾芭蕉【季語＝桜（春）】

木の根明く仔牛らに灯のひとつづつ　陽美保子【季語＝木の根明く（春）】

筍の光放つてむかれけり　渡辺水巴【季語＝筍（夏）】

その朝も虹とハモンド・オルガンで　正岡豊

鶯や製茶会社のホツチキス　渡邊白泉【季語＝鶯（春）】

ネックレスかすかに金や花を仰ぐ　今井千鶴子【季語＝花（春）】

おにはにはにはにはとりがゐるはるは　大畑等

春泥を帰りて猫の深眠り　藤嶋務【季語＝春泥（春）】

彫り了へし墓抱き起す猫柳　久保田哲子【季語＝猫柳（春）】

桜蘂ふる一生が見えてきて　岡本眸【季語＝桜蘂ふる（春）】

退帆のディンギー跳ねぬ春の虹　根岸哲也【季語＝春の虹（春）】

春林をわれ落涙のごとく出る　阿部青鞋【季語＝春林（春）】

芽柳の傘擦る音の一寸の間　藤松遊子【季語＝芽柳（春）】

鳥の巣に鳥が入つてゆくところ　波多野爽波【季語＝鳥の巣（春）】

にはとりのかたちに春の日のひかり　西原天気【季語＝春の日（春）】

雪解川暮らしの裏を流れけり　太田土男【季語＝雪解川（春）】

さへづりのだんだん吾を容れにけり　石田郷子【季語＝囀（春）】

タワーマンションのロック四重や鳥雲に　鶴見澄子【季語＝鳥雲に（春）】

春は曙そろそろ帰つてくれないか　櫂未知子【季語＝春（春）】

日の遊び風の遊べる花の中　後藤比奈夫【季語＝花（春）】

花の影寝まじ未来が恐しき　小林一茶【季語＝花の影（春）】

卒業の歌コピー機を掠めたる　宮本佳世乃【季語＝卒業（春）】

鉄橋を決意としたる雪解川　松山足羽【季語＝雪解川（春）】

父がまづ走つてみたり風車　矢島渚男【季語＝風車（春）】

蝌蚪の紐掬ひて掛けむ汝が首に　林雅樹【季語＝蝌蚪（春）】

漕いで漕いで郵便配達夫は蝶に　関根誠子【季語＝蝶（春）】

見るうちに開き加はり初桜　深見けん二【季語＝初桜（春）】

海松かゝるつなみのあとの木立かな　　正岡子規【季語＝海松（春）】

クローバーや後髪割る風となり不破博【季語＝クローバー（春）】

つちふるや自動音声あかるくて　神楽坂リンダ【季語＝霾（春）】

人はみななにかにはげみ初桜　深見けん二【季語＝初桜（春）】

止まり木に鳥の一日ヒヤシンス　　津川絵理子【季語＝ヒヤシンス（春）】

飯蛸に昼の花火がぽんぽんと　大野朱香【季語＝飯蛸（春）】

三月の又うつくしきカレンダー　下田実花【季語＝三月（春）】

白梅や天没地没虚空没　永田耕衣【季語＝白梅（春）】

すうっと蝶ふうっと吐いて解く黙禱　中村晋【季語＝蝶（春）】

取り除く土の山なす朧かな　駒木根淳子【季語＝朧（春）】

妻の遺品ならざるはなし春星も　右城暮石【季語＝春星（春）】

行く春や鳥啼き魚の目は泪　芭蕉【季語＝行く春（春）】

復興の遅れの更地春疾風　　菊田島椿【季語＝春疾風（春）】

雛納めせし日人形持ち歩く　千原草之【季語＝雛納（春）】

隠岐やいま木の芽をかこむ怒濤かな　加藤楸邨【季語＝木の芽（春）】

雛飾りつゝふと命惜しきかな　星野立子【季語＝雛飾る（春）】

引越の最後に子猫仕舞ひけり　未来羽【季語＝子猫（春）】

軋みつつ花束となるチューリップ　津川絵理子【季語＝チューリップ（春）】

春雷や刻来り去り遠ざかり　星野立子【季語＝春雷（春）】

花ミモザ帽子を買ふと言ひ出しぬ　星野麥丘人【季語＝花ミモザ（春）】

九頭龍へ窓開け雛の塵払ふ　森田愛子【季語＝雛（春）】

幻影の春泥に投げ出されし靴　星野立子【季語＝春泥（春）】

冴えかへるもののひとつに夜の鼻　加藤楸邨【季語＝冴返る（春）】

昼酒に喉焼く天皇誕生日　石川桂郎【季語＝天皇誕生日（春）】

