コンビニの枇杷って輪郭だけ
原ゆき
先日の猛暑日にうっかり水分補給を忘れてしまい、軽くあの世が見えた気がした。焦って近くのコンビニに駆け込み冷たい水を入手。普段コンビニに行く習慣はないのだが、こんな時非常に助かる。
大昔のコンビニの品揃えは、おにぎりやサンドイッチ、ジュースなど比較的単純だった記憶がある。今やちょっとしたスーパーに匹敵する種類の商品を扱い、その上コピー機もATMも完備、税金や公共料金の支払いもできるし、郵便だって出せちゃう。コンサートチケットの発券も可能だ。旅行先のホテルの検索条件に、「コンビニまで徒歩5分以内」というのがあるくらい欠かせない存在となっている。
コンビニの枇杷って輪郭だけ
コンビニでバナナを売っているのは見たことがあるが、枇杷はなかったな。きっと、一本ずつ個包装されていたあのバナナのように、枇杷も少量で売られていたのだろう。コンビニのフルーツや野菜ってどこか嘘っぽい。まさに「輪郭」だけで中身や味がぼんやりとしか浮かんでこない感じがするのだ。
そんな気がしてしまうのは、コンビニの画一的なデザインと、明るすぎる照明のせいか、スーパーのように所帯染みた感じ(いい意味で)がしないからなのか(高級スーパーはまた違うのだろうけれど)。
試しに明日、コンビニでフルーツや野菜を手に取ってその「輪郭」を確かめて欲しい。それを手にしている自分も、きっと「輪郭だけ」になっているだろう。
(近江文代)
【執筆者プロフィール】
近江文代(おうみ・ふみよ)
1967年埼玉県生まれ。「野火」「猫街」同人。元「船団」会員。現代俳句協会会員。
趣味は筋トレ、スキー、山歩き、宝塚観劇(時々ムラに遠征)。最近マラソンにはまりつつある。2023年には第一句集を出す予定(未定)。
【お知らせ】
2015年に亡くなられた俳人・澤田和弥さんの句文集の出版するクラウドファンディングのプロジェクトが立ち上がっています。詳細は以下のバナーから!(Motion Galleryのプロジェクトページに遷移します)
2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓
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>>〔5〕春愁は人なき都会魚なき海 野見山朱鳥
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>>〔4〕仕る手に笛もなし古雛 松本たかし
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