向日葵をつよく彩る色は黒京極杞陽【季語＝向日葵（夏）】

ハイクノミカタ

向日葵をつよく彩る色は黒　京極杞陽【季語＝向日葵（夏）】

2023/11/3
ハイクノミカタ, 塚本武州
1908年生まれ, 1981年没, 「ホトトギス」, 「木兎」, は, を, ゴッホ, 京極杞陽, 向日葵, 強い, 強く, 彩る, 色, 黒

向日葵をつよく彩る色は黒

京極杞陽

１１月最初の金曜日である。１１月は季節でいえば冬になるが、今週末は夏日とのことで、最高の秋晴れのなか、なんとも複雑な気持ちである。こんな１日に三つの季節を感じさせるなか、今日の一句は思いっきり夏の句である。

向日葵をつよく彩る色は黒　京極杞陽

今、東京・新宿のSOMPO美術館で「ゴッホと静物画伝統から革新へ」と題した展覧会が開催されている。この展覧会には、マネ、モネ、セザンヌ、ルノワールなどの印象派絵画も展示されているが、一番の目玉は、ゴッホの「ひまわり」である。今年がゴッホ生誕１７０年の節目で、SOMPO美術館で２０年ぶりのゴッホ展らしい。

久しぶりに「ひまわり」と出会った。何年ぶりだろうか。世界に数点ある「ひまわり」のなかで、私は何度か出会っている。ロンドン、ミュンヘン、アムステルダム、そして日本。我が家にも、どこかのミュージアムで買ったレプリカがある。音声ガイドはこの「ひまわり」をこう説明する。「ゴッホは『青い背景のひまわり』を3点、『黄色い背景のひまわり』を1点を描いたところで、ひまわりの季節が終わってしまった。出展作品はロンドンのナショナル・ギャラリーが所蔵する『黄色い背景のひまわり』をもとに１８８８年１１月下旬から１２月上旬に描かれたと考えられる」。

なるほど、なんとなくロンドンのひまわりと比較すると、描かれた季節が影響したのか少し黒みがかった印象を与える。「ひまわり」は京極杞陽の掲句ほどに黒が際立ってはないが、黄色の濃淡を使い分け、黄色の魔術師と呼ばれるゴッホの最骨頂の作品だと改めて思った。隣にゴッホの「アイリス」が飾られているが、こちらは黄色い背景に小さい花瓶から溢れださんばかりの紫のアイリスが描かれている。どちらかといえば、「アイリス」の方が、「つよく彩る色は黒」のように見える。

この展覧会は２０２４年１月２１日まで開催されているのでご興味のある方は是非、ご観覧ください。では、良い三連休を。

（塚本武州）

【執筆者プロフィール】
塚本武州（つかもと・ぶしゅう）
1969 年、立川市生まれ。書道家の父親が俳号「武州」を命名。茶道家の母親の影響で俳句を始める。2000年〜2006年までイギリス、フランス、2011年〜2020年までドイツ、シンガポール、台湾に駐在。帰国後、本格的に俳句を習い、２０２１年４月号より俳誌『ホトトギス』へ出句。現在、社会人学生として、京都芸術大学通信教育部文芸コース及び博物館学芸員課程を履修中。国立市在住。妻と白猫（ユキ）の３人暮らし。

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