来て見ればほゝけちらして猫柳　細見綾子【季語＝猫柳（春）】

絵葉書の消印は流氷の町　大串章【季語＝流氷（春）】

あしかびの沖に御堂の潤み立つ　しなだしん【季語＝蘆牙（春）】

梅の径用ありげなる人も行く　今井つる女【季語＝梅　（春）】

餅花のさきの折鶴ふと廻る　篠原梵【季語＝餅花（新年）】

梅咲いて庭中に青鮫が来ている　金子兜太【季語＝梅（春）】

昨日より今日明るしと雪を掻く　木村敏男【季語＝雪を掻く（冬）】

氷に上る魚木に登る童かな鷹羽狩行【季語＝紅梅（春）】

菜の花や月は東に日は西に　与謝蕪村【季語＝菜の花（春）】

二ン月や鼻より口に音抜けて　桑原三郎【季語＝二ン月（春）】

来よ来よと梅の月ヶ瀬より電話　田畑美穂女【季語＝梅　（春）】

ふゆの春卵をのぞくひかりかな　夏目成美【季語＝冬の春（冬）】

人垣に春節の龍起ち上がる　小路紫峡【季語＝春節（春）】

流氷は嘶きをもて迎ふべし　青山茂根【季語＝流氷（春）】

紅梅や凍えたる手のおきどころ竹久夢二【季語＝紅梅（春）】

あかさたなはまやらわをん梅ひらく　西原天気【季語＝梅（春）】

パンクスに両親のゐる春炬燵　五十嵐筝曲【季語＝春炬燵（春）】

梅ほつほつ人ごゑ遠きところより　深川正一郎【季語＝梅　（春）】

オリヲンの真下春立つ雪の宿　前田普羅【季語＝春立つ（春）】

胴ぶるひして立春の犬となる　鈴木石夫【季語＝立春（春）】

節分の鬼に金棒てふ菓子も　後藤比奈夫【季語＝節分（冬）】

叱られて目をつぶる猫春隣　久保田万太郎【季語＝春隣（冬）】

さざなみのかがやけるとき鳥の恋　北川美美【季語＝鳥の恋（春）】

温室の空がきれいに区切らるる　飯田晴【季語＝温室（冬）】

藷たべてゐる子に何が好きかと問ふ　京極杞陽【季語＝藷　（秋）】

同じ事を二本のレール思はざる　阿部青鞋

底冷えを閉じ込めてある飴細工　仲田陽子【季語＝底冷（冬）】

ピザーラの届かぬ地域だけ吹雪く　かくた【季語＝吹雪（冬）】

水仙や古鏡の如く花をかかぐ　松本たかし【季語＝水仙（冬）】

枯野から信長の弾くピアノかな　手嶋崖元【季語＝枯野（冬）】

酒庫口のはき替え草履寒造　西山泊雲【季語＝寒造　（冬）】

死なさじと肩つかまるゝ氷の下　寺田京子【季語＝氷（冬）】

天狼やアインシュタインの世紀果つ　有馬朗人【季語＝天狼（冬）】

しばれるとぼつそりニッカウィスキー　依田明倫【季語＝しばれる（冬）】

此木戸や錠のさされて冬の月　其角【季語＝冬の月（冬）】

開墾のはじめは豚とひとつ鍋　依田勉三

宝くじ熊が二階に来る確率　岡野泰輔【季語＝熊（冬）】

ラグビーのジヤケツの色の敵味方　福井圭児【季語＝ラグビー（冬）】

初場所や昔しこ名に寒玉子　百合山羽公【季語＝初場所（冬）】

マフラーの長きが散らす宇宙塵　佐怒賀正美【季語＝マフラー（冬）】

極寒の寝るほかなくて寝鎮まる　西東三鬼【季語＝極寒（冬）】

松過ぎの一日二日水の如　川崎展宏【季語＝松過ぎ（新年）】

産みたての卵や一つ大新緑 橋本夢道【季語＝新緑（夏）】

水の地球すこしはなれて春の月 正木ゆう子【季語＝春の月（春）】

他人とは自分のひとり残る雪 杉浦圭祐【季語＝残る雪（春）】

紀元前二〇二年の虞美人草 水津達大【季語＝虞美人草（夏）】

竹秋や男と女畳拭く 飯島晴子【季語＝竹秋（春）】

世にまじり立たなんとして朝寝かな 松本たかし【季語＝朝寝（春）】

非常口に緑の男いつも逃げ 田川飛旅子【季語＝緑（夏）？】

さまざまの事おもひ出す桜かな 松尾芭蕉【季語＝桜（春）】

木の根明く仔牛らに灯のひとつづつ 陽美保子【季語＝木の根明く（春）】

筍の光放つてむかれけり 渡辺水巴【季語＝筍（夏）】

その朝も虹とハモンド・オルガンで 正岡豊

鶯や製茶会社のホツチキス 渡邊白泉【季語＝鶯（春）】

ネックレスかすかに金や花を仰ぐ 今井千鶴子【季語＝花（春）】

おにはにはにはにはとりがゐるはるは 大畑等

春泥を帰りて猫の深眠り 藤嶋務【季語＝春泥（春）】

彫り了へし墓抱き起す猫柳 久保田哲子【季語＝猫柳（春）】

桜蘂ふる一生が見えてきて 岡本眸【季語＝桜蘂ふる（春）】

退帆のディンギー跳ねぬ春の虹 根岸哲也【季語＝春の虹（春）】

春林をわれ落涙のごとく出る 阿部青鞋【季語＝春林（春）】

芽柳の傘擦る音の一寸の間 藤松遊子【季語＝芽柳（春）】

鳥の巣に鳥が入つてゆくところ 波多野爽波【季語＝鳥の巣（春）】

にはとりのかたちに春の日のひかり 西原天気【季語＝春の日（春）】

雪解川暮らしの裏を流れけり 太田土男【季語＝雪解川（春）】

さへづりのだんだん吾を容れにけり 石田郷子【季語＝囀（春）】

タワーマンションのロック四重や鳥雲に 鶴見澄子【季語＝鳥雲に（春）】

春は曙そろそろ帰つてくれないか 櫂未知子【季語＝春（春）】

日の遊び風の遊べる花の中 後藤比奈夫【季語＝花（春）】

花の影寝まじ未来が恐しき 小林一茶【季語＝花の影（春）】

卒業の歌コピー機を掠めたる 宮本佳世乃【季語＝卒業（春）】

鉄橋を決意としたる雪解川 松山足羽【季語＝雪解川（春）】

父がまづ走つてみたり風車 矢島渚男【季語＝風車（春）】

蝌蚪の紐掬ひて掛けむ汝が首に 林雅樹【季語＝蝌蚪（春）】

漕いで漕いで郵便配達夫は蝶に 関根誠子【季語＝蝶（春）】

見るうちに開き加はり初桜 深見けん二【季語＝初桜（春）】

海松かゝるつなみのあとの木立かな 正岡子規【季語＝海松（春）】

クローバーや後髪割る風となり 不破 博【季語＝クローバー（春）】

つちふるや自動音声あかるくて 神楽坂リンダ【季語＝霾（春）】

人はみななにかにはげみ初桜 深見けん二【季語＝初桜（春）】

止まり木に鳥の一日ヒヤシンス 津川絵理子【季語＝ヒヤシンス（春）】

飯蛸に昼の花火がぽんぽんと 大野朱香【季語＝飯蛸（春）】

三月の又うつくしきカレンダー 下田実花【季語＝三月（春）】

白梅や天没地没虚空没 永田耕衣【季語＝白梅（春）】

すうっと蝶ふうっと吐いて解く黙禱 中村晋【季語＝蝶（春）】

取り除く土の山なす朧かな 駒木根淳子【季語＝朧（春）】

妻の遺品ならざるはなし春星も 右城暮石【季語＝春星（春）】

行く春や鳥啼き魚の目は泪 芭蕉【季語＝行く春（春）】

復興の遅れの更地春疾風 菊田島椿【季語＝春疾風（春）】

雛納めせし日人形持ち歩く 千原草之【季語＝雛納（春）】

隠岐やいま木の芽をかこむ怒濤かな 加藤楸邨【季語＝木の芽（春）】

雛飾りつゝふと命惜しきかな 星野立子【季語＝雛飾る（春）】

引越の最後に子猫仕舞ひけり 未来羽【季語＝子猫（春）】

軋みつつ花束となるチューリップ 津川絵理子【季語＝チューリップ（春）】

春雷や刻来り去り遠ざかり 星野立子【季語＝春雷（春）】

花ミモザ帽子を買ふと言ひ出しぬ 星野麥丘人【季語＝花ミモザ（春）】

九頭龍へ窓開け雛の塵払ふ 森田愛子【季語＝雛（春）】

幻影の春泥に投げ出されし靴 星野立子【季語＝春泥（春）】

冴えかへるもののひとつに夜の鼻 加藤楸邨【季語＝冴返る（春）】

昼酒に喉焼く天皇誕生日 石川桂郎【季語＝天皇誕生日（春）】

来て見ればほゝけちらして猫柳 細見綾子【季語＝猫柳（春）】

絵葉書の消印は流氷の町 大串章【季語＝流氷（春）】

あしかびの沖に御堂の潤み立つ しなだしん【季語＝蘆牙（春）】

梅の径用ありげなる人も行く 今井つる女【季語＝梅 （春）】

餅花のさきの折鶴ふと廻る 篠原梵【季語＝餅花（新年）】

梅咲いて庭中に青鮫が来ている 金子兜太【季語＝梅（春）】

昨日より今日明るしと雪を掻く 木村敏男【季語＝雪を掻く（冬）】

氷に上る魚木に登る童かな 鷹羽狩行【季語＝紅梅（春）】

菜の花や月は東に日は西に 与謝蕪村【季語＝菜の花（春）】

二ン月や鼻より口に音抜けて 桑原三郎【季語＝二ン月（春）】

来よ来よと梅の月ヶ瀬より電話 田畑美穂女【季語＝梅 （春）】

ふゆの春卵をのぞくひかりかな 夏目成美【季語＝冬の春（冬）】

人垣に春節の龍起ち上がる 小路紫峡【季語＝春節（春）】

流氷は嘶きをもて迎ふべし 青山茂根【季語＝流氷（春）】

紅梅や凍えたる手のおきどころ 竹久夢二【季語＝紅梅（春）】

あかさたなはまやらわをん梅ひらく 西原天気【季語＝梅（春）】

パンクスに両親のゐる春炬燵 五十嵐筝曲【季語＝春炬燵（春）】

梅ほつほつ人ごゑ遠きところより 深川正一郎【季語＝梅 （春）】

オリヲンの真下春立つ雪の宿 前田普羅【季語＝春立つ（春）】

胴ぶるひして立春の犬となる 鈴木石夫【季語＝立春（春）】

節分の鬼に金棒てふ菓子も 後藤比奈夫【季語＝節分（冬）】

叱られて目をつぶる猫春隣 久保田万太郎【季語＝春隣（冬）】

産みたての卵や一つ大新緑　橋本夢道【季語＝新緑（夏）】

水の地球すこしはなれて春の月　正木ゆう子【季語＝春の月（春）】

他人とは自分のひとり残る雪　杉浦圭祐【季語＝残る雪（春）】

紀元前二〇二年の虞美人草　水津達大【季語＝虞美人草（夏）】

竹秋や男と女畳拭く　飯島晴子【季語＝竹秋（春）】

世にまじり立たなんとして朝寝かな　松本たかし【季語＝朝寝（春）】

非常口に緑の男いつも逃げ　田川飛旅子【季語＝緑（夏）？】

さまざまの事おもひ出す桜かな　松尾芭蕉【季語＝桜（春）】

木の根明く仔牛らに灯のひとつづつ　陽美保子【季語＝木の根明く（春）】

筍の光放つてむかれけり　渡辺水巴【季語＝筍（夏）】

その朝も虹とハモンド・オルガンで　正岡豊

鶯や製茶会社のホツチキス　渡邊白泉【季語＝鶯（春）】

ネックレスかすかに金や花を仰ぐ　今井千鶴子【季語＝花（春）】

おにはにはにはにはとりがゐるはるは　大畑等

春泥を帰りて猫の深眠り　藤嶋務【季語＝春泥（春）】

彫り了へし墓抱き起す猫柳　久保田哲子【季語＝猫柳（春）】

桜蘂ふる一生が見えてきて　岡本眸【季語＝桜蘂ふる（春）】

退帆のディンギー跳ねぬ春の虹　根岸哲也【季語＝春の虹（春）】

春林をわれ落涙のごとく出る　阿部青鞋【季語＝春林（春）】

芽柳の傘擦る音の一寸の間　藤松遊子【季語＝芽柳（春）】

鳥の巣に鳥が入つてゆくところ　波多野爽波【季語＝鳥の巣（春）】

にはとりのかたちに春の日のひかり　西原天気【季語＝春の日（春）】

雪解川暮らしの裏を流れけり　太田土男【季語＝雪解川（春）】

さへづりのだんだん吾を容れにけり　石田郷子【季語＝囀（春）】

タワーマンションのロック四重や鳥雲に　鶴見澄子【季語＝鳥雲に（春）】

春は曙そろそろ帰つてくれないか　櫂未知子【季語＝春（春）】

日の遊び風の遊べる花の中　後藤比奈夫【季語＝花（春）】

花の影寝まじ未来が恐しき　小林一茶【季語＝花の影（春）】

卒業の歌コピー機を掠めたる　宮本佳世乃【季語＝卒業（春）】

鉄橋を決意としたる雪解川　松山足羽【季語＝雪解川（春）】

父がまづ走つてみたり風車　矢島渚男【季語＝風車（春）】

蝌蚪の紐掬ひて掛けむ汝が首に　林雅樹【季語＝蝌蚪（春）】

漕いで漕いで郵便配達夫は蝶に　関根誠子【季語＝蝶（春）】

見るうちに開き加はり初桜　深見けん二【季語＝初桜（春）】

海松かゝるつなみのあとの木立かな　　正岡子規【季語＝海松（春）】

クローバーや後髪割る風となり不破博【季語＝クローバー（春）】

つちふるや自動音声あかるくて　神楽坂リンダ【季語＝霾（春）】

人はみななにかにはげみ初桜　深見けん二【季語＝初桜（春）】

止まり木に鳥の一日ヒヤシンス　　津川絵理子【季語＝ヒヤシンス（春）】

飯蛸に昼の花火がぽんぽんと　大野朱香【季語＝飯蛸（春）】

三月の又うつくしきカレンダー　下田実花【季語＝三月（春）】

白梅や天没地没虚空没　永田耕衣【季語＝白梅（春）】

すうっと蝶ふうっと吐いて解く黙禱　中村晋【季語＝蝶（春）】

取り除く土の山なす朧かな　駒木根淳子【季語＝朧（春）】

妻の遺品ならざるはなし春星も　右城暮石【季語＝春星（春）】

行く春や鳥啼き魚の目は泪　芭蕉【季語＝行く春（春）】

復興の遅れの更地春疾風　　菊田島椿【季語＝春疾風（春）】

雛納めせし日人形持ち歩く　千原草之【季語＝雛納（春）】

隠岐やいま木の芽をかこむ怒濤かな　加藤楸邨【季語＝木の芽（春）】

雛飾りつゝふと命惜しきかな　星野立子【季語＝雛飾る（春）】

引越の最後に子猫仕舞ひけり　未来羽【季語＝子猫（春）】

軋みつつ花束となるチューリップ　津川絵理子【季語＝チューリップ（春）】

春雷や刻来り去り遠ざかり　星野立子【季語＝春雷（春）】

花ミモザ帽子を買ふと言ひ出しぬ　星野麥丘人【季語＝花ミモザ（春）】

九頭龍へ窓開け雛の塵払ふ　森田愛子【季語＝雛（春）】

幻影の春泥に投げ出されし靴　星野立子【季語＝春泥（春）】

冴えかへるもののひとつに夜の鼻　加藤楸邨【季語＝冴返る（春）】

昼酒に喉焼く天皇誕生日　石川桂郎【季語＝天皇誕生日（春）】

来て見ればほゝけちらして猫柳　細見綾子【季語＝猫柳（春）】

絵葉書の消印は流氷の町　大串章【季語＝流氷（春）】

あしかびの沖に御堂の潤み立つ　しなだしん【季語＝蘆牙（春）】

梅の径用ありげなる人も行く　今井つる女【季語＝梅　（春）】

餅花のさきの折鶴ふと廻る　篠原梵【季語＝餅花（新年）】

梅咲いて庭中に青鮫が来ている　金子兜太【季語＝梅（春）】

昨日より今日明るしと雪を掻く　木村敏男【季語＝雪を掻く（冬）】

氷に上る魚木に登る童かな鷹羽狩行【季語＝紅梅（春）】

菜の花や月は東に日は西に　与謝蕪村【季語＝菜の花（春）】

二ン月や鼻より口に音抜けて　桑原三郎【季語＝二ン月（春）】

来よ来よと梅の月ヶ瀬より電話　田畑美穂女【季語＝梅　（春）】

ふゆの春卵をのぞくひかりかな　夏目成美【季語＝冬の春（冬）】

人垣に春節の龍起ち上がる　小路紫峡【季語＝春節（春）】

流氷は嘶きをもて迎ふべし　青山茂根【季語＝流氷（春）】

紅梅や凍えたる手のおきどころ竹久夢二【季語＝紅梅（春）】

あかさたなはまやらわをん梅ひらく　西原天気【季語＝梅（春）】

パンクスに両親のゐる春炬燵　五十嵐筝曲【季語＝春炬燵（春）】

梅ほつほつ人ごゑ遠きところより　深川正一郎【季語＝梅　（春）】

オリヲンの真下春立つ雪の宿　前田普羅【季語＝春立つ（春）】

胴ぶるひして立春の犬となる　鈴木石夫【季語＝立春（春）】

節分の鬼に金棒てふ菓子も　後藤比奈夫【季語＝節分（冬）】

叱られて目をつぶる猫春隣　久保田万太郎【季語＝春隣（冬）】